- 著者
-
丸山 裕輔
- 出版者
- 五泉市立五泉小学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2015
初任者教員(以下、初任者)の授業力向上を目指したOJTスタイルの校内研修モデルを考案した。授業力評価尺度を指標として、他者の授業参観と自己の研究授業とを連動させる仕組みで研修を展開した。初任者がアクティブ・ラーニング志向で力量を向上させるために、参観授業研修記録と授業リフレクション記録を研修ツールとして活用した。授業力評価尺度の結果から、本事例の初任者は、子どもの発言内容を理解・評価し、集約したり、意見の相違点・対立点を明確にしたりする授業技術が不足していることが分かった。参観授業研修記録の結果から、初任者は他者の授業参観において学習への動機付けや発問といった授業技術に着目することが分かった。能動的な研修を推進するしかけとして、研究授業後に授業リフレクションを実施した。授業リフレクションは、教頭がメンターとなり、自己リフレクション→対話リフレクション→リフレクションからの学び、の3段階で行った。初任者は授業リフレクションを通して、発問の吟味といった教師側の観点から、つまずきの把握といった子どもの内面過程に言及するようになっていった。初任者にとって困難とされる授業技術である子どもの発言の理解や相違点の明確化、意見の集約といった力量は、子どもをみとる力が基盤になる。そのために、初任者の気づきである子どものつまずきや思考過程を予測することが大切である。他者の授業参観で着目する傾向のある発問の応答を手がかりに、相互作用の力量を高めていく研修の修正点を指摘した。本研究では、校内での対面・ワークショップ研修だけではなく、授業技術に関する研修の取組や成果についてメーリングリスト等を活用してオンライン上での研修も実施した。大学の研究者や教科の専門家からも校内や家庭にいながら遠隔地から指導していただくことができた。時間的・物理的距離の問題を改善する教員研修システムの構築をさらに提案していく。