著者
二瓶 真理子
出版者
松山大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

科学的知識の客観性=「価値自由」という見方は、近年科学哲学上でも影響力を失いつつある。科学は、社会のなかの一事業として、様々な諸価値や状況からの影響をうけざるをえない。しかし、同時にそれは、特定の個人や立場のみに占有されるのではなく、社会全体に共有される公共知でもあるべきだ。こうした新しいいみでの「客観性」概念を担保するひとつの要素として、近年、科学者共同体内部の価値観、信念背景、立場、観点などの「多様性」を重要視する見方が、提起されている。さまざまな観点をもつものによる共同体部の相互批判により、科学知のステイタスを確保するという見解だ。本研究は、このような見解の是非と意義を理論的に検討する。