- 著者
-
荒川 武士
樋口 康平
乗松 詩織
新野 直明
- 出版者
- 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 雑誌
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.99-108, 2022-08-31 (Released:2022-12-31)
- 参考文献数
- 47
【目的】高齢患者を対象に頭部屈曲運動を実施し,嚥下能力に与える影響を検討することを目的とした.【方法】対象は,嚥下障害のない65 歳以上の患者70 名とした.除外基準は,頭部屈曲運動に対するリスクを呈する者,口頭指示が理解できない者とした.入院順に介入群と対照群を交互に割り付ける準ランダム化比較試験を実施した.介入群の介入内容は,背臥位での頭部屈曲反復運動を1 日に30 回×3 セット,2 週間実施した.対照群の課題は通常のリハビリテーションのみとし,嚥下能力,機能への介入はしないとした.主要アウトカム指標を3 回唾液嚥下積算時間とし,副次的アウトカム指標を舌圧,開口力,General oral health assessment index(以下,GOHAI)とした.介入群,対照群のアウトカム指標の介入前後の値の変化を以下のように検討した.正規性が認められた場合は,二要因(時間×群)の反復測定による分散分析および対応のあるt検定(Bonferroni 補正)で検討した.正規性が認められなかった場合は,各群の前後の差をWilcoxon の符号付順位和検定(Bonferroni 補正)にて検討した.有意水準は5% とした.【結果】介入群35 名,対照群35 名となった.各群の基本属性,アウトカム指標はすべての項目において有意な差を認めなかった.3 回唾液嚥下積算時間は介入群にのみ有意な減少を認めた.舌圧は介入群にのみ有意な増加を認めた.開口力は介入群のみ有意な増加を認めた.GOHAI は,両群とも有意な差を認めなかった.【考察】頭部屈曲運動は嚥下能力を向上させる効果的な運動方法であることが示され,嚥下障害を呈する高齢患者へ応用可能な有益な情報になることが示唆された.