著者
久保田 泰考
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-216, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
20

近年の複数のメタアナリシス・レビューによれば,成人の双極性障害患者における特性的(trait-like)な認知障害として,注意・処理速度,エピソード記憶,遂行機能が強調されている。これらの認知障害は前頭葉-線条体,および中側頭葉-系の神経システムの機能不全を示唆すると考えられ,寛解期においても患者の社会的機能に大きな影響を及ぼしている。児童の双極性障害における認知障害についての知見は最近急速に増加しており,成人例と共通した特性的な認知障害の報告が相次いでいる。児童の双極性障害の認知研究は,診断概念におけるコンセンサスの不足,高い AD/HD の合併率,多剤併用治療の認知に対する影響といった混乱要因と不可分であり,結果の解釈には注意を要するが,これまで得られた知見は児童の双極性障害と成人例が連続した臨床実体であり,遺伝的・神経発達的異常を反映しているとの見方を支持すると考えられる。