著者
坂入 竜治
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.52, pp.81-95, 2019-03-01

本研究の目的は、精神保健福祉士を対象とした事例検討会のモデルを構築するために、事例検討会の効果と効果を導く要素(効果的要素)を探索することである。精神保健福祉士11 名を対象に事例検討会の3 側面(効果、過程、構造)についてフォーカス・グループ・インタビューを実施し、質的データ分析を行った。その結果、「効果」として≪クライエント・システムの理解の深化≫・≪専門職としての視点・態度の確認≫・≪疾病や障害に関する知識の習得≫・≪解決策≫・≪自己覚知≫・≪サポート関係の強化≫・≪組織・人材の育成≫・≪ネットワークの構築≫の8 カテゴリーを抽出した。「効果」を導く「過程」の効果的要素として8 カテゴリー、7 サブカテゴリー、「構造」の効果的要素として6 カテゴリー、15 サブカテゴリーを抽出した。これにより、事例検討会の3 側面の関係性が浮かび上がり、効果的な事例検討会のモデルを構築するための知見が得られた。
著者
山口 麻衣
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.52, pp.1-12, 2019-03-01

本研究は、地域包括支援センターにおける介護者支援の困難性に焦点をあてて分析した上で、地域包括支援センターにおける介護者支援の課題を探ることを目的とした。A 県地域包括支援センター職員を対象に集合調査を実施し、事例の自由回答を質的に分析した。分析の結果、介護者支援の困難性は、1)介護者自身に支援が必要な場合の介護者支援の困難性、2)介護者が複数の役割を担う場合の介護者支援の困難性、3)サービス利用拒否の場合の介護者支援の困難性、4)要介護者への対応に苦慮する場合の介護者支援の困難性、5)複合問題・多問題への対応が求められる場合の介護者支援の困難性として把握できた。地域包括支援センターにおいて介護者のおかれた困難な状態をケアラーアセスメントにより包括的に把握し、介護者自身への支援体制を構築することが地域包括支援センターにおける介護者支援の課題といえる。
著者
植松 晃 子 橋本 和 幸 小室 安 宏 Uematsu Akiko Hashimoto Kazuyuki Komuro Yasuhiro
出版者
ルーテル学院大学
雑誌
ルーテル学院研究紀要 : テオロギア・ディアコニア = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary : theologia - Diakonia (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-11, 2014-03-01

本研究では,大学の学生相談室活動をどのように広げていくべきかを検討するために,アメリカの大学生を対象に作成された「専門家による心理的援助を求める態度尺度(Attitude toward seeking professional psychological help: ATSPPH-S)(Fisher &Farina, 1995)」の翻訳版について,信頼性・妥当性を検討した。調査対象者は日本の大学生699 名である。はじめに尺度の構造的な妥当性を検討し,翻訳版は2 因子構造であることが明らかになったが,先行研究とは異なり両因子には負の相関が見られた。因子構造における解釈上の妥当性を検討し,それぞれ「専門的援助の求め」と「自己解決志向」と名付けた。さらに,精神的健康,心理的援助への偏見,学生相談室への関心との相関から構成概念妥当性を検討したところ,一定の妥当性が確認できた。
著者
田島 靖則 Tajima Yasunori
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.51, pp.63-73, 2018-03-01

ジョーゼフ・フレッチャー(Joseph Fletcher)は、キリスト教倫理の規範は愛(隣人愛)にあることを強調した。しかし、彼の主張が愛に導かれてなされたと考える人は多くない。キリスト者の「生の規範」としてイエスが示したのは、愛だけではなかった。「はっきり言っておく。心を入れ替えて子供のようにならなければ、決して天の国に入ることはできない(マタイ18:3)。」というイエスの言葉は、「幼稚性」というもう一つのキリスト教倫理の規範があることを示唆している。世界的な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen, 1805 〜1875)の作品を足がかりとして、「子ども目線」のキリスト教倫理について論じたい。
著者
田島 靖則
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.51, pp.63-73, 2018-03-01

