著者
向田 昌志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人工ピン材料を超電導膜に入れ、磁場中超電導特性を向上させた膜のTcを人工ピンのない膜と同等のTcまで戻すため、さらに物質本来の「強い超電導特性」が発現し、対破壊電流密度の25%以上という高いJcを実現するため、人工ピンの成長機構解明として、微傾斜基板を用い、1次元人工ピンの曲がりを調べた。その結果、ある角度以上で、人工ピンは超電導膜のステップフロー方向に成長し、超電導膜の一番弱いc-軸方向の磁場中臨界電流密度を高める効果が無くなることが分かった。また、テープ線材に不可欠なプロセスの低温化、高速化も行った。さらに、鉄系超電導膜の上部臨界磁場を詳しく調べる研究も行った。
著者
山下 英愛
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、北朝鮮で制作・放映されたドラマの分析を通して、北朝鮮社会のジェンダーを考察することである。日本における北朝鮮研究は、政治外交などの分野において蓄積されてきたが、人々の暮らし、家族や社会におけるジェンダー役割、さらにそれらが政治体制とどのように結びついてきたのか、などの社会文化的側面についてはあまり関心を持たれてこなかった。本研究は、このような研究の空隙を埋め、北朝鮮社会に対する理解を深めようとするものである。本研究を行うためには、北朝鮮社会に関する基礎的な知識を補充し、海外の研究動向を把握する必要がある。そこで、初年度である29年度は、1)資料及び情報の収集、2)海外における北朝鮮研究の動向把握、3)関連研究者とのコネクションづくりに注力した。1)資料収集は着実に進めている。海外で活動する北朝鮮関連の研究者たちとつながりができたことで、韓国及び米国における資料収集の方法やその場所に関する情報を得ることができた。2)海外(ソウル、ニューヨーク、ワシントンDC)及び国内で開かれた学会や研究会に参加し、北朝鮮研究の動向や内容に関する知見を深めた。海外では相当多様な北朝鮮研究が行われていることがわかった。3)関連研究者との人脈づくりを積極的に行い、研究上の問題意識や研究内容についての意見交換もすることができた。さらに、北朝鮮社会の現状に対する理解を深めるために、ワシントンDCにある北朝鮮関連の研究機関や人権団体なども訪問して情報収集を行った。
著者
松島 泰勝
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、 1972年に沖縄県が日本に「復帰」して以降、実施された振興開発に関する分析と、沖縄県における内発的発展に関する検討という2つに大きく分けることができる。前者に関する本研究の成果は、振興開発が初期の目標を実現できなかった要因を明らかにしたことである。特に、振興開発を米軍基地の押し付け策と連動させる「アメとムチ」の政策が振興開発失敗の最大の要因であることが本研究によって明らかにされた。後者に関する本研究の成果は、名護市の「逆格差論」に基づく内発的発展がなぜ近年再評価されたのかの理由を分析したことである。また沖縄全体の内発的発展を実現するため政策提案も行った。
著者
渡辺 真澄
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、7月~12月の間、研究協力者であるマンチェスター大学のLambon-Ralph教授の研究室に滞在し、英語と日本語の動詞活用の研究を行っているケンブリッジ大学のPatterson博士も交え、議論を重ねた。日本語の動詞活用に関しては15年ほど前に故伏見貴夫博士、Patterson博士、および研究協力者の辰巳ほかがJ Mem Langに投稿し、修正途中で終った研究が唯一のものである。そこでまずその研究の刺激語と実験データを関係者に発掘してもらい、再分析することから始めた。15年前、動詞活用に関しては、規則動詞の処理を行う「文法」(grammar: look→looked)と例外動詞の活用形(give→gave)を保持する「レキシコン」の二重機構を仮定するPinkerらと、規則動詞、例外動詞が同じ機構により処理されるとするコネクショニストとの間で激しい論争が行われていた。伏見らの研究も日本語の動詞を規則/例外動詞(五段/一段動詞)に分けて活用成績を比較したが、成績差が安定せず、また規則活用されるはずの非語動詞の正答率が著しく低い場合(例、もさかぶ)があることが判明した。もし日本語の非語動詞が規則に基づき活用されるなら、英語の場合と同様に、実在動詞の正答率と同等になってよい。英語は屈折語だが動詞活用は非常に単純であるのに対し、日本語は膠着語で動詞活用は規則的だが種類が著しく多い。そこでこの15年間に発表された多数の論文を調べたところ、我々の再分析結果と同様に、フィンランド語(膠着語)の動詞活用や、セルビア語(屈折語)の複雑な名詞の屈折は、英語のように単純に規則/例外に区分け、比較することには無理があることが判明した。日本語の動詞活用には、意味の有無が大きな影響を与えるようであり、少なくとも意味の関与を考慮する必要がある。このため新たな枠組の中で実験を行うことになった。
