著者
河田 正仁 岡田 敏男 清水 雅俊 高田 幸浩 下川 泰史 五十嵐 宣明 岡嶋 克則 宮武 博明 水谷 哲郎 中村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.337-343, 1999-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

くも膜下出血や手術後などのストレス状態におかれると急性心筋梗塞類似の病態となり,冠動脈に器質的狭窄がなくても広範な左室壁運動障害を引き起こすことが知られている.症例は81歳の女性で,当初は右下肺野の陰影で入院した.次第に陰影が広がり,呼吸困難を呈した.第10病日に突然呼吸困難が増悪し,心電図上胸部誘導で高度のST上昇をきたし,ショック状態となった.挿管の上,緊急冠動脈造影を施行した.冠動脈の器質的狭窄はなかったが,左室造影上前壁,心尖部,下壁にわたり広範な無収縮を認め,心基部のみ正常収縮をしていた.患者はその2日後に肺炎陰影が両肺に広がり呼吸不全で死亡したが,血清の最大CKは296U/lであった.病理解剖における心筋組織には壊死,炎症細胞浸潤などを認めなかった.本症例は重症肺炎を契機にstunned myocardiumが疑われる病態が引き起こされ,原因として冠攣縮やカテコールアミン心筋障害などが推定された.まれではあるが,ストレスを伴った低酸素血症がstunned myocardium様の心機能低下の誘因となった重要な病態であると考えられ報告する.