著者
岩谷 佳美 加賀 勇治 芳賀 喜裕 荒井 剛 山田 文夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.25-30, 2011 (Released:2012-09-20)
参考文献数
6

当院の冠動脈造影(coronary angiography; CAG)と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)の年間総数は約7,000件であり, 循環器医師17名が左橈骨動脈アプローチで施行している. そのため, 術者個人の年間件数が多く, 被曝線量の増加が懸念される. そこで, 術者個人の被曝線量と件数から被曝状況を分析し, 問題点および防護対策について検討した. その結果, 個人の年間平均件数はCAG 280件, PCI 80件, 平均年間被曝線量は3.5mSvで, 被曝線量は件数に依存しなかった. 被曝線量の多かった術者は, 年間27.0mSvで, 職業被曝線量限度を超える危険性が生じた. この術者の被曝状況を分析した結果, 個人線量計を防護衣の前ポケット(布製)に入れていたため被曝したことがわかった. そこで, 正しく防護衣の内側に装着した場合の被曝線量をファントム実験で算定した結果, 被曝線量は3.7mSv/年と推定された. 術者は個人被曝線量計を正しい位置に装着する, きちんと防護用具を使用するなど, 常に被曝防護を意識し, 実践することが重要である.
著者
漢那 朝雄 小林 正直
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.677-681, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
菅原 里恵 堀中 繁夫 八木 博 石村 公彦 小口 渉 矢野 秀樹 石光 俊彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1432-1436, 2012-11-15 (Released:2014-04-03)
参考文献数
17

脱水と溢水を繰り返し,心不全加療に難渋し全身性毛細血管漏出症候群と診断した症例を報告する.症例は66歳,男性.入院時の主訴は意識障害でBP 85/63mmHgと低血圧,血液検査ではHt上昇ならびに低アルブミン血症が認められたため,大量補液にて血圧は改善するも溢水となる.その翌日から急に5,000mL/日以上の多尿が認められ脱水となることを繰り返した.各種ホルモン検査および負荷試験はいずれも異常は認められなかった.しかし,尿中Na排泄量が多いため食塩負荷およびフルドロコルチゾンの投与を開始し増量したところ,再び溢水に伴う体重増加や心拡大,胸水貯留が認められたが用量の調整にて上記発作を出現することなく安定した状態で約2年間,外来通院内服加療した.再度心不全発症し,入院治療するも死亡.全身性毛細血管漏出症候群は,非常に稀な疾患であるが通常の加療に反応しないうっ血性心不全には,当疾患も鑑別疾患の1つとして念頭におくべきと考えられる.
著者
福永 寛 櫻木 悟 藤原 敬士 藤田 慎平 山田 大介 鈴木 秀行 宮地 剛 川本 健治 山本 和彦 堀崎 孝松 田中屋 真智子 片山 祐介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.2, pp.S2_154-S2_158, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
3

Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす症候群であり, 冠攣縮に合併したタイプ1とプラーク破裂に伴う血栓形成に起因するタイプ2に分類される. 今回, われわれはKounis症候群により心肺停止をきたした2症例を経験したので報告する.症例1: 76歳, 男性. 腰部脊中柱管狭窄症の術中にセフォペラゾンを投与したところ, アナフィラキシーショックを発症した. 下壁誘導にてST上昇を認めたため急性冠症候群と診断, 緊急冠動脈造影にて右冠動脈#1に血栓および#4AVに完全閉塞を認めた. 血栓吸引療法のみで再疎通が得られた.症例2: 61歳, 男性. 起床時より四肢・体幹に蕁麻疹を認め, その後, 心肺停止となり, 当院へ搬送された. 心肺蘇生術にて心拍再開したが, その後, 心室頻拍が頻発, 急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めなかったが, 心電図上胸部誘導で一時的にST上昇を認めたため, 左前下行枝の冠攣縮と診断した.
著者
水野 幸一 仲島 麻里可 足利 光平 中野 恵美 松田 史郎 宮﨑 秀和 佐々木 俊雄 原田 智雄 明石 嘉浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.972-979, 2013-08-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
13

近年,高齢化に伴い日本人の動脈硬化性疾患が増加してきたが,一方で発症年齢の若年化が問題となっている.特に急性心筋梗塞では,若年期での発症機序や冠危険因子の関与などは現時点で見解が一致していない.当院で2006年2月開院以後2011年1月までの5年間で急性心筋梗塞に対して緊急経皮的冠動脈インターベンション(percut­ aneous coronary intervention;PCI)を施行した218症例中の35歳以下の5症例の臨床的背景,冠危険因子,冠動脈病変背景および臨床経過を今回検討したので報告する.5例とも男性,喫煙者で,4例が夜間から早朝の土木作業や運転などの不規則勤労者であった.4例がBMI 25.0以上の肥満であり,冠危険因子では4例が高血圧,5例ともに脂質異常症があり,1例のみ糖尿病,家族歴があった.臨床的には5例ともに来院時Killip分類Ⅰ,冠動脈1枝病変で,緊急PCIを施行して早期に再灌流が得られ合併症なく退院した.その後5例とも再狭窄を生じず,心血管イベントの再発も認めていない.以上の共通点は,対極的な86歳以上の緊急PCI施行症例と比較することにより一層鮮明になった.今回経験した5症例は,当院の急性心筋梗塞で緊急PCIを施行した症例の3%未満と低頻度であったが,臨床的背景,冠危険因子などで多くの共通点が認められた.臨床経過では,5例とも短期的には予後良好であったが,長期的予後まで考慮すれば生活習慣の改善を中心に,冠危険因子のより厳格な管理が重要と考えられた.

