著者
鈴木 康行 金井 章 石川 敬 鈴木 美好 松原 美保 山口 通孝
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O001, 2008 (Released:2008-12-09)

【目的】 股関節疾患では,股関節外転筋筋力低下によるTrendelenburg跛行やそれに伴う日常生活活動能力低下がしばしば大きな問題となる.そのため股関節疾患に対するリハビリテーションでは,open kinetic chain(以下OKC)での外転反復運動や異常歩行を防ぐために歩行を前提としたclosed kinetic chain(以下CKC)での荷重負荷を伴う運動などが用いられている.しかし,OKCトレーニングは股関節外転筋に関してはオーバーロードの原則を満たすものの,特異性の原則を満たす運動ではない.そこで今回我々は,CKCでの股関節外転筋活動に焦点を当てた運動として,横歩きに着目し,股関節外転モーメントおよび中殿筋活動を,歩行と比較・検証したので報告する. 【方法】 対象は,整形外科的疾患・神経学的疾患の既往のない健常男性8名(年齢19.6±0.7歳,身長169.8±3.4cm,体重63.6±9.0kg)とした.被験者には本研究の趣旨を十分に説明し,参加への同意を得て行った.被験者は,床に記した50cm間隔の線を踏むようにさせ,裸足にて10mの歩行路を歩行した.歩行課題は,歩行と横歩きとし,歩行率はメトロノームにて110 steps/minに統一して各3回計測した.横歩きは,すべて左方向に行い,左右の下肢について検討した.関節モーメントは,三次元動作解析装置VICON MX (VICON社製)と3枚のフォースプレート(AMTI社製)を用いて測定した.筋活動は,表面筋電計TELEMYO2400TG2(NORAXON社製)を用いて,中殿筋・長内転筋について計測し,平均振幅の最大収縮時に対する割合を算出した. 【結果】 股関節外転モーメントは,歩行時に比べ横歩き時の方が左右ともに有意に低い値となった.中殿筋活動は,左右の立脚相・遊脚相ともに横歩き時で有意に高値を示した.また,長内転筋活動は左右の立脚相・遊脚相ともに,横歩き時に有意に低値を示した. 【考察】 歩行に比べ,横歩きの方が中殿筋活動は有意に高値を示し,股関節外転モーメントは有意に低値を示したことから,横歩きは股関節に対して低負荷で中殿筋筋力増強できる運動方法であると考えられた.また横歩きでは,左側が立脚相で内転運動となり,右側で外転運動となっていたことから,中殿筋の求心性収縮・遠心性収縮をより意識したトレーニングになると考えられた.今後は,より効果的な運動方法を探るために,歩行率を変え中殿筋活動・股関節外転モーメントはどのように変化するのか研究していきたい.
著者
福田 紗恵子 高本 考一 浦川 将 石黒 幸治 中田 健史 堀 悦郎 小野 武年 西条 寿夫
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】有痛性の筋硬結部は、トリガーポイント(TP)と呼ばれ、慢性痛を呈する筋・筋膜性疼痛症候群や、他疾患によって二次的に生じた筋緊張による痛みの原因部位であり、これらTPへの圧迫刺激は、筋骨格系疼痛の鎮痛治療に効果があることが報告されている。一方、前頭葉の前方に位置する前背内側前頭前野は、慢性疼痛患者の自発痛により活動が増大し、痛みや精神的ストレスに対する反応形成および交感神経活動に関与することなどが報告されている。さらに、交感神経活動は、慢性痛の増悪に関与している。本研究では、TP圧迫刺激による鎮痛の神経機構を明らかにするため、慢性頸部痛を有する被験者の頸部TPに徒手圧迫刺激を加え、前背内側前頭前野および自律神経機能に及ぼす影響を解析した。【方法】慢性頸部痛を訴える成人女性19名(24.1±0.6歳)を対象とし、1) TP圧迫群、および2) 近傍の 非トリガーポイント(Non-TP)圧迫群の2群にランダムに割り付けた。圧迫刺激は、被験者を安静仰臥位にし、圧センサーを装着した実験者の母指および示指を用いて圧迫刺激を加えた。圧迫刺激の強度は、あらかじめ圧痛閾値と最大圧痛刺激強度を測定し、各被験者の平均値を用いた。課題プロトコルは、圧迫前休息30秒、圧迫刺激30秒およびそれに続く休息90秒を1サイクルとし、合計4サイクル行った。これら課題中に、近赤外分光法により前部前頭前野の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)濃度変化を測定した。自律神経活動は、心電図RR間隔の周波数データから、低周波成分(LF)および高周波成分(HF)を算出し、LF/HF比を交感神経活動、HFを副交感神経活動の指標とした。痛み評価は、測定前後で視覚的アナログスケールを用いて主観的痛みスコアを記録した。なお、本研究は富山大学の倫理委員会に承認を得ており、被験者に対して研究の内容と施行法を説明し同意を得た後、実験を遂行した。【結果】TP圧迫群では、Non-TP圧迫群と比較して主観的痛みスコアが有意に改善した。Non-TP圧迫群では、1) 前背内側前頭前野領域Oxy-Hb濃度が上昇、2) 副交感神経活動の指標となるHFが低下し、交感神経活動の指標となるLF/HF比が上昇した。これに対し、TP圧迫群では、1) 前背内側前頭前野領域Oxy-Hb濃度が低下、2) HFが上昇し、LF/HF比が低下した。さらに、圧迫による前部前頭前野領域Oxy-Hb濃度変化とLF/HF比との間に有意な正相関が認められ、Oxy-Hb濃度が減少した被験者ほど交感神経活動は低下した。また、圧迫による主観的痛みスコアの変化とLF/HF比との間には有意な正相関が認められ、痛みが軽減した被験者ほど交感神経活動は低下した。【考察】本研究では、TP圧迫により前背内側前頭前野領域のOxy-Hb濃度が低下した。また、Oxy-Hb濃度が低下した被験者ほど、交感神経活動も低下した。先行研究において、Oxy-Hb濃度低下は、その領域のニューロン活動の抑制を示唆することから、TP圧迫は前背内側前頭前野領域の神経活動を抑制したことが示唆される。また、前背内側頭前野領域は脳幹の下位自律神経中枢に出力し、交感神経系を調節していることが示唆されている。これらのことから、TP圧迫が同領域の活動を抑制し、それに伴い交感神経活動も抑制されたことが示唆される。さらに、本研究では交感神経活動が低下した被験者ほど疼痛が軽減した。交感神経は骨格筋を直接的に神経支配しており、過度の交感神経活動は筋緊張を高めることにより慢性痛を増悪させることが示唆されている。これらのことから、TP圧迫時に前背内側前頭前野の活動が抑制されることにより、交感神経活動が抑制され、疼痛軽減をもたらすことが示唆される。一方、前背内側前頭前野領域は慢性痛の認知的側面にも関与していることが示唆されている。以上から、TP圧迫は、前背内側前頭前野の活動を抑制し、この脳活動の抑制は、慢性痛の増悪に関与する交感神経活動を抑制するとともに、痛み認知を抑制すると考えられる。【まとめ】TP圧迫刺激により主観的痛みスコアの改善、前背内側前頭前野領域のOxy-Hb濃度低下、および交感神経活動指標であるLF/HF比の低下を認めた。さらに、主観的痛みスコアの改善と自律神経機能、ならびに自律神経機能と前背内側前頭前野領域の活動は相関していた。これらのことから、TP圧迫刺激は、前背内側前頭前野領域の活動を抑制し、同領域を介して慢性痛の増悪因子である交感神経活動が抑制され、同時に痛み認知過程を抑制することにより、鎮痛効果を有することが示唆される。
