著者
向田 昌志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-08-05)

人工ピン材料を超電導膜に入れ、磁場中超電導特性を向上させた膜のTcを人工ピンのない膜と同等のTcまで戻すため、さらに物質本来の「強い超電導特性」が発現し、対破壊電流密度の25%以上という高いJcを実現するため、人工ピンの成長機構解明として、微傾斜基板を用い、1次元人工ピンの曲がりを調べた。その結果、ある角度以上で、人工ピンは超電導膜のステップフロー方向に成長し、超電導膜の一番弱いc-軸方向の磁場中臨界電流密度を高める効果が無くなることが分かった。また、テープ線材に不可欠なプロセスの低温化、高速化も行った。さらに、鉄系超電導膜の上部臨界磁場を詳しく調べる研究も行った。
著者
松島 泰勝
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28 (Released:2011-08-05)

本研究の目的は、 1972年に沖縄県が日本に「復帰」して以降、実施された振興開発に関する分析と、沖縄県における内発的発展に関する検討という2つに大きく分けることができる。前者に関する本研究の成果は、振興開発が初期の目標を実現できなかった要因を明らかにしたことである。特に、振興開発を米軍基地の押し付け策と連動させる「アメとムチ」の政策が振興開発失敗の最大の要因であることが本研究によって明らかにされた。後者に関する本研究の成果は、名護市の「逆格差論」に基づく内発的発展がなぜ近年再評価されたのかの理由を分析したことである。また沖縄全体の内発的発展を実現するため政策提案も行った。
著者
山本 かほり 野入 直美
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28 (Released:2011-08-05)

愛知朝鮮中高級学校での参与観察および学生,卒業生,教員,保護者へのインタビュー調査,行事への参加などを通じて,朝鮮学校での日常およびその意味を考察してきた。さらに朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行」にも同行調査を行い,朝鮮学校の生徒たちにとっての祖国の意味を考察した。朝鮮学校が当事者にとってもつ意味は,朝鮮人としての肯定的アイデンティティを形成し,日本においても朝鮮人として生きていくことの自己肯定感の育成,そして,朝鮮半島を「祖国」として考えつつ,日本において何ができるかを考える遠隔地ナショナリズムが育成されていることを考察した。
著者
増岡 彰 柴田 大樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

代数群はスーパー代数群に一般化される。この一般化が重要なのは、標数零の代数閉体上、リジッドなアーベル対称テンソル圏が必ずスーパー代数群の表現圏として実現される(Deligne)からである。この研究の目的は、ホップ代数の方法を用いてスーパー代数群の研究を行なうことである。可換環上のスーパー代数群とハリッシュ-チャンドラ対の間の圏同値を証明した。応用として、シュヴァレー・スーパー群を、有理整数環上再構成した。体上のスーパー代数群に関して、(i) 可解性、(ii) ベキ零性等の性質を研究した。結果を応用して、研究代表者と天野が与えた一般化ピカール・ヴェシオ理論を、スーパー化できると期待している。
著者
塩田 昌弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01 (Released:2010-08-23)

フランスのレンヌ大学のFichouと共同研究を行い、2つの問題を解決した。1つは、解析的関数の芽の分類に関するある特異点理論の未解決問題。2つめは、 Milnor fiberに関する問題。1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。またイギリスのマンチェスター大学Tressleと共同研究をし、1つの問題を解決した。問題はArtinの近似定理の位相的証明で、良く知られた予想問題である。その結果は今書いている。そのほか、兵庫教育大学の小池敏司氏と埼玉大学の福井敏純氏と特異点理論の共同研究をして、1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。
著者
愼 蒼宇 檜皮 瑞樹 宮本 正明 鄭 栄桓
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

