著者
丸澤 遼子 久保山 和彦
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 = Bulletin of Nippon Sport Science University (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.2001-2006, 2021-08

【目的】近年の柔道整復療養費が減少傾向にある。本調査においては,東京都23区・30市町村における「接骨院(公社)」の分布及び運営の現状を公開されているホームページなどの広告内容を資料として,柔道整復療養費の運用状況を調査し,減少要因を明らかにする。【方法】①「(公社)接骨院検索東京MAP」の検索ページを用いて,会員登録されている接骨院の分布状態を把握するために,[Geocoding and mapping(埼玉大学教育学部人文地理学谷謙二研究室)]のフリーソフトを基にして「接骨院一覧入力シート」を設けて,接骨院名,住所,施術内容を東京都の地区ごとに整理,入力して地図上にプロットした。②プロットする際には,接骨院の運営形態を,それぞれの接骨院のホームページ(インターネット検索調査)に掲載された業務内容をアイコンの色と形により分類した。③東京都内における昼夜間人口比率の高い渋谷区(240.1%),比率が低い杉並区(85.1%)及びその中間となる江東区(122.2%)の3区を抽出し,詳細地図に分布状況及び業務内容を図・グラフに表した。【結果と考察】①東京都における接骨院(公社)の展開状況は,都内全域にわたり1,118件が開設されており,運営形態の特徴については,「保険取り扱い」,「自費のみ」及び「保険と自費併用」などの運営方法がとられ,「保険と自費併用」する接骨院が全体の75.3%となっていた。②渋谷区では,痛みを保険で行う傍ら自費,美容,福祉などをさまざまに組み合わせて運営している接骨院が57.9%存在しており,多岐にわたる運営形態が確認された。杉並区では,痛みを保険で行う傍ら自費,美容,福祉をそれぞれ組み合わせて運営している。また,保険を用いずに「自費」のみが,2件(4.3%)存在していることも分かり,この地域では「痛み」に対する施術(保険・自費併用)を中心に運営されている。さらに,開院場所が駅近辺に集中していることが分かった。江東区では,「保険,自費併用」は32件(88.9%)と最も多く存在していることが分かった。また「福祉関係」の業務は行っていない。【まとめ】近年における柔道整復療養費申請額が減少傾向にあるのは,「療養費を適用」して施術を行うことが基盤となっているものの,「自費で行う施術」を併用させるなど,柔道整復師による積極的な運営上の工夫によるものと考えられる。