著者
荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ヒトパピローマウィルス (HPV) 感染を病因とする子宮頸がんに対して開発された HPV ワクチンは感染予防に効果を示す一方で、多くの有害な副反応が世界中で報告され問題となっており病因・病態の解明が急務とされている。その症状は疼痛、運動障害、高次機能障害、内分泌異常など多岐にわたり、我々は HPV ワクチン関連神経免疫異常症候群 (HANS) と名付けた。HANS の病因・病態を明らかにするため HPV ワクチンを用いて HANS モデルマウスを作製し、運動機能および脳の組織学的異常を示すマウスが得ている。本研究では HANS 発症メカニズムの解明および安全性の高いワクチンの開発を目指して、HANS モデルマウスを用いたワクチン作用機序の解析および宿主反応メカニズムの解析を行う。まず宿主反応メカニズムを明らかにするために野生型メスマウスに HPV ワクチンおよび百日咳毒素処理を行いHANS モデルマウスを作製し、運動機能の低下がみられる個体を確認した。マウスより血液、脾臓などの免疫細胞および脳の組織を採取し、サイトカインなどの発現を測定し宿主の応答メカニズムを解析した。脳の組織切片を採取し自己免疫に深く関与するサイトカイン IL-17 の発現を免疫染色にて発現を調べたところ ワクチン+百日咳毒素投与群ではコントロール群と比較して IL-17 を発現する細胞の増加が示唆された。ワクチン投与患者の髄液で IL-17 の増加が示唆されており本モデルマウスとの共通性が示唆された。現在、脾臓より免疫細胞を単離し検討を行っている。
著者
山本 かほり 野入 直美
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

愛知朝鮮中高級学校での参与観察および学生,卒業生,教員,保護者へのインタビュー調査,行事への参加などを通じて,朝鮮学校での日常およびその意味を考察してきた。さらに朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行」にも同行調査を行い,朝鮮学校の生徒たちにとっての祖国の意味を考察した。朝鮮学校が当事者にとってもつ意味は,朝鮮人としての肯定的アイデンティティを形成し,日本においても朝鮮人として生きていくことの自己肯定感の育成,そして,朝鮮半島を「祖国」として考えつつ,日本において何ができるかを考える遠隔地ナショナリズムが育成されていることを考察した。
著者
増岡 彰 柴田 大樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

代数群はスーパー代数群に一般化される。この一般化が重要なのは、標数零の代数閉体上、リジッドなアーベル対称テンソル圏が必ずスーパー代数群の表現圏として実現される(Deligne)からである。この研究の目的は、ホップ代数の方法を用いてスーパー代数群の研究を行なうことである。可換環上のスーパー代数群とハリッシュ-チャンドラ対の間の圏同値を証明した。応用として、シュヴァレー・スーパー群を、有理整数環上再構成した。体上のスーパー代数群に関して、(i) 可解性、(ii) ベキ零性等の性質を研究した。結果を応用して、研究代表者と天野が与えた一般化ピカール・ヴェシオ理論を、スーパー化できると期待している。
著者
塩田 昌弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

フランスのレンヌ大学のFichouと共同研究を行い、2つの問題を解決した。1つは、解析的関数の芽の分類に関するある特異点理論の未解決問題。2つめは、 Milnor fiberに関する問題。1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。またイギリスのマンチェスター大学Tressleと共同研究をし、1つの問題を解決した。問題はArtinの近似定理の位相的証明で、良く知られた予想問題である。その結果は今書いている。そのほか、兵庫教育大学の小池敏司氏と埼玉大学の福井敏純氏と特異点理論の共同研究をして、1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。