著者
松浦 康治郎 高木 大輔 影山 昌利 小島 怜士 佐々木 嘉光 宮城 道人
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.203, 2011 (Released:2011-12-22)

【はじめに】長胸神経麻痺とは、長胸神経が外傷等により損傷を受けることで前鋸筋の筋力低下をきたし、肩関節の屈曲、外転方向の運動が障害され、翼状肩甲骨等の臨床症状を呈す疾患である。一般的に外傷性の神経断裂がなければ2~3ヶ月、遅くとも6ヶ月程度で自然治癒してくるとされ、24~48ヶ月でほぼ回復するとされており、理学療法介入の機会は少ない。<BR>1998年に北村らは、8症例に対し保存的治療後5年間の経過を追ったが、治療成績には個体差がみられ、また、1995年にKuhnは二次的に上肢帯機能不全を呈す症例があると報告している。つまり、長胸神経麻痺症例がたどる経過や治癒成績は一定していないと考えられ、さらに理学療法の介入効果の報告は散見される程度である。今回長胸神経麻痺を呈した後に運動時の疼痛を主とする二次的な上肢帯機能不全の合併が疑われた症例を経験した。約8ヶ月間の理学療法介入を経験する機会を得たため、経過をまとめて報告する。 【症例紹介】症例は10歳代後半の男性で、平成21年5月上旬に左肩周辺に疼痛が出現し、上肢挙上困難となった。8月中旬に当院受診し、長胸神経麻痺と診断。その後、上肢安静、運動制限(良肢位保持)を行い約3ヵ月後より医師の指導で肩周囲の自主訓練を行ったが、機能改善に乏しく、同年12月中旬より理学療法開始となった。尚、今回の報告に際し、本人に口頭および紙面で説明し同意を得た。 【初期評価時現症(平成21年12月中旬)】左肩ROM(Active/Passive)は、屈曲80°P/120°P、外転60°P/70°P。徒手筋力テスト(MMT)は屈曲・外転4。握力(左/右)25/47kg。疼痛(NRS)は、左肩屈曲・外転・外旋の自動運動時に6~8で、翼状肩甲を認めた。筋持久力の評価を目的とし、連続して反復運動可能な回数(左/右)を評価した結果、肩屈曲2/53回、肩外転1/45回であった。 【経過】平成21年12月中旬より理学療法を開始。ホットパック、ストレッチ、マッサージ、他動・自動のROM訓練を40~60分、週4回実施した。理学療法介入より40病日で左肩屈曲・外転筋群の筋力がMMT5となり、59病日には、ROMが左肩自動屈曲120°、外転150°となった。84病日には左肩自動屈曲・外転ROMが150°になり、116病日には左肩自動屈曲・外転ともに170°まで改善した。116病日より前鋸筋を中心に筋力訓練を開始。127病日に明らかな翼状肩甲が消失し、左肩自動運動時痛も減少を認め(NRS 4~6)、左肩反復屈曲は15回、外転は12回まで可能となった。143病日には左肩自動屈曲、外転180°まで改善。189病日には左肩反復屈曲が25回まで可能となり、左肩運動時痛はNRS2~4となった。200病日には左肩反復外転20回となり、228病日に理学療法終了となった。 【最終評価時現症(平成22年7月下旬)】左肩ROM(Active/Passive)は、屈曲180°P/180°、外転180°P/180°。MMTは屈曲・外転5。握力(左/右)32/50kg。疼痛(NRS)は、肩屈曲・外転・外旋時に2~4で、明らかな翼状肩甲は消失。連続して反復運動可能な回数(左/右)は、肩屈曲25/48回、肩外転20/51回であった。 【考察】長胸神経麻痺後の症例に対して、約8ヶ月間の理学療法を実施した結果、MMTが介入後約40病日、ROMが約140病日まで改善を認めた。ROMの改善については、2009年に加古原らは過剰収縮のある筋群を抑制し、前鋸筋訓練を行うことで、長胸神経麻痺症例の肩ROMが大幅に改善したと報告している。本症例も、代償筋群へのリラクセーションや前鋸筋を中心とした訓練により、筋の過緊張が抑制され、ROMが改善したと考える。また、MMTにおいても、代償筋群の過剰収縮の軽減による筋出力の再調整、疼痛の軽減が改善の要因に挙げられるのではないかと考える。疼痛については、1995年にKuhnらは、長胸神経麻痺症例では、上肢帯運動時に代償筋群の過剰な収縮により、二次的に疼痛を起こす場合があると報告している。本症例は上肢帯拳上の際に、努力性の動作を認めたことから、代償筋群の過剰収縮が筋血流量の減少をもたらし、筋の収縮時痛が生じていると考える。また、筋血流量の減少により筋持久力の低下も招いている可能性が推測されるが、今回は客観的評価に乏しかったため、今後検討が必要である。 【まとめ】長胸神経麻痺で二次的な上肢帯機能不全がある症例に対して理学療法を行い、ROMとMMTの改善がみられた。一方で、疼痛や筋持久力低下などのさらなる障害も認めたため、今後は長胸神経麻痺に対してのリハビリテーションによる経過や効果等の検討を積み重ねていく必要がある。
著者
出口 恭代 松田 崇 神野 俊介 坂本 典子 蕨野 博明 真木 徹 廣田 智也
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2009 (Released:2010-04-21)

