著者
大須賀 崇裕 宮西 浩嗣 伊藤 亮 田中 信悟 久保 智洋 濱口 孝太 大沼 啓之 村瀬 和幸 高田 弘一 山本 彬広 眞部 建郎 久原 真 加藤 淳二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.559-566, 2023-11-01 (Released:2023-11-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

68歳,男性.右背部痛を主訴に近医受診,肝腫瘤を指摘され当院紹介.肝細胞癌,多発リンパ節・骨転移と診断し,アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(ATZ+BV)を開始した.投与開始14日目に辻褄の合わない言動と傾眠,16日目にJCS10の意識障害を認めた.血中アンモニア値,頭部MRIに異常なく,髄液検査では僅かな細胞数上昇と蛋白細胞解離を認めた.自己免疫性脳炎を疑い,同日よりステロイドパルス療法を開始した.意識障害は著明に改善し,内服ステロイドに移行後,38日目に後遺症なく自宅退院となった.脳炎の再燃はなく,ATZ+BV開始60日目に2次治療としてレンバチニブを導入した.肝細胞癌に対するATZ+BV後の自己免疫性脳炎は,自験例を含め4例のみ報告されており,初発症状や意識障害出現時期がほぼ一致していた.早期の診断とステロイドパルス療法施行により2次治療へ移行できた症例であると考えられた.