著者
久万 健志
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

溶存有機物が多く含む河川水中の各鉄化学種濃度は高く、特にフミン物質蛍光強度と真の溶存鉄濃度との関係が見られ、河川水中のフルボ酸が3価鉄と溶存有機錯体鉄を形成していることが明らかになった。また、河川起源溶存フルボ酸鉄錯体は海水と混合しても比較的安定に存在していることを示し、河口域から沿岸域への溶存鉄を運ぶ重要な役割を果たしている。フルボ酸鉄錯体を多く含む河川由来溶存鉄を添加した沿岸性植物プランクトン-栄養塩培地では、細胞密度及びクロロフィルa濃度が急激に増加した。これは、河川水中のフルボ酸鉄錯体が海水と混合すると、フルボ酸鉄錯体から生物利用可能な溶存無機3価鉄イオンが徐々に解離し、それが植物プランクトンに摂取されたためと考えられ、河川の影響ある沿岸域の高い基礎生産を維持していると考えられる。