【はじめに】肩関節周囲炎は、有痛性の可動域制限と夜間痛が特徴である。今回、自己牽引で夜間痛を軽減できた症例を経験したので報告する。 【症例提示】60歳代男性。3年前に利き手の右肩痛を自覚、1年前より夜間痛が発生、運動時痛も悪化し整形外科を受診された。右肩関節周囲炎と診断され関節注射を受けたが軽減せず、半年後理学療法(以下PT)処方された。初期評価時は、夜間痛が毎晩生じ睡眠が中断され、腕をかかえて痛みに耐えている状態であった。部位は肩峰下と上腕骨前面に大別され、肩峰下の疼痛が特に強かった。圧痛は肩関節周囲すべての筋に認めた。自動運動時痛と可動域制限も強く、髪結いは困難、結帯動作は不可能、左腋窩に体温計を挟めなかった。職業のバス洗車も支障をきたし、趣味で続けていた野球も中断していた。 【治療経過】治療は週5回行い、筋スパズムを緩和し軟部組織や靭帯を伸張することで、除痛と可動域拡大を目指した。PT開始後6日目に自己牽引を指導した。方法はカルテンボーンのオートストレッチ法を参考にした。椅子坐位を取り左臀部に体重を移動する。右上肢を体側に垂らして座面の右端を握り、肘関節を伸展したままさらに手指屈筋に力を入れる。手指を支点に手関節背面が下がることで肩峰下が離解される。数日後、夜間痛で目覚めた際に自己牽引を行うとすぐに痛みを消失できると伝えられた。仰臥位のままベッド端を把持し引いても効果があると言われた。PT開始から20日で結帯動作や左肩への触知も可能となり、日常生活での運動時痛も消失した。睡眠中断も減り、夜間痛が生じても自己牽引で消失できる状態が約1月続いた。しかしその後、上腕骨に沿った夜間痛が多く出現し自己牽引でも軽減せず、現在もPT継続している。 【考察】夜間痛の発生原因は不明な点が多いが、肩峰下圧の上昇が関与しているとの報告が散見される。自己牽引で肩峰下滑液包が拡大し、圧を下げることができたと考えられた。この方法では特定部位の除痛効果しかなく根本的な治療とは言えない。しかし苦痛を緩和する自己調整法として有効ではないかと考えられ、今後さらに症例を重ね検討したい。
著者
村瀬 善彰 田中 和彦 村上 典央 平尾 純子 加藤 忠幸 青木 隆明 糸数 万正
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第23回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O045, 2007 (Released:2007-11-02)

【はじめに】 線維筋痛症あるいは線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome:以下、FMS)は、長時間持続する全身の結合織の慢性疼痛やびまん性疼痛、こわばり、疲労感を主訴とし、他覚症状として特徴的な圧痛点を有する疾患である。その他、しびれ感、頭痛などの精神神経症状もかなりの頻度でみられる。このような関節リウマチ様の全身症状を呈するため多くの患者がリウマチ専門医を受診するが、器質的障害の存在を裏付ける明確な臨床所見を認めず、多彩な不定愁訴を呈するため、別名「心因性リウマチ」ともいわれている。FMSは日本ではなじみの薄い疾患であるが、欧米では比較的頻度の高い疾患であり、一般人口の2%にみられるとの報告もある。40~50歳前後の壮年期~更年期の女性に多く(約85~90%は女性)認められ、原因の詳細不明な疾患であるため効果的な治療法に乏しい。そのため、薬物療法以外にも様々な治療が試みられているのが現状である。 今回われわれは、このような疾患に対して理学療法を行い、痛みとQOLの評価を用いて理学療法アプローチの必要性について検討したので、文献的考察をふまえ報告する。 【方法】 当院整形外科外来患者のうちリウマチ専門医により、FMSと診断され経時的評価が可能であった女性7例(平均年齢49.4歳)を対象とし、身体ストレス緩和のためのリラクゼーションを目的とした環境作りの提案や生活指導及び拘縮予防や除痛を目的とした運動療法を行った。FMSは他覚的所見として全身の各部位に18ヶ所の圧痛点が存在するのが大きな特徴であるため、その圧痛点の変化とVAS(Visual Analogue Scale)を用いた痛みの評価を行った。QOL評価にはMedical Outcome Study Short-Form8Item Health Survey(以下、SF-8)を評価ツールとして使用し、理学療法施行前後及びその後の経過観察において各々評価を行った。 【結果】 全例において多彩な不定愁訴に加え、両側性筋痛症状が認められ、疼痛の評価から何らかの改善が得られたのは7例中6例であった。また、SF-8においては国民標準値を下回っている症例を認めたが、評価カテゴリーによって改善傾向を示す結果であった。 【考察】 今回の結果から、理学療法による一定の傾向を示すことは困難であったが、環境改善についての生活指導や運動療法の介入によって、身体及び精神環境の面において何らかの改善が得られることが示唆された。FMSは日本以外の先進国の常識であり、症状が多彩であるがゆえに必然的に、原因不明、経過観察という説明のもと、診断、治療を受けられずに医療機関を転々としながら長い経過をたどっていることが予測されることからも、今後さらなる調査を継続して行い、理学療法の立場から長期的に検討していくことが必要と思われた。
著者
植木 努 曽田 直樹 山田 勝也 河合 克尚 藤橋 雄一郎
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2010 (Released:2010-11-02)

【目的】 これまでに体幹筋の機能に関して多くの報告がされている。腹部表在筋は体幹運動におけるトルクの発揮に関与し、深部筋は腹圧を高め脊柱の安定性に関与しているといわれている。しかし、深部筋の機能に関してはまだ不明な点が多い。そこで本研究の目的は腹筋群の筋厚と体幹筋力及び性差の関係から、腹筋群の特徴を明らかにすることである。 【方法】 対象は健常男性31名、健常女性26名の計57名とした。筋力はバイオデックス及びマイオレットを使用し、各速度30、60°/sでの体幹屈曲最大筋力を測定した。筋厚は超音波画像診断装置を用いて、背臥位にて臍両側の腹直筋と前腋窩線上における腸骨稜近位の外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋を測定し、画像解析はImageJを用いて行った。統計学的分析は、筋力と筋厚の関連性にはPearsonの相関係数、男女間の比較は筋厚及び筋力を対応のないt検定を用いて行った。また被検者には本研究の目的を十分に説明し、参加の同意を得て実施した。 【結果】 体幹屈曲筋力(kg/m)の平均は男性14.80±3.39、女性9.20±2.13、全体11.73±4.64、筋厚(cm)の平均は腹直筋男性1.46±0.30、女性1.10±0.18、全体1.30±0.32、外腹斜筋男性1.00±0.33、女性0.84±0.26、全体0.93±0.31、内腹斜筋男性1.29±0.38、女性1.01±0.30、全体1.16±0.37、腹横筋男性0.66±0.22、女性0.58±0.19、全体0.63±0.20であった。筋力と各筋の筋厚の相関は、腹直筋(r=0.48)、内腹斜筋(r=0.30)、外腹斜筋(r=0.45)は有意な正の相関を示し(p<0.05)、腹横筋は有意な相関は示さなかった。また男女間での比較では、筋力、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋においては、男性が女性に対し有意に高い値を示したが(p<0.05)、腹横筋に有意差は見られなかった。 【考察】 本研究の結果より腹横筋の筋厚は筋力や性差に影響を受けないことが示唆された。その理由として腹横筋は腹圧を高めることで腰椎の安定性に関与し、体幹屈曲作用は少なく表在筋の運動の補助的な役割であるため、筋力に反映されにくいのではないかと考えられる。
