著者
于 暁軍
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.115-134, 2004-12-09

中国経済は、改革開放の政策を実施して以来、輸出主導経済を牽引力に、20年間著しい成長を遂げてきた。経済規模が既に世界7位まで浮上してきた。その背景には、ドルに対する固定相場制を採用していることがある。そのために、外貨準備が年々増加し、世界第2位のドル保有国となっている。近年、通貨の人民元のレートに関する議論が盛んに行われてきた。特に、アメリカが双子の赤字を抱えており、一方、国内でインフレが進んでいる状況の中で、現行の固定レート(1ドル=8.27元)を維持できるかどうかという疑問が出ている。第一章では、(1)人民元の交換性、(2)人民元レートの運営と為替需要、(3)為替運営と金融政策、(4)為替市場の仕組みと人民元レートの決定メカニズムなどを中心に、中国現行為替管理の仕組みにおいて人民元需給要因などから人民元レートの決定メカニズムを明らかにする。第二章では、(1)人民元レートの推移、(2)人民元レートの管理から生じる問題、(3)金融国際化に向けた為替制度の見直し、(4)今後の為替運営の展望などを中心に、現行の為替相場制度は抱えている様々な問題を分析し、WTO加盟後、安定的な経済成長を維持しながら、柔軟性のある為替制度をどのように選択することを議論する。