著者
丹下 英明 新家 彰
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.49-70, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
18

本稿では、中小企業がサステナビリティ経営に取り組むプロセスと、従業員の意識変化について、事例研究と従業員アンケートから分析を行った。その結果、以下の三点が明らかになった。第一に、中小企業におけるサステナビリティ経営への取り組みは、現状に危機感を抱いた経営者が、多様なステイクホルダーと出会い、情報を収集するなかで、社会的課題解決に取り組むビジネスモデルを形にしている。第二に、サステナビリティ経営への取り組みは、新製品の開発や、新たな販路開拓につながっている。こうした過程では、認証の取得や経営陣の協力、既存の取引先の活用が寄与している。第三に、サステナビリティ経営への取り組みは、従業員の意識変化につながっている。一方で、中小企業は、サステナビリティ経営の方針を従業員に浸透させることに課題を抱えている。特にパート社員において、そうした傾向がみられる。以上のように、サステナビリティ経営に取り組むことは、中小企業に多くの利点をもたらす。中小企業は今後、サステナビリティ経営の視点を取り入れることが重要だろう。