- 著者
-
久島 周
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.2-5, 2022 (Released:2022-03-25)
- 参考文献数
- 13
DSM‐5の診断基準では,統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は,臨床症状に基づいて異なる精神疾患として区別される。しかし,最近の疫学研究や臨床研究の知見から両疾患には連続性が存在することが指摘されている。ゲノム研究においても,両疾患の発症にかかわる疾患横断的な変異が多数同定されている。なかでも,ゲノムコピー数変異(CNV)(欠失・重複を含む)では,22q11.2欠失,15q11.2‐q13.1重複,3q29欠失をはじめ,低頻度で存在するCNVが統合失調症とASDの両方に関与することが報告されている。CNVデータの詳細な解析からは,両疾患の病態メカニズムの共通性も指摘されている。今後の研究では,統合失調症・ASDに関連するCNVをもつ被験者を対象に,幼少期から成人期まで臨床症状を追跡することで,両疾患の関係性について明らかになるかもしれない。また,CNVに基づくモデルマウスや患者由来iPS細胞を用いた神経生物学的な解析から,両疾患の神経基盤の解明が期待される。