本年度は、研究計画にもあるとおり、瀬戸内のなかでも、在日朝鮮人人口の多かった広島、山口を中心に、岡山・香川にも足を延ばして公文書・郷土新聞などの資料収集、検討を主に行った。そのなかで、広島においては、広島県立文書館、広島市立公文書館での資料調査を行い、前者においては、戦前において県町村文書のなかに、協和会関連、戦時協力関連、居住状況関連の史料があり、戦後においては外事課の外国人登録関連、地方課での民籍・戸籍関係などの史料があった。広島市立文書館においては、市町村文書が充実しており、寄留や居住、就業、戦後の戸籍、団体などに関する史料が多く存在することがわかった。これは大きな成果であり、その量も多く存在するので、次年度も引き続き資料収集、検討を行うことにする。山口は山口県立文書館と県立図書館で資料調査を行い、戦前においては警察署管内状況報告(大正)、戦後においては警察・進駐軍関連、知事の引継文書などがあり、これらのなかに山口の在日朝鮮人に関する動向を示す資料をいくつか発見して収集することができた。また、周防大島文化交流センターにある宮本常一記念館を訪問し、宮本常一の調査ノートを収集することができた。岡山は岡山県立記録資料館で、戦前・戦後の牛窓市などを中心とした岡山市周辺地域の市町村文書を調査し、数は少なかったが、寄留関係の資料を発見することができた。香川では香川県文書館で、県市町村の文書を調査したが、大きな成果を得ることはできなかった。しかし、市レベルでの資料調査が必要であり、引き続き次年度も資料収集、検討を行う必要がある。ほかにも瀬戸内との関連も深い、長崎の島々、沖縄での在日朝鮮人関連の資料調査も個別に行った。本年度はこうした点で大きな成果を挙げ、次年度以降の分析、検討、研究成果の作成のための大きな礎を築けたと言える。
著者
鄭 暎惠 郭 基煥 李 善姫 師岡 康子
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

ヘイトスピーチがサイレントマジョリティに及ぼす社会的影響に関する量的調査「表現の自由とヘイト・スピーチ法規制に関する意識調査」の結果、格差が拡大するグローバル社会での生存競争が激化する中、既得権が脅かされると感じて排他的になる割合が、若年層ほど大きいことがわかった。これは従来のナショナリズム・排外主義が、保守的な高齢層ほど強いのとは異なる現象である。2012年以降のヘイトスピーチは、USAやEUで台頭する排外主義と通底するものがあると言える。日本社会の状況・文脈固有の要因と同時に、グローバル社会に共通する要因を見る必要がある。ヘイトスピーチは「殺せと言っているだけで、誰も殺してはいない」と言われるが、ターゲットとされた被害当事者にとっては、人間としての尊厳を奪われる「アイデンティティの殺人」に相当する。「魂の殺人」と言われる虐待・性暴力などと同様、被害が他者からは「わかりにくい」が、心身ともに「原因不明」の多様な症状を伴い、健康面へのダメージは大きいと推測される。ヘイトスピーチの被害当事者への質的調査(インタビュー)を行うのと並行して、精神科医・保健師を交えて、ターゲットとされた人々に与える健康面での影響について、学習会を開催した。ターゲットにされた人々は、ヘイトスピーチによりその表現を否定されて「表現の自由」が奪われつつあり、過度の緊張・不安・恐怖が与えられることで、人間関係・社会生活において看過できない悪影響がある。
著者
宋 基燦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

朝鮮学校は、日本最大の外国人学校組織であるにも関わらず、その特殊な政治的立場とそれに起因する閉鎖性のため、今まで研究者の接近がやや難しい領域だった。本研究は、朝鮮学校の教育の実態を理解し、それが日本社会に示唆する意味を長期的な面で明らかにするための人類学的研究として位置付けることができる。研究代表者は、13年前から朝鮮学校の現場研究を行っており、当時の調査に基づいた結果を朝鮮学校の民族誌として発表したことがある。本研究は、当時の研究に続く後続研究として、当時の学生たちのその後を追跡することにより、朝鮮学校の卒業生の日本社会における生活世界を理解することを目的としている。主な研究対象として、当時の生徒と教師、現在の朝鮮学校現場を設定している。13年前の調査現場への参与観察は、本務校の業務の関係で、実現することが現実的に難しかったため、2016年からは、京都の朝鮮学校を中心に現場研究を進めている。その傍ら卒業生、特に韓国で活動している朝鮮学校卒業生の事例を中心的な事例として訪問インタビューなど、研究を進めてきた。なお、朝鮮学校が持っている政治的特殊性への理解を深め、それを研究に反映するべく、朝鮮大学や総連関係者との関係構築にも努めてきた。その結果、北朝鮮を取り巻く国際政治の環境変化が朝鮮学校へ及ぼす影響に関する理解を得ることができた。この理解は、今後の研究の展開と結果をまとめるにおいて非常に重要な部分になるであろう。
著者
小林 俊治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