著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 服部 潤 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群は、坐骨神経が梨状筋下孔を通過する際に梨状筋により絞扼を受け、殿部痛と下腿への疼痛・痺れを出現させる。しかし、臨床上よく観察すると、同時に外側大腿皮神経(以下、LFCN)領域である鼠径部外側から大腿後外側に疼痛・痺れを認める症例に遭遇する。 今回、梨状筋症候群にLFCN障害を合併する割合と、その合併機序について考察を加えたので報告する。 尚、症例には、本研究の説明を十分に行い、承諾を得た上で実施した。【対象及び方法】 2012年1月から6月までに当院を受診、梨状筋症候群と診断された30例30肢(男性:9例、女性:21例、平均年齢54.0±20.3歳、左:13肢、右:17肢)である。当院における梨状筋症候群の診断は、①梨状筋の圧痛と下肢への放散痛を認める事、②各種梨状筋症候群の整形外科テストが陽性である事、③長母趾伸筋、長母趾屈筋の筋力低下を認める事、④画像上、明らかな脊髄内病変を認めない事の全4項目を満たしたものであり、これを単独型とした。 さらに、⑤疼痛・痺れがLFCN領域まで及んでいる事、⑥LFCNが走行する鼠径部でチネル徴候を認める事、⑦膝関節30°屈曲位での股関節伸展・内転・外旋(LFCN伸張テスト)でLFCN領域に疼痛・痺れを認める事の全7項目を満たしたものを梨状筋症候群とLFCN障害の合併型とした。【結果】 単独型は、22例22肢(男性:8例、女性:14例、平均年齢:49.5±21.3歳、左:7肢、右:15肢)であり、73.3%であった。 合併型は、8例8肢(男性:1例、女性:7例、平均年齢:60.8±15.1歳、左:6肢、右:2肢)であり、26.7%であった。【考察】 梨状筋症候群の特異的所見は、殿部痛と坐骨神経領域における疼痛・痺れである。しかし、臨床ではLFCN領域にも症状を認めるケースは少なくない。本研究の結果では、梨状筋症候群に合併するLFCN障害は26.7%であった。 LFCNは鼠径部の筋裂口内の腸骨筋表層に位置し、骨盤内から骨盤外へ出る境界部では非常に狭いスペースを鋭角に曲がっているため、機械的に絞扼や摩擦されやすい環境下にある。さらに、同部のLFCNは、鼠径靭帯と共に、腸骨筋や縫工筋に被覆されているため、これらの筋に攣縮や短縮に伴う筋内圧が上昇した場合、LFCNの絞扼はより顕著になる。LFCNの走行は上前腸骨棘の内側から表層に出て尾側かつ外側へ向かい、大腿遠位から後外側まで枝を伸ばしている。そのため、股関節の伸展・内転・外旋で伸張される。また、梨状筋は、その解剖学的走行上、屈曲・内転・内旋で伸張され、攣縮が生じている場合、坐骨神経を絞扼する。つまり、梨状筋とLFCNは股関節の内転運動にて伸張されるといった共通の特徴を有している。これらの解剖学的理由から、梨状筋に攣縮が生じ伸張ストレスが加えられる事により坐骨神経を絞扼すると同時にLFCNも伸張されやすいと考えられる。 以上より、梨状筋症候群にはLFCN領域の疼痛または痺れも出現しやすく、臨床では評価しておく必要がある。 また、今後の課題として、どの筋がLFCNを絞扼させやすいのかを鑑別し、治療へつなげる事が重要であると考えられる。
著者
吉村 孝之 種田 智成 西沢 喬 尾崎 康二 山田 勝也 池戸 康代 植木 努 曽田 直樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.63, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 下腿の筋挫傷の疫学的調査では、腓腹筋内側頭(以下、MG)の損傷が多いと報告されている。下腿三頭筋の研究は腓腹筋とヒラメ筋を比較したものが多く、MGと腓腹筋外側頭(以下、LG)を比較した報告はあまり見られないため、MG筋挫傷の原因は明らかになっていない。我々は、形態学的特性として、超音波画像診断装置を用いて筋厚を調べた。機能的特性として、足関節底屈等尺性収縮時の筋活動を調べた。2つの実験からMG筋挫傷の原因を考察したので、報告する。【対象】 下肢に整形疾患のない男性6名6肢(平均年齢27.5±4.5歳、平均身長168.8±4.1㎝、平均体重66.0±11.3㎏)の右下腿とした。なお、対象者には研究概要の説明を文書及び口頭にて行い、実験参加への同意を得た。実験の実施に際し、平野総合病院倫理委員会の承認を受けた。【方法】 1)筋厚の評価 膝関節裂隙から踵骨隆起のアキレス腱付着部までを8等分し、近位部から、1/9, 2/9, …、9/9と表記する。超音波画像診断装置(東芝メディカルシステム社製famio8)を用い、安静時の短軸像を撮像し、筋厚を測定した。統計処理は、MGとLGの筋厚に対して、対応のないt検定を用い、検討した。2)足関節等尺性底屈運動時のMG及びLGの筋電図測定 予備実験として、腹臥位膝関節伸展位、足関節中間位にて、足関節等尺性底屈運動の最大収縮時のMG及びLGの筋活動量をNoraxon社製筋電図シリーズTelemyoG2を用いて測定し、筋力をアニマ株式会社製ミュータスF-1を用いて測定した。 足関節等尺性底屈運動の収縮強度は、最大筋力の10, 20, …、70%とし、MG及びLGの筋活動量を測定した。統計処理は、MG及びLGの正規化された筋活動量を収縮強度に対して一元配置分散分析を用い、検討した。 1)2)ともに、統計解析にはSPSS16.0を用い、有意水準を5%とした。【結果】 1)腓腹筋近位1/9~6/9までは、MGがLGよりも筋厚が有意に厚かった。それ以降遠位では、筋厚に有意差は認められなかった。