著者
山本 和弘
出版者
栃木県立美術館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

厚生芸術の基礎研究は,少子高齢化が進行する日本社会において芸術の社会的有用性を再確認し、人々の生まれながらにしてもつ「創造性」を資源として社会において開花させることを目的とする。具体的には「医療」と「芸術」の融合への要請とアール・ブリュット研究の世界的隆盛が同根であることを確認し、「アーティストのサバイバル 第一回実態調査2014」を実施し、アーティストの仕事と社会からの要請がミスマッチしている現状を数量的に明らかにし、その原因を芸術系大学のカリキュラム上の需要に対する過少供給に見出した。厚生芸術研究は少資源国の日本においては、創造的資本論という新たな社会的要請に応えるものとなる。
著者
愼 蒼宇 檜皮 瑞樹 宮本 正明 鄭 栄桓
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は研究計画にあるとおり、広島・山口以外の瀬戸内沿岸・島嶼における対朝鮮・朝鮮人史関係資料の調査を中心に行った。まず、2017年8月には愛媛県立図書館で「愛媛県史」の収集資料整理目録をもとに、県政事務引継書の所在を確認するとともに、愛媛県歴史文化博物館では行政史料の所蔵状況を把握した。同じく8月の調査で、香川県三豊市文書館においては、旧高瀬町、旧財田町、旧三野町、旧山本町、旧仁尾町、旧豊中町、旧詫間町文書目録をもとに、寄留・教育などを中心とした資料の申請を行い、兵庫県公館県政資料館では在日朝鮮人関連の行政文書の申請と閲覧、撮影を行った。2017年12月には申請していた三豊市文書館の資料閲覧が一部許可されたので調査を行い、閲覧と写真撮影を行った。同じ調査日程で徳島県立文書館における在日朝鮮人関連の行政史料調査を行い、外国人登録などに関する資料の申請・撮影を行った。2018年2~3月には、愛媛県別子銅山における朝鮮人労働者関連の巡検踏査を行い、西予市城川文書館を訪問して、担当者の方を通じて所蔵行政史料の調査を行った。さらに、土佐市立図書館における所蔵行政史料の調査や、徳島県立文書館における行政史料調査を行い、土佐・徳島では申請・撮影も行った。土佐では朝鮮関連の古書調査・収集も行った。また、瀬戸内を通って、他地域に移動した朝鮮人に関する研究も同時進行で行い始めた。具体的には、2017年8~9月に、富山県公文書館、福井県文書館、岐阜県歴史資料館での行政史料、郷土新聞などの資料調査、申請、閲覧を行った。いずれも一部史料の収集・撮影を行うことができた。
著者
金森 修
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

一九六〇年代を中心に我が国のSFの発展を跡づける作業をしている内に、SF史だけに限定するのではない、より広範な視点が必要だということが分かってきた。SFは、同時代の他分野の文学・芸術活動と陰に陽に繋がっているからである。そして、その過程で、いわゆるSF作家と呼ばれる人々よりも広いカテゴリーにある作家たちの調査を始めた。そしてその中で、単なるSF作家とはいえず、戦後文学の重要な一画をなし、まだ充分な研究が進んでいない安部公房の存在の大きさを改めて認識するようになった。そのため、安部公房の全作品を集め、現在入手可能な安部公房論、また海外の安部公房並びにその周辺に関する文献群をすべて集めた。こうして、資料体的には完璧な準備が進んだので、現在改めてゆっくりと評論と作品自体を通読しているところである。もうかなりの量は読破したので、年度末、つまりこの研究の完成する頃には或る程度の目安がついているはずだ。というわけで現在は、安部公房を中心とした文学評論の執筆を目指して努力しているところである。
著者
早川 由紀夫 野村 正弘
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

福島第一原発の2011年3月事故によって大気中に放出された放射性物質は、短軸5km程度の楕円形をした霧のひとかたまりとして、地表から数十mまでの高さを速さ2~6m/sでゆっくり移動した。放射性物質の大量放出は大きく分けて3回あった(3月12日、15日、20-21日)。放射性物質はグローバルに広がったが、その6割が日本列島上に降り注いだ。大気中に放出されたセシウム総量は1京1000兆ベクレル。チェルノブイリ原発事故の1/12だった。原発事故に際して、以上の地学的知見をインターネットを利用してツイッターやブログですみやかに発信し、広く情報共有した。
著者