「談合」は、主として建設業をはじめ、種々の業界で行われている不法なビジネス慣行である。本研究ではとくに「入札談合」を研究対象とした。これは、官公庁などがそれぞれの法令に規定されている金額をこえる公共工事などの受注業者を決定する際に、原則として一般公開入札をすることである。しかし、入札にさいして談合が組また場合、同業者などが前もって話し合い、あらかじめ受注者を決定し、その業者が指名されるように各入札者が「適当な」価格で入札をする。そして、談合グループの企業は、リーダー企業の判断により、順次、受注できるか、その他の方法により利益の配分を受ける。それにより業界の和がたもたれ、相互扶助の体質が強化される。談合に参加せず、独自に入札する業者はアウトサイダーとして、業界の相互扶助のネットワークから排除される。また、官公庁側も「天下り」先の確保のためなどに、特定の業者を優遇する「官製談合」をなすこともある。このような談合行為は、法律的には独占禁止法違反の不当な取引制限であり、刑法の談合罪(96条、3の(2))にあたる。談合行為の発生の大きな理由のひとつは、企業間競争の回避を選好する日本的企業倫理風土がある。歴史学的には、こうした同業者の相互扶助行為は、江戸時代までは商業取引の当然の慣行であると指摘している。そこには、集団主義があり、和を重視する倫理がある。ただ、今日のようにテクノロジーが急速に発展している時代には、主として価格だけで受注業者を決定することには、限界がある。すなわち、受注業者が高価な素材や最新のテクノロジーを使用していない可能性がつよいのである。そこで、価格のみならず、技術レベルなどを考慮した総合評価方式による受注者決定の方法が導入され始めている。ただその場合、技術進歩などを中立的に判断できるであろう、発注者側の官公庁の発言権が強まり、ここでも「官製談合」の形成の危険がある。
著者
溝口 哲郎 齋藤 雅元
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

公職に携わる人々が私益のために職権を濫用する腐敗・汚職の問題は,資源配分に歪みをもたらす.本研究は,腐敗・汚職が国家・市場制度にもたらす影響の度合いを,①オークション理論,②不完全競争市場を想定した経済理論モデルを用いて分析した.本研究では①に関する研究に進捗があり,国際的な査読誌であるPacific Economic Reviewに2014年に掲載された.具体的には,官僚に裁量権があり賄賂の対価に再入札を認める場合に,非効率な企業が政府調達を勝ち取る可能性がある.その解決策として海外部門への輸出を導入することで,効率的な企業が高品質な商品を提供する状況になることを示した.
著者
邉 英治
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

研究年度第3年目にあたる今年度は、これまでに収集したデータを整理・精査した上で、必要となる研究作業を適宜進めた。大蔵省及び日本銀行の金融エリートと日本の銀行業の近代化に関わっては、安定成長期における金融エリートの天下りの方向性、すなわち相互銀行の地方銀行化などの各種金融機関の同質化と競争激化との関連での民間金融機関への実質的トップとしての再就職と関連する1970年代以降の金融自由化について、日本銀行アーカイブで一次史料を収集するとともに、二次資料を東京大学経済学部図書館及び国立国会図書館等で調査・収集した。史資料分析の結果、戦後初のマイナス成長を受けた国債の大量発行開始という財政上の理由や証券化の開始という金融革新それに伴う金利自由化という時代背景、さらには郵便貯金(政府)の躍進による大蔵省・日本銀行の相対的地位の脅かしといった国内的な事情が、先行的に金融自由化を導いており、そこに1980年代以降のアメリカを中心とする外圧が加わったことが明らかとなった。このような時代の流れを銀行監督関係の金融エリートたちが主体的にリードして、天下りの必要性を増大させた証拠は見つからなかった。安定成長期における天下りの主眼は、あくまで同族経営や縁故貸出といった経営問題を是正することにあったといえよう。なお、研究成果の一部について、イタリア・フィレンツェのEuropean University Instituteで開催された国際会議において、招待報告を行った。さらに、東海銀行の前身である名古屋第十一国立銀行の研究と関連して、初代頭取・役員や初代支配人等と東海地方の銀行業の近代化との関連についても研究を行った。その成果の一部は、地方銀行会館の月例研究会において報告し、学術論文として公表した。
著者
ハンリー シャロン 櫻木 範明 伊藤 善也 今野 良 林 由梨 岸 玲子
出版者
日本赤十字北海道看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