2)足関節等尺性底屈運動時のMG、LGともに収縮強度と比例して、筋活動が高まり、かつ収縮強度10%を基準として、50%以上の収縮強度で筋活動に有意な差が認められた。【考察】 腓腹筋近位部では、MGがLGよりも筋厚が有意に厚く、K. AlbrachtaらのMRIを用いた研究を支持する結果となった。FTAの正常値が174°であることより、荷重は膝関節外反ストレスとなりやすいため、膝関節内反作用を持つMGがより発達しやすいのではないかと考えられる。MG、LGどちらも、50%以上の収縮強度で筋活動に有意に高まった。本研究では、MG、LGの筋活動に著明な違いは認められなかったため、どちらも、50%以上の収縮強度にて筋損傷のリスクが高まると考えられる。筋厚は筋の生理的断面積に比例することから、筋力の指標と考えられるため、MGはLGに比べ、強い筋力を発揮しやすいと考えられる。そのため、MGの筋挫傷のリスクが高くなると推察される。【まとめ】 ・腓腹筋近位部では、MGはLGより有意に筋厚が厚かった。・荷重下膝関節外反ストレスに拮抗するために膝関節内反作用を持つMGが発達しやすいと考えられる。・MG、LGともに収縮強度50%以上で、筋挫傷のリスクが高まると考えられる。
著者
服部 潤 赤羽根 良和 永田 敏貢 齊藤 正佳 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 梨状筋症候群とは、坐骨神経をはじめとする末梢神経が骨盤出口部で梨状筋により絞扼や圧迫などの侵害刺激を受けることで、疼痛や痺れが惹起される病態である。また、障害される神経は、教科書的には坐骨神経とされているが、実際の臨床では後大腿皮神経や下殿神経の症状も呈することが多い。そのため、臨床症状が多様化ことも少なくない。今回、末梢神経障害を臨床症状から分類し、その割合について検討を行ったので報告する。【対象】 対象は、2012年1月から6月までに梨状筋症候群と診断された25例(男性8例、女性17例、右13肢、左11肢、左右1肢)である。平均年齢は54.3±19.7歳であり、発症から来院までの期間は平均52.7±66.0日であった。【方法】 末梢神経障害の識別方法について述べる。後大腿皮神経(第1-3仙骨神経)は、感覚枝のみを有する。そのため、臀部下部から大腿後面における神経領域内に疼痛及び感覚障害を認めた場合とした。総腓骨神経(第4腰神経-第2仙骨神経)と脛骨神経(第4腰神経-第3仙骨神経)は感覚枝と運動枝を有する。そのため、前者は、下腿外側から足背における疼痛及び感覚障害と長母趾伸筋の筋力低下を認めた場合とし、後者は、下腿後面から足底における疼痛および感覚障害と長母趾屈筋の筋力低下を認めた場合とした。上殿神経(第4腰神経-第1仙骨神経)と下殿神経(第5腰神経-第2仙骨神経)は運動枝のみを有する。前者は、中殿筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とし、後者は、大臀筋の筋力低下や萎縮を認めた場合とした。 また、それぞれを単独例と合併例に分類した。【結果】 神経別に分類すると、総腓骨神経障害は22/25例(88.0%)、後大腿皮神経障害は21/25例(84.0%)と多く認められ、下殿神経障害は3/25例(12.0%)、上殿神経障害は2/25例(8.0%)となった。脛骨神経障害の症例は、0/25例(0%)であり、今回の検討では認めなかった。 症状別に分類すると、後大腿皮神経+総腓骨神経16/25例(64.0%)、後大腿皮神経+下殿神経1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+下殿神経群1/25例(4.0%)、後大腿皮神経+総腓骨神経+上殿神経+下殿神経群が1/25例(4.0%)であった。単独例は、総腓骨神経3/25例(12.0%)、後大腿皮神経2/25例(8.0%)であった。【考察】 梨状筋症候群は、坐骨神経の障害とされているが、今回の調査では主に総腓骨神経と後大腿皮神経による障害を多く認める結果となった。また、少数ではあるが下殿神経と上殿神経障害も認められた。つまり、梨状筋症候群の病態把握や治療には、坐骨神経のみならず、他の末梢神経障害の合併も考慮した複合的な病態把握が重要と考えられる。
著者
渡邊 祥子 菊池 和也 内田 成男 宮下 正好
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.26, pp.122, 2010

【はじめに】GPA(Grade Point Average)制度を導入している日本の大学では,GPAが2.0未満であると指導強化や留年,退学勧告がなされる.本校理学療法学科においてもGPAが,進級や卒業判定の参考資料になるのではと考え試験的に導入している.今回2年終了時の通算GPAと,臨床実習や3年次定期試験との関連性について若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象】本校の平成21年度卒業生(3期生)49名中,在籍期間3年で卒業し紙面にて本調査への理解と同意を得られた31名(男性21名,女性10名)を対象とした.卒業時の平均年齢は23.4±4.7歳であった.<BR>【方法】3年次の臨床実習にて複数回の実習地訪問が必要だった学生及び最終評定(本校算定基準に基づき学校側で評定)がCであった学生(以下実習群)と,そうでなかった学生(以下実習可群).卒業判定の基準となる最終学年次定期試験が1科目でも6割を満たさなかった学生(以下試験群)と,そうでなかった学生(以下試験可群)に分けた.GPAは成績評定のAを4,Bを3,Cを2,再試験にて合格したCを1として算出した.また2年次までの成績を基礎分野(心理学など),専門基礎分野(解剖学など),専門分野講義(評価学など),専門分野実習(評価学実習など)の4分野に分けて算出した.3年次の状況,科目分野を二次元配置分散分析と多重比較を用いて、有意水準5%にて検討した.<BR>【結果】3年次定期試験は状況の主効果,科目分野の主効果ともに有意な差が認められたが、交互作用は認められなかった.臨床実習では2つの主効果および交互作用すべて有意差が認められなかった.2年通算GPAは試験群2.52±0.26,試験可群3.09±0.43,実習群2.63±0.24,実習可群3.04±0.47であった.<BR>【考察】3年次定期試験はGPAが関係しているが,臨床実習はGPAだけではなく他の要因も関係すると思われる.しかしながら3年次問題なく遂行できるためには,それまでのGPA3.0以上が目安になるのではないかと考える.今後は対象者を増やし,GPAと臨床実習,最終試験との相関性を調査したい.
