著者
三川 和博 三川 真由美 椎 宏樹
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.85-88, 2006 (Released:2007-08-29)
参考文献数
5

9ヵ月齢、体重3.2 kg、雄のチワワが2日にわたる間欠的な嘔吐を訴えて来院した。腹部レントゲン検査ではボタン電池と思われる腸内異物が認められた。2日間の対症療法に反応することなく状態が悪化し、開腹手術を実施した。小腸と大腸を巻き込む大きな癒着病巣がみられ、回腸にボタン電池が確認された。電池表面に接していた腸壁は穿孔していた。癒着剥離中に前腸間膜動脈が破綻し、結紮した。それによって血行障害がみられた小腸を広範に切除した。患者の体重は徐々に減少し、初診から158日後に死亡した。
著者
丸尾 幸嗣 山下 敦子 飼沼 亨 小松 哲郎 田中 綾 山根 義久
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-18, 2002-01-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
5

高所落下症候群の猫2例を報告する。9および6ヵ月齢の若齢猫は6および7階から落下し, 左大腿骨遠位成長板骨折および右尺骨近位骨折・橈骨頭脱臼を受けた。受傷後, 全身状態の回復を待って, それぞれの骨折・脱臼の整復・固定術を実施した。予後はいずれも良好であった。今後このような症例は増えてくる社会背景があるが, 飼主への啓蒙により予防することが大切である。
著者
田上 正明 橋本 裕充 角田 修男 椿下 早絵 加藤 史樹
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-11, 2004 (Released:2004-12-28)
参考文献数
20

症例はサラブレッド種競走馬228頭であった。関節鏡手術を実施した関節数は244関節, 骨折部位は320ヵ所で主な部位は橈骨遠位外側139 (43.4%), 中間手根骨近位43 (13.4%), 橈側手根骨遠位48 (15.0%), 第3手根骨近位48 (15.0%) ヵ所であった。全体の競走復帰率は89.9%で, 競走歴のある症例の競走復帰率は92.8%であった。休養日数の平均は239.3日, 出走回数の平均は12.5回, 収得賞金の平均は1,382.0万円であった。術後成績は, 競走復帰率, 出走回数, 収得賞金において非常に良好であった。
著者
小沼 守 小野 貞治 石田 智子 渋谷 久 佐藤 常男
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.85-88, 2009 (Released:2010-08-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

フェレット111症例における麻酔関連偶発死亡例をAmerican Society of Anesthesiologists Physical Status (ASA-PS)で分類し、調査したところ、24時間以内の麻酔関連偶発死亡率は、2.7%(ASA III、2例;ASA IV、1例)であり、その死亡例はすべて4歳以上の症例で、手術前後に発現した麻酔合併症の心停止により死亡した。よって4歳以上、ASA III以上は、麻酔の危険度が有意に高くなる条件になることが考えられた。
著者
井尻 篤木 吉木 健 根本 洋明 田中 浩二 嶋崎 等 前谷 茂樹 峯岸 則之 中村 晃三 森本 陽美記 堀 あい 米富 大祐 中出 哲也
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.53-57, 2010 (Released:2011-04-09)
参考文献数
9

MRIで嚢胞性髄膜腫と診断した犬3例をその画像所見から人医療のナタの分類より、タイプ別に分類し、手術を行った。タイプIIIの症例1、2は造影されている充実性の腫瘍のみ摘出し、タイプIIの症例3は造影されている嚢胞壁と腫瘍の両方を摘出した。その結果、全症例において症状の改善がみられ、症例1は嚢胞の内容液の分泌能が低下し、症例2、3は嚢胞が消滅した。症例3は腫瘍が新たに摘出部位の反対側から発生したが、3年生存している。
著者
帆保 誠二 山内 龍洋 植山 泰博 吉田 光平
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.17-22, 1995-01-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

喉頭蓋エントラップメント (EE) を発症した競走馬4頭に対し, 高周波焼灼装置, EE用鉤状カッターを用いた外科的療法を試みた。まず1頭においては, 鎮静下での高周波焼灼法による披裂喉頭蓋ヒダの切開をおこなったが, 嚥下反射を完全に抑制することが出来ず, 不十分なものであったため, 全身麻酔下でのEE用鉤状カッターによる切開を試みた。また他の3症例では, 前例での経過を考慮し, EE用鉤状カッターによる切開を試みた。これらの結果, 術後の経過は良好であり, 短期間の休養のみでトレーニングに供することができた。以上より, 競走馬に発症したEEに対しては, 休養期間の短さや, 術後の患部の経過等から, EE用鉤状カッターによる外科的療法が有効であることが示唆された。
著者
小池 壽男
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.139-142, 1991-10-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
23
著者
石田 智子 小沼 守 小野 貞治 村上 彬祥 佐野 忠士
出版者
獣医麻酔外科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.7-12, 2014 (Released:2014-10-29)

