- 著者
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久保 勇輔
高木 大輔
森上 亜城洋
- 出版者
- 東海北陸理学療法学術大会
- 雑誌
- 東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- pp.84, 2012 (Released:2013-01-10)
【目的】 転倒セルフエフィカシーとは、転倒しないで日常生活をどのくらい行えるかという見込み感であり、セルフエフィカシー(自己効力感)や自信は身体機能と強く結びついている。自己効力感と身体活動量には関係性があると報告されているが、一方で身体活動をどのように維持するかという問題点も浮上している(竹中ら、2002:加藤ら、2006)。谷本ら(2010)によると、加齢に伴う身体組成の変化は、高齢者の生活機能障害に深く関わり、加齢に伴う筋肉量の減少と基本的ADLの障害は関連し、高齢期の健康づくりにおいては下肢筋肉量に着目した支援の必要性が報告されている。そこで筋肉量の増減が、高齢者の生活機能への変化を通して、自己効力感に影響を及ぼす可能性が推測されるため、本研究では加齢、筋肉量、自己効力感との関係性を検討した。なお本報告は、対象者に紙面、口頭にて説明し同意を受け、公立森町病院倫理委員会の承認を得た。【方法】 対象は、地域在住女性高齢者24名とし、年齢は71±9歳、身長は148.9±5.6㎝、体重48.4±7.4㎏であった。全身筋肉量は、BIA法(生体インピーダンス法)でデュアル周波数体組成計(TANITA:DC-320)を用いて測定した。Brown et al(1998)は、BIA法で推定した筋横断面積とCT法で測定した筋横断面積に有意な相関があることを報告している。転倒セルフエフィカシーに対しては、竹中ら(2002)が開発した転倒セルフエフィカシー尺度(FES:falls efficacy scale)を用いた。加齢、筋肉量、転倒セルフエフィカシー尺度の各々の関係において、Pearsonの積率相関係数で検討し、有意水準は、危険率5%未満にした。【結果】 加齢と全身筋肉量の間に、有意な負の相関を認め(r=-0.57, p<0.05)、加齢に伴い全身筋肉量が減少していた。また、筋肉量とFESには有意な正の相関を認め(r=0.44, p<0.05)、筋肉量が多い対象者は、動作に対して自信を持っていることが示された。【考察】 全身筋肉量が自己効力感に影響を及ぼす可能性が示唆された。高齢者では加齢に伴い筋肉量が減少し、身体活動量が減少することで自己効力感が低下することが推測される。自己効力感は多くの研究において運動参加への定着についての重要因子とされている。そこで本研究より高齢者においては、まず筋肉量を増やすことが生活機能障害、ADL障害を改善し、結果身体活動を通して自己効力感を向上できるのではないかと考える。一方で今回は、全身筋肉量について検討したが、加齢ではサルコペニアにより速筋線維は萎縮し(河野ら、2011)、遅筋線維は影響を受けない(Fujiwara et al, 2010)。高齢者では特に筋線維間の分布に差異を認めるため、今後は筋線維組成からの検討もしていきたい。また身体活動量に影響を及ぼす要因として、認知機能の低下や環境因子もあるため合わせて検討する必要がある。【まとめ】 今回、全身筋肉量と自己効力感に関係性があり、高齢者では筋肉量を増やすことが生活機能の改善を通して、自己効力感を変化させる可能性が示唆された。