著者
山近 友里恵 山田 深 山田 卓也 中島 佐和子 寺林 大史 大田 哲生 木村 彰男
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2009 (Released:2010-04-21)

【目的】床面に登坂角度をつけた傾斜トレッドミル歩行における下肢関節運動および筋活動の特性を明らかにし,臨床での有用性について検討する.〈BR〉【方法】対象は本研究の内容について同意を得た健常成人3名(24.0±0.0歳).平地(Flat Floor:FF),傾斜なしトレッドミル(Flat Treadmill:FT),坂道(傾斜角12%)(Up-Slope:US),傾斜トレッドミル(同12%)(Tilt Treadmill:TT)の順に3分間の休憩を挟んで歩行を行った.FF,US歩行速度は主観的快適速度とし,FT,TT歩行はそれぞれFF,USと同一に設定した.歩行中の下肢筋電図および股関節角度変化を記録するために左側中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋筋腹上に表面電極を,股関節に角度計を貼付し,テレメータを介して各波形を記録した(サンプリング周波数2 kHz).また,圧センサーを足底に設置して歩行周期を同定した.解析はオフラインで行い,筋電波形を全波整流した後,50歩行周期分を加算平均し,各条件におけるパターンの相違を検証した.〈BR〉【結果】大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋の表面筋電波形パターンは個人差が大きく一定の傾向は見られなかったが,中殿筋においては立脚初期から中期にかけて筋活動の増大が共通して確認された.特にTTおよびUS歩行では二峰性のパターンを示し,中殿筋の筋活動は傾斜のない歩行と比べ相対的に増大していた.また,TT歩行時の筋活動はUS歩行と比べ全般的に高電位であった.股関節角度はTTおよびUS歩行において,遊脚後期から立脚初期にかけて屈曲方向へ増大する傾向が認められた.〈BR〉【考察】斜面歩行は平地歩行と比べ,股関節外転筋群への運動負荷を効率的にかけ得ることを示した.さらに,トレッドミルを用いることで,筋活動をより増大させることが可能であると示唆された.
著者
原田 佳澄 木村 圭佑 岩田 研二 河村 樹里 古田 大貴 坂本 己津恵(MD) 松本 隆史(MD) 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.85, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 回復期リハ病棟で歩行を含む日常生活活動が改善し退院に至るも、退院後の不活動により再入院という例が存在する。しかし、回復期リハ病棟退院後の活動量を定量的に測定した研究報告は少なく、具体的な予防策がない。そこで、活動量の計測方法として使用される歩数計に注目した。本研究の目的は回復期リハ病棟退院前後における歩数の変化を明らかにし、入院時、退院後の運動指導に役立てるものである。今回は活動量計を用いて入院時から退院後3か月間の活動量の変化について経過を追った一症例を報告する。【方法】 症例は70歳代女性で当院回復期リハ病棟の入院患者である。左被殻出血を発症、右片麻痺を呈し、発症30日後当院回復期リハ病棟に転院し、発症115日後自宅退院となり、週2回の頻度で当院通所リハ短時間利用を開始した。評価より、当院入院時SIAS-m3-4-4-4-3、退院時SIAS-m5-4-5-5-4であった。移動手段は、入院時病棟内歩行器歩行自立、入院2週間後院内歩行器歩行、病棟内T字杖歩行自立、入院1か月後院内T字杖歩行自立、退院後屋内は独歩自立、屋外はT字杖歩行自立となった。また、退院後の目標歩数を退院直前の平均歩数5,000歩とした。計測は、パナソニック社製アクティマーカーを非麻痺側腰部に装着して行った。計測期間は、入院時、入院1か月後、入院2か月後(退院直前)、退院1か月後、退院2か月後、退院3か月後に各4日間、入院時は9時~17時、退院後は9時~就寝まで計測を行った。今回は各期間4日間の平均歩数のみとし、データ解析は、アクティマーカー解析ソフトを用いて行った。 本研究は当院倫理委員会の承認を得て行い、対象者には口頭にて十分な説明を実施し、書面にて同意を得た。【結果】 9時~17時までの平均歩数は、入院時2,609±521歩、入院1か月後5,168±317歩、入院2か月月後(退院直前)4,636±1,034歩、退院1か月後3,135±435歩、退院2か月後2,684±853歩、退院3か月後3,360±1,076歩であった。退院後の17時~就寝までの平均歩数は、退院1か月後595.5±8歩、退院2か月後1,475±16歩、退院3か月後2,392±27歩であった。【考察】 先行研究では、回復期リハ病棟入院中の平均歩数は、2,483歩(9時~17時)と報告している。今回、入院中の平均歩数は先行研究を上回っていた。また、退院1か月後の歩数が減少した理由は、冬季であったため屋外での活動が減少し、屋内中心の活動になったと推察された。そのため、気候や天候に合わせて対応可能な指導が必要になる。また入院時より定期的に歩数計測を行うことで、運動に対する動機付けができモチベーション維持につながったと推察された。退院後、17時以降に歩数の増加がみられた理由は、入院生活は非日常的な生活であり、退院後の活動時間と相違があったと推察された。そのため、退院後の1日の生活リズムに合わせて、運動指導を行っていくことが必要である。【まとめ】 活動量を意識させる上で、入院中より歩数計を使用し、目標歩数の設定、及び病棟と共通の活動量指標としての活用が重要である。今後は、対象者を増やし、退院後の活動量を維持するために必要な退院時の活動量、また退院後の介護保険サービスの種類、頻度を明らかにし、リハビリ介入の頻度調整に繋げていく。
著者
小長野 豊 江西 一成 井戸 尚則
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.26, pp.85, 2010

【はじめに】今回,受傷後6年間経過し積極性の乏しい頚髄損傷者の理学療法を経験し,いくつかの知見を得たので報告する.【症例紹介】31歳男性,頚髄損傷・両大転子部褥瘡の診断名で,家族関係は疎遠であった.入院までの経過は,平成15年6月4日受傷し,C4~6前方固定術後,リハビリテーション(以下,リハビリ)を受けたがADL全介助であった.平成18年1月より母親を介護者として自宅生活を送ったが,平成19年母親死亡により施設入所となる.しかし,問題行動で強制退所となり,同年11月民間病院へ入院した.その後,褥瘡発生したが,治癒を認めず平成21年7月23日当院へ転院した.【初期評価】第6頚髄損傷(AIS:A).上肢の残存筋筋力は肘伸展の1以外3~4レベル,ROMは股・膝関節に20~30度の屈曲拘縮を認めた.両大転子部の褥創は右7×6cm左5×4cm,左右ともに真皮まで達していた.ADLは食事と車いす移動以外全介助であった.【経過】理学療法は,褥瘡治療(ラップ療法)を優先しつつ,循環改善のため起立台による立位訓練,関節可動域,筋力増強訓練を行った.しかし,当初は本症例・PTともに,明確な目標と理学療法内容に確信を持てずに積極的なリハビリを行えなかった.その後、旧知の頚損患者との接触,頸損者の動作映像の参照,独り暮らし実現へのスタッフの積極的関与などから,リハビリに前向きとなった.その結果,リハビリでは約2ヶ月目にROM,筋力,耐久性の向上を認め,いざり動作,座位バランス訓練が可能となった.この頃より,本症例・PTともに移乗動作獲得を明確に意識したリハビリを行い,約4カ月目にいざり動作,約6カ月目に移乗動作が可能となった.約8カ月目,医療相談員との協働によって介護付き賃貸住宅へ退院した.【まとめ】本症例では,基本的理学療法に加え,当事者間共通の目標設定を持てたことが功を奏したと考えられた.
