著者
梅村 章 二日市 宅
出版者
社団法人 日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会誌「ながれ」 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.502-514, 1996-12-31 (Released:2011-03-07)

小型のクモ (蜘蛛) の中には上昇流に乗って空を飛ぶクモがいる.浮揚力は, 糸出突起部から噴出された一条の糸に働く風からの摩擦力である.糸に働く正味の摩擦力の上向き成分がクモの重量より大きくなれば飛び立っことができ, 一様風の中で糸は最終的に鉛直線になって定常飛行する.クモの糸は非常に細くしなやかであり, 糸の太さに基づいて算出した局所相対速度のレイノルズ数は小さな値を取る.このため, 糸は効率的に空気からの摩擦力を受けとめて, クモの大きな質量を支える張力の伝達媒体としての役割を果たす.本研究では, 飛行クモの糸の変形を支配する力学を考察定式化して, 一様風中でのクモの飛び立ちから定常飛行に至る過程の数値シミュレーションを行った, また, 液体を用いた模擬実験を行って, 数値計算と比較した.