著者
丸谷 永一 鈴木 馨
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.63-70, 2004 (Released:2004-12-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

日本産野鳥111種2,189点の保護記録から, 骨折の発生状況を明らかにし, 予後因子を検討した。骨折は16%の個体に認められ, 骨折個体の保護治療後の放野率は28%であった。骨折部位は, 部位不明を除くと翼が全体の37%を占めており, 翼以外 (22%) を上回っていた。骨折の予後因子として最も重要なのは体格であり, 大型鳥では放野率30~40%であるのに対し, 特に小型鳥の翼部開放骨折の放野率は8%であった。また、放野までの保護収容期間は, 翼骨折で明らかに長期化しやすく, 3ヵ月近くに及ぶものも少なくなかった。これらのことから, 小型鳥の翼骨折に焦点をあて, 保護から放野に至るまでの一貫した治療プログラムの構築が, 重要な研究課題であると考えられた。
著者
丸谷 永一 鈴木 馨
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.11-17, 2005 (Released:2005-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

野鳥における骨折の治療成績を向上させることを目的に,ニホンウズラの上腕骨骨折に3種類の手術法を適用し,リハビリテーションを行いながら,回復過程を評価した。太さに比べて軽量な注射針を用いた内軸固定では,手術の成功率が40%と低かったが,成功したときの回復は,形態・機能ともにきわめて優れていた。ペーパークリップを利用した簡易な外部固定では,確実に骨の癒合が得られたが,変形が著しく,機能回復も不十分であった。内軸固定と外部固定を併用した場合は,全例で骨折の治癒を認めたが,個体により回復の程度に差が大きく,良好に推移したときもリハビリテーション期間が延長した。これらのことから,実際の臨床応用にあたっては,対象となる鳥種や動物の気質,収容可能な期間,その他治療施設の事情などにより,方法を使い分けることが望ましいと結論づけられた。