柴田 義貞 本田 純久 中根 允文
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

チェルノブイリ事故が被災家族の子供に及ぼしている精神身体的影響の大きさを明らかにすることを研究目的とする。チェルノブイリ30km圏内からキエフ市に避難してきた家族の子供約4,400人のうち、1,458人(男678人,女780人)を対象に、ウクライナ放射線医学研究所と共同で、2000年および2002年の定期検診時にGoldbergのGeneral Health Questionnaire12項目質問紙(GHQ-12)と不安-抑うつ尺度を用いた精神的健康状態の調査を行い、以下の結果を得た。1.対象者の平均(標準偏差)年齢は男15.7(1.3)歳、女15.7(1.2)歳で、ほぼ全員に診断がつけられており、扁平足および脊柱彎曲異常が41.6%ともっとも多く、胃および十二指腸の疾患、自律神経失調症および心筋症も20%を超えていた。自律神経失調症は、神経症、非精神病性精神障害、心筋症、胃および十二指腸の疾患、胆嚢・胆管の障害、偏平足および脊柱彎曲異常と有意な関連を示していた。2.Goldbergの不安-抑うつ尺度によって「不安あり」あるいは「抑うつあり」とされた者は、それぞれ36.1%、35.8%であった。また、GHQ-12の4項目以上に反応した者は男5.8%、女10.0%であった。3.神経症あるいは自律神経失調症のある者はない者に比し、「不安あり」「抑うつあり」とされた者、GHQ-12の4項目以上に反応した者の割合が有意に大きかった。4.Goldbergの不安-抑うつ尺度はGHQ-12と有意に関連していたが、これら3種類の尺度と疾患の有無との関連に関するロジスティック回帰分析は、それぞれが対象者の異なる側面を描き出すことの蓋然性が高いことを示しており、両者の併用がリスク集団のスクリーニングに有用であることが示唆された。
著者
鄭 暎惠 郭 基煥 李 善姫 師岡 康子
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

初めてヘイトスピーチを聞いた時「反感を感じた」71.9%、「驚いた」61.1%、「恐怖を感じた」49.7%の一方、「共感した」8.3%。「街頭で一緒にヘイトスピーチを唱えたい」1.7%、逆に「街に出てカウンター行動に参加したい」は10.4%。ヘイトスピーチを繰り返し聞くうち「違和感が増加した」52.8%、逆に「違和感が減少した」10.4%。ヘイトスピーチを「表現の自由」と見なすのは23.4%、「法で規制すべき」は47.6%。法規制すべきなのは、「人権を侵害する言動」76.3%、「特定の社会的弱者への憎悪表現」10.9%、「表現の自由を侵害する言動」38.2%、「思想信条の自由を侵害する言動」37%、「特定の政治家への憎悪表現」10.9%。外国人が増える結果として「日本の文化が豊かになる」70.7%、「社会の活性化」70.4%、「経済の活性化」59.2%、「日本人の働き口が奪われる」34%、「日本の文化がそこなわれる」22.5%。グローバル化で競争は激化、労働条件は悪化し、貧富の格差も拡大、将来への不安や閉塞感が増す中、少子高齢化で日本経済の停滞が懸念されるため、外国人に肯定的期待を寄せる者は少なくないが、外国人が対等・優位になり自分の既得権益が脅かされたり、追い抜かれる場合に排他的な傾向が強まる。「全体主義、排外主義ではなく、一人一人が大切にされ、お互いの個性、豊かさを尊重する、豊かさを分け合い、共に生きる社会を望んでいます。ヘイトスピーチをする人々は社会の中で自分が大切にされているという実感がないのではないでしょうか」(日本籍女性・自由記述より)ヘイトスピーチのターゲットとされた人々のアイデンティティにダメージを与える、特に子どもの成長に悪影響が大きいと考えられている。コミュニティの中で生きる場合より、孤立無縁でカミングアウトせずに生きる方がダメージが深いと思われる。
著者
宋 基燦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

朝鮮学校は、日本最大外国人学校組織である。また、70 年以上の長い歴史の中で、朝鮮学校は多数の卒業生を輩出した。しかし、朝鮮学校は今まであまり研究されてこなかった。その理由は、朝鮮学校が置かれている政治的特殊性にある。本研究は、朝鮮学校を卒業した人々に焦点を合わせ、朝鮮学校卒業後、日本社会で暮らしていく彼らの生活世界への理解を試みた。研究結果、朝鮮学校の卒業生は、朝鮮学校の共同体に留まる場合もあったが、概ね日本社会の成員として暮らしていた。また、一部の人は、朝鮮学校での学びを発展させ、トランスナショナルな生活世界を構築していた。