著者
相本 啓太 上田 誠 太田 進
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.79, 2009 (Released:2010-04-21)

【背景・目的】膝立ちは立位と比べ身体重心が低く、膝・足関節の影響を除外し、選択的に股関節伸展を促通するための有益な肢位とされ、また膝立ちや膝歩きは骨盤や股関節周囲筋のリハビリテーションとして臨床で使用されている。膝立ち位についての研究では、脊柱起立筋、大殿筋など骨盤の周囲筋で筋活動量が立位より有意に高いことが報告はされているものの膝歩きについての筋活動や運動学的解析を用いた報告は少ない。適切な運動処方のため、膝歩きの運動特性を明確にすることが必要であり、そのために膝歩き動作の運動特性を解析することを本研究の目的とした。 【方法】対象の健常者24名(22±2歳)に3次元動作解析装置用マーカーを貼付し、歩行、膝歩きを3回ずつ測定した。各動作の立脚期、遊脚期における骨盤の最大可動域とその変化量、左右への重心移動量を解析し、歩行時と膝歩き時の比較を行った。また、表面電極を体幹・骨盤周囲の筋7つに貼付し、各筋での立脚期、遊脚期での平均に対して%MVC (%Maximum Voluntary Contraction:最大随意収縮に対する割合)を求め、歩行と膝歩きの比較を行った。統計処理には対応のあるt検定を使用した。 【結果】膝歩きの筋活動量は立脚期、遊脚期において脊柱起立筋、中殿筋などで歩行と比較し、有意に高値であった(p<0.01)。各関節の可動域の変化量においても骨盤で有意に高値を示した(p<0.01)。左右への重心移動は膝歩きの方が有意に高値であった(p<0.01)。 【考察】膝歩きは足関節機能が除外されるため、側方への重心移動増大によるバランスの保持や前方への推進力を生み出すための体幹や骨盤の周囲筋による代償が必要であり、骨盤周囲の関節・筋が歩行と比べ有意に可動・活動していると考えられた。 【まとめ】膝歩きは骨盤の可動域や骨盤周囲筋の活動性を高めることを目的としたリハビリテーションとして有用と考えられた。
著者
鈴木 達也 岩堀 裕介 水谷 仁一 竹中 裕人 大家 紫 清水 俊介 矢澤 浩成 花村 浩克 筒井 求 伊藤 岳史
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.48, 2011

【目的】投球動作による肩・肘障害の原因として,オーバーユース,コンディショニングの不良,不良な投球フォームなどがあげられる.我々は第7回肩の運動機能研究会において,wind-up phase(以下WU)での体幹後方傾斜と肘下がりとの関係を調査し,WUでの体幹後方傾斜とearly-cocking phase(以下EC)での肘下がりとの関係は示唆されたが,late-cocking phase(以下LC)での肘下がりとの関係は見られなかったことを報告した.今回,WUで体幹後方傾斜を認める選手に対し,その場で投球フォーム指導を行い体幹後方傾斜を修正し,投球フォームが即時的に変化するのかどうかを調査したので報告する.〈BR〉【対象】対象は,メディカルチェックを行い本研究に賛同し同意を得た肩・肘に愁訴のない中学生野球選手27名(平均年齢13.30±0.61歳)の中から,明らかにWUで体幹後方傾斜を認めた選手(以下WU体幹後方傾斜群)11名である.なお,11名は全員右投げである.〈BR〉【方法】方法は,CASIO社製デジタルカメラEX-FH25を用い,前方,側方,後方の3方向からハイスピードモードの動画で撮影した.frame rateは240fpsとし,18m先の相手に対し,セットポジションから全力投球で3球投げさせ(撮影1),デジタルカメラの映像から複数人で評価し3球とも明らかにWUで後方傾斜が確認された選手をWU体幹後方傾斜群として抽出した.次に,WU体幹後方傾斜群に対し言語教示と実技によりWUの後方傾斜を修正した状態で撮影1と同様の撮影方法で投球フォームを撮影した(撮影2).撮影と同時にBushnell社製スピードガンスピードスターVで球速も測定し,もっとも速い1球を分析対象とした.投球フォームの分析は撮影1,撮影2とも動画を静止画にして行った.投球フォームの評価項目は(1)ECでの投球側股関節屈曲不足,(2)FPでの体幹後方傾斜,(3)FPでの投球側肘下がり,(4)LCでの投球側肘下がりの有無である.それぞれの基準は(1)右手が最も下がった時点で膝関節と股関節が同程度に屈曲していなければ投球側股関節屈曲不足あり,(2)FPで地面からの垂線に対し,体幹が後方に傾斜していれば体幹後方傾斜あり,(3)FPで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりあり,(4)LCで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりありとした.撮影1と撮影2の静止画を比較し,(1)から(4)の項目が変化したのかどうかを,i)変化なし,ii)改善,iii)改悪の3項目に分類し,投球フォームの変化を確認した.〈BR〉【結果】WU体幹後方傾斜群の投球フォームの特徴として(1)EC股関節屈曲不足ありが11名中7名(63.6%),なしが4名(36.4%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが11名中4名(36.4%),なしが7名(63.6%),(3)FP肘下がりありが11名中8名(72.7%),なしが3名(27.3%)(4)LC肘下がりありが11名中6名(54.5%),なしが5名(45.5%),であった.撮影1の投球フォームと撮影2の投球フォームを比較したところ,(1)EC股関節屈曲不足ありが7名中,変化なし4名(57.1%),改善3名(42.9%),改悪0名(0.0%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが4名中,変化なし0名(0.0%),改善4名(100.0%),改悪0名(0.0%),(3)FP肘下がりありが8名中,変化なし6名(75.0%),改善2名(25.0%),改悪0名(0.0%),(4)LC肘下がりありが6名中,変化なし5名(83.3%),改善1名(16.7%),改悪0名(0.0%)であった.〈BR〉【考察】今回の結果から,WUの体幹後方傾斜を即時的に修正することにより,FPでの体幹後方傾斜は100%改善できた.しかし,FPでの肘下がりは25%,LCでの肘下がりは16.7%しか改善できなかった.FP,LCでの肘下がりに関しては別のアプローチが必要であると考えられた.
