著者
乙幡 美佐江
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.52, pp.59-79, 2019-03-01

本研究は、高齢者虐待防止法に基づいたソーシャルワーク支援の実態を精査し、高齢者虐待の予防概念枠組みの項目を確認・修正することで、包括的な高齢者虐待予防支援システムの構築を試みることを目的とした。高齢者虐待の予防概念は根拠が明確ではなかったため、Caplan,G(1964) の予防精神医学の概念を援用し高齢者虐待の予防概念の作成を試み、複合調査法を実施した。1)質的研究として虐待悪化防止の協働プロセスの様相を明らかにするため、13 事例のケース記録を質的内容分析法にて分析した結果、特徴的な6つの取組みがみられた。そして、2)地域包括支援センターにおける取組みについて探索的に量的調査を実施した。両調査の結果から、ソーシャルワーク支援の取組みの独自性として、第二次予防(悪化防止)から第一次予防(未然防止)、第三次予防(再発防止)への一連の循環するプロセスが見られた。これは、支援の既存システムを強化・改変することで高齢者虐待の予防支援システムの構築が可能となることが示唆された。