著者
梅澤 亜由美 大木 志門 小林 洋介 河野 龍也 大原 祐治 小嶋 洋輔
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は当初の予定通り、3回の研究会を開催した。08月11日:主に、研究成果報告【データ篇】についての調査発表・討議を行った。12月17日:主に、研究成果報告【論考篇】についての調査発表・討議を行った。平成30年03月14日:主に、平成30年度に向けての研究計画の作成を行った。その結果得られた主な研究実績は、以下の3点である。①研究成果報告【データ篇】作成ための調査、および報告。各自が担当する時代、作家について、〈内在的サイン〉(作者の登場名、職業、視点人物、自作言及など)〈外在的サイン〉(作家の年譜、伝記的事項や作者の日記、書簡情報等との照合)の調査を行い、データを作成。またそれらを研究会にて統合することにより、研究グループとして〈私小説性〉を可視化するための基準を確定することができた。②研究成果報告【論考篇】作成のための作業。①のデータをもとに、各自が担当する作家、および時代の〈私小説性〉の問題について分析、論考の作成を行った。これらは全体を統合し、公開の予定である。更に、これらの研究成果をもとに、〈私小説性〉可視化のためのマッピングの図表を作成することができた。以上については、すでに出版社も決定し、平成30年度に書籍として刊行予定である。③平成31年度に国際シンポジウムを開催するための準備。各渉外担当者が海外研究協力者と打ち合わせを行い、本研究の趣旨や状況について説明し、具体的な協力内容について各協力者と協議した。あわせて平成30年度にプレ会議を開催することとその日程、および上記の海外研究協力者を招聘することを決定した。その他、本研究に関する研究発表や論考については、研究発表欄に記載する。
著者
小林 俊治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「談合」は、主として建設業をはじめ、種々の業界で行われている不法なビジネス慣行である。本研究ではとくに「入札談合」を研究対象とした。これは、官公庁などがそれぞれの法令に規定されている金額をこえる公共工事などの受注業者を決定する際に、原則として一般公開入札をすることである。しかし、入札にさいして談合が組また場合、同業者などが前もって話し合い、あらかじめ受注者を決定し、その業者が指名されるように各入札者が「適当な」価格で入札をする。そして、談合グループの企業は、リーダー企業の判断により、順次、受注できるか、その他の方法により利益の配分を受ける。それにより業界の和がたもたれ、相互扶助の体質が強化される。談合に参加せず、独自に入札する業者はアウトサイダーとして、業界の相互扶助のネットワークから排除される。また、官公庁側も「天下り」先の確保のためなどに、特定の業者を優遇する「官製談合」をなすこともある。このような談合行為は、法律的には独占禁止法違反の不当な取引制限であり、刑法の談合罪(96条、3の(2))にあたる。談合行為の発生の大きな理由のひとつは、企業間競争の回避を選好する日本的企業倫理風土がある。歴史学的には、こうした同業者の相互扶助行為は、江戸時代までは商業取引の当然の慣行であると指摘している。そこには、集団主義があり、和を重視する倫理がある。ただ、今日のようにテクノロジーが急速に発展している時代には、主として価格だけで受注業者を決定することには、限界がある。すなわち、受注業者が高価な素材や最新のテクノロジーを使用していない可能性がつよいのである。そこで、価格のみならず、技術レベルなどを考慮した総合評価方式による受注者決定の方法が導入され始めている。ただその場合、技術進歩などを中立的に判断できるであろう、発注者側の官公庁の発言権が強まり、ここでも「官製談合」の形成の危険がある。
著者
溝口 哲郎 齋藤 雅元
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公職に携わる人々が私益のために職権を濫用する腐敗・汚職の問題は,資源配分に歪みをもたらす.本研究は,腐敗・汚職が国家・市場制度にもたらす影響の度合いを,①オークション理論,②不完全競争市場を想定した経済理論モデルを用いて分析した.本研究では①に関する研究に進捗があり,国際的な査読誌であるPacific Economic Reviewに2014年に掲載された.具体的には,官僚に裁量権があり賄賂の対価に再入札を認める場合に,非効率な企業が政府調達を勝ち取る可能性がある.その解決策として海外部門への輸出を導入することで,効率的な企業が高品質な商品を提供する状況になることを示した.
