著者
佐々木 理 高橋 皇基 丹治 雅博
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.195-197, 2017-07-31 (Released:2017-07-26)
参考文献数
7

Ehlers-Danlos症候群(EDS)は結合織に脆弱性を持つ遺伝性疾患である.なかでも血管型(IV型)は血管壁,消化管壁に脆弱性を示し非常に重篤な合併症をもたらす.今回,われわれの経験したEDS IV型が疑われた症例について報告する.症例は30歳男性.突然の右下腿の腫脹,疼痛を主訴に来院した.精査の結果,右後脛骨動脈瘤破裂と診断され,緊急コイル塞栓術を施行された.22歳時に樹状肺骨化症,25歳時に脳梗塞,脳内硬膜動静脈奇形,左内頸動脈–海綿静脈洞瘻,症候性てんかんの既往があり,特徴的な病歴からEDS IV型が疑われた.術後は順調に経過したが,術後23日の早朝に突然の腹痛を訴え,その後ショック状態となった.緊急の造影CTの結果,右後腹膜への造影剤漏出と多量の血腫を認め,外腸骨動脈の破裂が疑われた.直ちに救命のため尽力したが奏功せず死亡した.本症候群は急性に致命的合併症を来す疾患である.今回の症例でわれわれが反省すべき点を含め,文献的考察を加えて報告する.