ウサギ160症例における麻酔関連偶発死亡症例を調査した。American Society of Anesthesiologists Physical Status(ASA)分類に必要であった検査のうち、ASA分類ⅠでもX線検査で4.7%(2/43)、ASA分類IIの血液検査で22.6%(12/53)、画像診断で30%(15/50)に異常が認められたため、積極的な術前検査によりできるだけ信頼度の高いASA分類をする必要性があると考えられた。避妊手術や去勢手術では麻酔関連偶発死亡例はいなかったが、子宮疾患や尿路結石、消化管閉塞の症例のうち、麻酔危険度の高いASA分類III以上(ASA分類III1例;ASA分類IV2例)で麻酔関連偶発死亡例が各1例あった。麻酔関連偶発死亡症例は全体で1.9%(3/160)となったが、すべて24時間以内(手術開始1時間後2例、18時間後1例)に心停止で死亡した。今回の結果から、ASA分類III以上のウサギでは、麻酔関連偶発死亡率が高くなるため、手術開始から24時間以内は十分なモニタリングには行うべきであると考えられた。
著者
神田 鉄平 池田 慎 大内 真菜美 長﨑 絢子 山本 理恵 森下 友裕 前田 憲孝 佐々木 崇了 古本 佳代 加計 悟 村尾 信義 古川 敏紀
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-12, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
10

メデトミジン(MED)が引き起こす体温低下に対して加温輸液を静脈内投与することの効果について健康なイヌを用いて検討を行った。生理的食塩液(control)あるいはメデトミジン40 μg/kgを筋肉内投与し、同時に10 ml/kg/hrでリンゲル液を室温(RT)あるいはアニメック(ANI)、メディテンプ(MEDI)という二種類の加温装置を用いて4時間の静脈内投与を実施した。MED-ANI群では体温低下が僅かに緩和される傾向がみられたが、加温しない群と比較して統計学的に有意な差は認められなかった。結果から、イヌにおいて本条件での加温輸液の投与はメデトミジンによる体温低下を有意には抑制しないことが示された。
著者
杉山 智香 久保田 泰一郎 田中 茂男 佐藤 敬
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-41, 1994-04-30 (Released:2010-12-09)
参考文献数
15

兎の大腿骨の骨髄中に, 直径0.5mmで長さ5mmの白金電極2本を20mmの間隔をおき刺入し, 医療において用いられている20μAと筆者らの検討の結果の電位をもとにした条件 (2.0~2.2V) で, それぞれ14日間通電した結果,1) 20μAでは2.5Vの通電となり, 骨髄中の陽電極周囲組織は壊死や変性, あるいはガス発生所見を呈し, 刺入部の骨皮質は肥厚した。2) 2.0~2.2Vでは, 陽・陰電極周囲に髄内仮骨, 刺入孔周囲に骨膜性仮骨がみられた。また, 通電による骨の仮骨の新生は, 損傷を受けた骨組織を中心として形成されることが判明し, 骨新生は髄内より皮質において高度で, また, この通電手技によると陽極側が陰極側よりも顕著であった。
著者
前田 憲孝 佐々木 崇了 神田 鉄平 藤岡 透 古川 敏紀
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.21-24, 2011 (Released:2012-04-11)
参考文献数
7

長期の慢性外耳炎の病歴を持つアメリカン・コッカー・スパニエルで、右側頬部の膿瘍ならびに外耳道口の腫瘤形成が認められた。CT検査により外耳および中耳の占拠病変、鼓室胞腹側の骨融解が認められ、超音波手術器を用いた外側鼓室胞骨切り術および全耳道切除術により良好な経過を得た。本症例の病態として、慢性の外耳炎が引き金になり、腫瘍が形成されることで、慢性化膿性中耳炎ならびに瘻管形成による頬部の皮下膿瘍が生じたと考えられた。
著者
浦野 菊男
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔 (ISSN:02852209)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-41, 1975-04-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
8
著者
稲田 豊
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔 (ISSN:02852209)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-18, 1974-04-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
44
被引用文献数
1
著者
原口 友也 板本 和仁 原田 秀明 谷 健二 仲澤 宏 田浦 保穂
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-5, 2011 (Released:2011-10-18)
参考文献数
10