著者
邉 英治
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究年度第4年目にあたる今年度は、本研究プロジェクトのとりまとめに向けて、追加的な一次史料および二次資料の収集を進めるとともにデータ分析を行い、それらをもとにして論文化及び著作化を進めた。一次史料の収集と関わっては、イギリス・エディンバラのRBSアーカイブに出張し、金融エリートとして日本の銀行業の近代化に多大な影響を与えたアレクサンダー・シャンドが、晩年に(執行)役員を務めたパース銀行の各種委員会の日誌を中心に収集した。そして、総支配人から異例の昇格を果たしたシャンドをはじめとする執行役員陣が、どのように健全性を確保しつつ、日々の産業金融業務を遂行していたか、検討を進めた。二次資料の収集と関わっては、財閥系銀行及び有力地方銀行の役員を務めた金融エリートの自伝・伝記類を中心に国立国会図書館などで収集し、日本の銀行業の近代化にどのような影響を及ぼしていたか、検討した。例えば、横浜銀行の伊原隆は、公共部門の金融と産業金融とのバランスをとることで、健全性と収益性の両立を図っていたことが明らかとなった。なお、これらの研究成果の一部は、共著書に採録される予定である。国際比較の観点からは、金融エリートの役割の日本的特徴を明らかにするため、スウェーデン金融史を専門とされるウプサラ大学のヴェンシュラーク博士と打合せを行い、スウェーデンの金融エリートとの比較分析を進めた。なお、本研究成果の一部は、国際ジャーナル(Social Science Japan Journal)に投稿済みであり、査読の結果を待っている状況である。
著者
水野 直樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

日本の植民地(特に朝鮮)における治安維持法の運用、体制などに関する実証的検討を課題とする本研究は、次のような諸点において日本内地とは異なる治安維持法体制が朝鮮で構築されていたことを明らかにした。法制そのものが日本内地と異なる朝鮮では、治安維持法に対する当局の認識も相当異なり、斎藤総督は、治安維持法が議会で成立しなければ、朝鮮独自の制令で制定すると示唆する発言をしている。同法が最初に適用されたのは、日本内地ではなく朝鮮における事件であった。当初から、治安維持法は朝鮮の独立運動に適用されたが、「朝鮮独立=帝国領土の僭竊=統治権の内容の縮小=国体変革」という図式が判例として確立するのは、1930-31年のことである。独立運動への適用と並んで在外朝鮮人への適用によって、同法は拡大解釈された。検挙者・被起訴者のうち、「帝国領士」外に住む朝鮮人の比重は非常に高かった。中国共産党に加入した朝鮮人にも適用されたため、同法はいっそう拡大解釈・適用されることになった。朝鮮における治安維持法運用の大きな特徴は、死刑判決が下されたことである。従来の研究では、同法違反だけで死刑判決を受けた事例はないとされてきたが、少なくとも1件あったことを明らかにすることができた。1930年代以降の転向政策においては、朝鮮人に厳しく転向が求められた。「内鮮一体」「皇国精神」の強調、被保護観察者の生活全体を監視・教化するシステム(大和塾)の構築などは、日本内地では見られなかったものてある。思想犯予防拘禁制度は日本内地に先がけて朝鮮で実施され、被収容者に「日本人になり切る」ことを求め、それが認められない限り、釈放の可能性のないシステムとして運用された。このような植民地における実態を無視しては、治安維持法の全体像を把握・理解することはできないのである。