子宮頸癌予防HPVワクチンの接種率向上の方策を検討する為、思春期女子を持つ母親を対象とする2つの調査を実施した。ワクチンが無料なら娘に接種させるとした母親が92%だった。接種の障壁は安全性に対する不安と母親の頸がん検診受診歴だった。医師の勧奨は意思決定に前向きな影響を与え、ワクチン効果を納得することもワクチン受容度に関連した。また、頸がん受診率の低い地域では、詳細な情報提供がワクチン受容度を高めることを示した。本研究の結果により、接種率向上の要因が明らかとなった。
著者
仲川 勇二 檀 寛成 井垣 伸子 小野 晃典 伊佐田 百合子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

経営科学の分野で世界最高峰の学術雑誌であるManagement Science誌(2014年Vol. 3)に仲川の離散最適化に関する新解法の論文が掲載された。最適化の分野での掲載は日本人として40年ぶりである。また、非凸問題が離散最適化解法で容易に解けることを利用して、金融工学の難問やゲノム科学の「次元の呪い」や「失われた遺伝率」と呼ばれよく知られた難問の解決に向けて、すでに顕著な成果が得られている。ゲノム科学の難問の克服は、高血圧、がん、統合失調症等の複雑な病気の治療を大きく前進させる可能性がある。
著者
緒方 奈保子 車谷 典男 上田 哲生 西 智
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

高齢者の眼科健診「藤原京EYEスタディ」を行い2868人(男性1513 人、平均年齢76.3±4.9)が受診した。年齢とともに視力が低下していたが、平均矯正視力はlogMAR0.048で、視力低下(logMAR>0.2)は6.6%であった。白内障術後は19.5%。認知機能検査MMSE平均は27.3±2.3、認知機能低下あり(23点以下)は5.7%で、年齢、視力低下、学歴と関連を認めた。加齢黄斑変性(AMD)患者66例における血漿PEDFは10.2±3.14μg/mlとコントロール群8.23±1.88μg/mlより高く(p<0.01)、PEDFがAMDの発症に関与している可能性が示唆された。
著者
千田 有紀
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

本研究は、エコロジーとフェミニズムの関係を問い直し、理論的に深化させることを目的としている。その際に、アメリカのカリフォルニアでの反原子力運動に着目する。この運動のうち、カリフォルニア大学が広島の原子爆弾を開発したことを批判し、日本に関心を寄せながら約30年間活動を続けている団体Circle of Concernと、福島第一原子力発電所の事故以降、日本領事館への請願活動を行っている団体を取り上げる。これら団体の調査はすでに、平成27年度におこなっている。今年度は、昨年度のこのフィールドワークの成果である、アメリカのカリフォルニア州バークリーで行ったインタビュー調査のまとめと、参与観察調査の分析をおこなった。さらにそこに韓国の環境運動を視野に入れて、日本の東日本大震災が韓国の環境運動にどのような影響を与えたのかについてなど、日米比較の枠を超えて分析の視野を広げた。有機農法やスローライフといった運動が、放射性物質にどう立ち向かえるのかを考えさせられ、また運動のあり方の再考がせまられたという。それと並行して、エコロジーやフェミニズム、とくに母性に関する基礎文献を読み込んだ。さらに「一億総活躍社会」がめざされ、「保育園落ちた、日本死ね」といったブログが注目され、女性の就労が支援されているかのような社会変動の中で、専業主婦的な性別役割分業を前提とした母性神話は変容をよぎなくされている。その変化についても考察した。