著者
久賀 みず保
出版者
地域漁業学会
雑誌
地域漁業研究 (ISSN:13427857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.21-42, 2011-06-01 (Released:2020-12-04)
参考文献数
12

本研究では,養殖マダイのマス市場である組織型小売業(外食を含む)を対象に,各業態における養殖マダイの用途や鮮度,サイズ,価格水準などについてニーズを把握し,そのニーズを満たす養殖マダイの使用価値とはどのようなものであるかを明らかにした。また養殖マダイの消費は,関東と関西で明確に嗜好性が異なる。そこで本研究では,業態別の分析軸に加え地域別に対象をみることとした。具体的には,全国展開する量販店,関東地方を拠点とする大手回転寿司チェーン,関西地方を拠点とする外食,大手ファミリーレストランを分析対象とし,各社並びに外食への大手納入業者などにて聞き取り調査を行った。分析の結果,組織型小売業で扱われる養殖マダイには,安定性,廉価性,鮮度,簡便性の4つの使用価値が存在することが明らかになった。また今後,組織型小売業から養殖マダイに期待されているのは,「鮮度」の向上と安さを実現するための「簡便化」の追求であることも明らかとなった。すなわち今後,マダイの新たな使用価値は鮮度向上,及び高次加工化など,流通・加工過程において産み出されていくと考えられる。さらに,マダイ養殖の関連業者が現在の状況を打破する積極的対応を取るとすれば,こうしたニーズに応えるべく流通・加工過程における改善,取り組みを展開していくことが必要ではないだろうか。