2歳齢、雄のアメリカン・コッカー・スパニエルが慢性鼻出血を主訴に来院した。X線CT検査で真菌感染症が強く疑われたが、生検・培養検査・血清学検査で真菌感染を証明できなかったため、左鼻腔・前頭洞切開術を実施し鼻腔粘膜を切除した。切除した粘膜組織は病理組織検査により、真菌性肉芽腫と診断されたため、抗真菌剤の投与を行った。その結果、本症例は3年4ヵ月以上再発を認めずに生存している。以上より、X線CT検査で真菌感染症の特徴的な所見が得られた場合は、検査で感染が証明されなくても、診断・治療のために適切な鼻腔や前頭洞切開による鼻粘膜の生検が必要であると考えられた。
著者
安斎 孝之 樋口 博夫 茂木 国男 庄司 典嗣 吉野 豊 大関 好明 信永 利馬
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔 (ISSN:02852209)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-18, 1981-04-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
12

今回, エソトノックス麻酔器を用いて, アネソキシン-50を吸入させ2, 3の実験用動物種のbehaviorに対する影響について観察し, 更にイヌにおいては一般所見, 血液性状, 血液ガスに及ぼす影響について検討した。1.behaviorについては, イヌでは吸入中は体動がなく催眠効果が認められたが外科的深麻酔状態が得られなかった。日本家ネコ, カニクイザルにおいては数分間~10数分間にわたって催眠効果が見られたに過ぎなかった。マウス, ラット, 文鳥においては全くbehaviorに変化は認められなかった。2.臨床所見では心拍数において吸入開始後減少する傾向が認められた。3.血液分のうち, 赤血球数, 白血球数, ALb, Hb, クレアチニン, BUN, sGPTなどについては, 経時的に著変が認められなかった。4.ヘマトクリット値においては, 硫酸アトロピンのみの前処置群で吸入中の減少傾向が認められた。5.血糖においては, 吸入中の上昇傾向が見られ, 特に吸入開始後20分で顕著であった。なお吸入用のgasmaskのsettingにおいても上昇が認められた。6.血液pHおよび血液ガスにおいては, 軽度の血液pH液の低下傾向とPCO2の上昇が見られ, 呼吸性acidosisの様相を呈した。またPO2で有意の上昇が見られ, 特にPaO2において吸入開始後20分より160mmHg以上の顕著な上昇を示した。以上述べたとおり, アネソキシン-50の吸入によりコンベレン前処置群においても非前処置群においても生体に何らかの影響を与えることは避けられないが, その影響は軽微であり, 臨床において使用する上で危険と思われる所見は認められなかった。
著者
伊藤 直之
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.49-55, 1996-04-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

猫に対するメデトミジン80μg/kgまたはキシラジン2mg/kg筋肉内投与後の嘔吐発生状況について比較検討した。嘔吐発生率はメデトミジン群では20.0%であり, キシラジン群は70.0%であった。嘔吐回数は両群とも1回のみの嘔吐発生例が最も多く, また, 平均嘔吐回数はメデトミジン群で2.1±1.7回 (平均±S.D.) , キシラジン群で2.0±1.4回であり大きな差はなかった。嘔吐発生時間帯は両群ともに2分台から3分台に集中していた。平均伏臥発現時間はメデトミジン群では3.2分±1.6分, キシラジン群では6.8分±5.8分であり, メデトミジン群に比較して遅延していた。以上の成績から今回の投与量においては, 鎮静期の事故発生や飼い主の不安感を軽減する目的のためには, 嘔吐発生率が低いメデトミジンの方が有効である可能性が示唆された。
著者
高橋 朋子 廉澤 剛 望月 学 松永 悟 西村 亮平 佐々木 伸雄
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.111-117, 1997-10-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

犬の皮膚型肥満細胞腫の治療にしばしば用いられるグルココルチコイド (GC) の抗腫瘍効果について, 病変の縮小程度を指標とした検討を行った。GC単独, 放射線療法や化学療法との組み合わせ, GCを使用しない治療法とを比較したところ, いずれの治療法でも一時的な腫瘤の縮小が見られたものの, 長期間にわたりコントロールできた例はなかった。しかし, GC単独での腫瘤縮小効果は, その他の療法と同程度ないしそれ以上と推測された。