著者
乾 智行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.282-285, 1989
被引用文献数
1

石油は, 近代文明を支えるエネルギーや化学原料の資源として欠かせないものになっている。数十年前, 国際間の緊張から我が国への石油の供給が途絶えた。そのころ石炭から石油を合成する必死の努力が京大などで行われ, ついに, 安価な鉄を材料にしながら, 高価なコバルト系に劣らないものが完成して, 生産にも使われた。しかしその技術は, 到底, 大量消費を支えるまでには至らなかった。十数年前, 石油危機が訪れた際, 従来とは原理も手段も異なる画期的なガソリン合成触媒がアメリカから登場した。それは, 特別な微細構造をもつゼオライト系触媒で, 昔の触媒に比べると, 格段に高い性能が発揮される。ニュージーランドに生産プラントが建てられたが, 経費が高くつくのでまだ普及には至っていない。しかし, この成功は, 多くの研究者を勇気づけ, 今やこの分野では第3の技術革新へ向けて研究が進められている。