著者
種田 智成 小野 晶代
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.26, pp.75, 2010

【はじめに】<BR>平成21年12月22日~29日の間,第40回記念明治神宮野球大会海外派遣事業として,中華民国遠征へ理学療法士として帯同する経験を得た.帯同メンバーは役員3名,指導者3名,責任教師1名,随行員3名,理学療法士1名であり,選手は5校からの選抜メンバー18名である.今回の帯同により得られた経験,活動内容を報告する. <BR>【日程】<BR>遠征の日程は7泊8日で,4試合を行った.1日目は明治神宮での結団式を終えた後,中華民国へと向かった.2日目は練習,3日目に2試合を行った.4日目は移動日,5・6日目は試合,8日目に帰国した.<BR>【活動内容】<BR>PTとしての日常的な役割は,毎朝の体調チェック,食事内容のバランス指導,練習・試合前のウォーミングアップ,投手中心のアイシング,クールダウン,夕食後には希望者に対しコンディショニングを行った.また,怪我につながるようなプレーがあった際には,積極的に声かけを行い,選手の状態把握に努めた.<BR>遠征期間中に発生した外傷に対し処置を行ったり,現地病院への受診を勧めることもあったが,重症なものはなかった.また、食事や気候変動による体調不良は認められなかった.<BR>今回の遠征に際し特に気をつけたことは,5校からの選抜メンバーであることから,遠征中は仲間であっても,帰国後はライバル同士ということもあり,個々の体調についての情報や,負傷に関する発言については特に注意した.<BR>また,遠征前の練習より参加していたが,顔を合わせる機会が限られており,短期間でどのようにコミュニケーションを取るか模索していた.その対応としては,積極的に声をかけること,テーピングやストレッチ等の処置場面においてアドバイスを行うことにより,理学療法士の存在を認識させることを実践した.<BR>【まとめ】<BR>理学療法士の役割としては,選手の障害予防と負傷後の処置,健康管理を中心に行った.<BR>選抜チームに帯同するということで,選手・監督・コーチとのコミュニケーションの重要さを実感した.
著者
合田 明生 佐々木 嘉光 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>近年、運動が認知機能を改善、または低下を予防する効果が報告されている。運動による認知機能への効果を媒介する因子として、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor;BDNF)が注目されている。BDNFは、中枢神経系の神経活動によって神経細胞から刺激依存性に分泌される。そこで本研究では、BDNFと交感神経活動の関係に着目し、運動ストレスによる交感神経活動が、神経活動亢進を介して中枢神経系におけるBDNF分泌を増加させる要因であると仮説を立てた。よって本研究の目的は、健常成人男性を対象に、運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血流中のBDNFを増加させるという仮説を検証することである。その結果から、運動によるBDNF分泌メカニズムの解明の一助とすることを最終目標とする。<br><b>【方法】 </b>健常成人男性10名を対象に、30分間の中強度有酸素運動(最高酸素摂取量の60%)を実施した。運動の前後で採血を実施し、末梢血液中のBDNF、ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。また運動中の中枢神経活動指標として、前頭前野領域の脳血流量を用いた。以上の結果から、運動前後のBDNF変化量、交感神経活動の変化(NA)、大脳皮質神経活動の変化(脳血流量)の関連性を検討した。各指標の正規性の検定にはShapiro-wilk検定を用いた。血液検体の運動前後の比較には、対応のあるT検定を用いた。各指標の相関の分析には、Pearsonの相関係数を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。<br><b>【結果】 </b>中強度の有酸素運動介入によって、10人中5名では運動後に血清BDNFが増加したが、運動後のBDNFの値はバラつきが大きく、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(BDNF-NA r=.38, p=.27)、中枢神経活動指標と交感神経指標の変化の間(脳血流量-NA r=-.25, p=.49)、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間(BDNF-脳血流量 r=-.16, p=.66)には有意な相関は認められなかった。<br><b>【考察】 </b>本研究では、健常成人男性を対象に、30分間の中強度運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血液中のBDNFを増加させるという仮説の検証を行った。その結果、中強度の運動介入によって、10人中5名は運動後の血清BDNF増加を示したが、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった。この要因として、刺激依存性のBDNF分泌を障害するSNP保有が考えられた。また、BDNF変化量と交感神経指標の変化の間、交感神経指標と中枢神経活動指標の変化の間、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間には、有意な相関は認められなかった。この要因として、交感神経活動が急性BDNF増加に直接的には関与しないことが考えられる。<br><b>【まとめ】 </b>健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は、末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず、運動によるBDNF変化には、交感神経活動や中枢神経活動は関連しないことが示唆された。