ジョーゼフ・フレッチャー(Joseph Fletcher)は、キリスト教倫理の規範は愛(隣人愛)にあることを強調した。しかし、彼の主張が愛に導かれてなされたと考える人は多くない。キリスト者の「生の規範」としてイエスが示したのは、愛だけではなかった。「はっきり言っておく。心を入れ替えて子供のようにならなければ、決して天の国に入ることはできない(マタイ18:3)。」というイエスの言葉は、「幼稚性」というもう一つのキリスト教倫理の規範があることを示唆している。世界的な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen, 1805 〜1875)の作品を足がかりとして、「子ども目線」のキリスト教倫理について論じたい。
著者
石居 基夫
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1-14, 2018-03-01

本稿は、ルターの教会の理解における宣教論的本質を明らかにするものである。一般に、G. ヴァルネックに見られるように、ルターの教会論には宣教的視点がないかのごとく論じられることがある。しかし、ルターの教会論はそのみ言葉中心性において優れて宣教論的性格を持っている。ルターにとっては、教会はいつでも「宣教(Proclamation)」のために存在する。 この論述では、ルターの教会理解における見える教会と見えない教会という二重性の問題、またその終末論的性格を示し、信仰のない者たちにも、またすでにキリストの教会にある者たちにも、絶えず繰り広げられる神の宣教の働きを教会の脈絡の中に明らかにする。 付論として、ローマ・カトリック教会とともに宗教改革500 年を記念したルーテル教会の宣教的課題を論じた。ルーテル教会が、現代世界の中で果たすべき宣教的責務を、具体的な日本の教会の脈絡の中で論じている。
著者
向谷地 生良
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-8, 2020-03-01

本稿は2019 年11 月30 日にルーテル学院大学チャペルにて開催された学校法人ルーテル学院創立110 周年&三鷹移転50 年 記念講演会を収録したものである。
著者
張 英信
出版者
ルーテル学院大学
雑誌
ルーテル学院研究紀要 : テオロギア・ディアコニア = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary : theologia - Diakonia (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.47, pp.67-88, 2014-03-01

本研究では,韓国の女性家族介護者が感じている肯定的介護認識の構造を明らかにし,「肯定的介護認識仮説モデル」に基づき同居家族療養制度の利用と非利用による相違を分析した。 質的帰納的研究の結果,家族介護者は【要介護者の受け入れ】の環境に取り組み【介護スキルの向上】を図り,【自己価値の向上】になり【他者への貢献可能性】に至るという経験を通して介護肯定感を得ていた。量的研究で開発した16 項目からなる肯定的介護認識尺度は,確証的因子分析によって4 因子構造となった。そして,「肯定的介護認識仮説モデル」の検証のため,嫁のデータに限定し,共分散構造分析モデルを多母集団で同時分析した結果,同居家族療養制度の利用の有無に関わらず,扶養意識が肯定的介護認識に強く関係し,介護が単に負担感のみを与えるものではなく,家族介護者にとって何からの価値を持っているということが確認された。
著者
乙幡 美佐江
出版者
ルーテル学院
雑誌
ルーテル学院研究紀要 = Bulletin of the Japan Lutheran College and Theological Seminary (ISSN:18809855)
巻号頁・発行日
no.52, pp.59-79, 2019-03-01

本研究は、高齢者虐待防止法に基づいたソーシャルワーク支援の実態を精査し、高齢者虐待の予防概念枠組みの項目を確認・修正することで、包括的な高齢者虐待予防支援システムの構築を試みることを目的とした。高齢者虐待の予防概念は根拠が明確ではなかったため、Caplan,G(1964) の予防精神医学の概念を援用し高齢者虐待の予防概念の作成を試み、複合調査法を実施した。1)質的研究として虐待悪化防止の協働プロセスの様相を明らかにするため、13 事例のケース記録を質的内容分析法にて分析した結果、特徴的な6つの取組みがみられた。そして、2)地域包括支援センターにおける取組みについて探索的に量的調査を実施した。両調査の結果から、ソーシャルワーク支援の取組みの独自性として、第二次予防(悪化防止)から第一次予防(未然防止)、第三次予防(再発防止)への一連の循環するプロセスが見られた。これは、支援の既存システムを強化・改変することで高齢者虐待の予防支援システムの構築が可能となることが示唆された。