25 0 0 0 OA 災害と心不全

著者
坂田 泰彦 下川 宏明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.550-555, 2014 (Released:2015-05-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1
著者
畔柳 三省 熊谷 哲雄 松尾 義裕 黒須 明 早乙女 敦子 長井 敏明 徳留 省悟
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Supplement3, pp.3-12, 2001-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

1995年から1998年の4年間の東京都23区内の入浴中死亡例のうち剖検により死因を決定された例について疫学調査を実施し次の結果を得た.(1)対象は709件であり剖検率は23.5%である.(2)年齢分布は0歳から96歳であり,平均年齢は65.8±16.2歳である.(3)冬季に多く,夏季に少ない.(4)健康群は26.0%を,疾患群は63.2%を占める.(5)内因死は63.9%,外因死は33.0%を占める.(6)虚血性心疾患が37.8%,溺死が28.8%の順に多い.(7)60歳未満の比率が高い死因はくも膜下出血,急性アルコール中毒である.(8)浴槽・サウナでは虚血性心疾患の比率が高く,洗い場・シャワーでは脳動脈破綻の比率が高い.(9)約半数が飲酒入浴をしており,外因死ではその比率が高い.(10)各発生場所での飲酒していないものの比率はシャワー73%,洗い場72%,浴槽52%の順に高い.サウナでは17%である.(11)湯深と死因との間に関連はみられなかった.以上から飲酒入浴は止めたほうがよいと思われ,特にサウナでの飲酒入浴は禁止するのが望ましい.また,洗い場でのお湯の汲み出しは避けたほうがよいのかもしれず,静水圧と死因との関連はみられなかった.
著者
髙橋 徹也 近江 晃樹 豊島 拓 齋藤 博樹 桐林 伸幸 金子 一善 菅原 重生 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.734-740, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
8

患者は30歳代女性. 神経性食思不振症に伴うるい痩のため, 当院精神科に栄養管理目的に入院中であった. 入院後, 血圧の低下と肺野のうっ血を認めたため当科紹介となった. BNP値が3045pg/mLと上昇し, 低リン血症をはじめとした高度な電解質異常を認めた. 心電図では陰性T波が出現し, 心エコーではたこつぼ心筋症様の左室壁運動異常を認めた. うっ血性心不全として少量のカテコラミンおよび利尿薬を投与し, 致死性不整脈に注意しながら全身管理に努めた. また, 電解質を補正しながら緩徐に投与カロリーの増量を行った. その後, 電解質は補正され, 左室壁運動および心不全の改善を認めた. 低栄養状態にある患者の精神的ストレスや低血糖・疼痛による身体的ストレス, 低リン血症などの電解質異常が, たこつぼ心筋症とRefeeding症候群に伴う心不全の発症に関与している可能性が示唆された.
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1284-1290, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
9
著者
森田 宏
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1232-1236, 2012-10-15 (Released:2014-04-03)
参考文献数
8
著者
堀本 拡伸 高橋 優 久保 俊彦 芦原 俊昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.371-376, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
2

症例は38歳, 男性. 小学生時から労作時や緊張した時を中心に開始と停止の明瞭な動悸を自覚していたが, 30分程で消失するため放置していた. 2009年4月, 軽労作で呼吸困難感が出現し, 2日後には座位でも自覚するようになったため, 近医を受診. 心電図でwide QRS頻拍を指摘され当科に救急搬送された. 当院到着時の心電図はwide QRSで左脚ブロックパターンを呈しており, 毎分200拍程度の頻拍にもかかわらず症状は軽微で血行動態も保たれていた. アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP) 急速静注によりR-R間隔が短縮するとともにnarrow QRSに変化し, 続いて一過性完全房室ブロックを経て正常洞調律に回復した. この経過から, 左側副伝導路を有する房室回帰性頻拍が左脚ブロックによりCoumel現象を生じていたと疑われた. 電気生理学的検査により左側壁の副伝導路を認め, カテーテルアブレーションによる離断とともに誘発不能となり根治したことから, 上記診断が裏づけられた. ATP投与によりCoumel現象が確認でき, 頻拍の機序が房室回帰性頻拍であること, かつブロックを生じた脚と同側に副伝導路が存在することを同時に診断でき, その後の検査, 治療に非常に有用であったwide QRS頻拍の1例を経験した.

11 0 0 0 OA 右心機能評価

著者
林田 晃寛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.768-772, 2013-07-15 (Released:2014-09-16)
参考文献数
9
著者
高橋 啓子 奥村 恭男 永嶋 孝一 園田 和正 古川 力丈 佐々木 直子 磯 一貴 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 渡辺 一郎 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SUPPL.2, pp.S2_6-S2_14, 2016-12-30 (Released:2018-08-15)
参考文献数
7

症例は41歳男性.B型WPW症候群に伴うwide QRS頻拍に対し,電気生理学的検査を施行した.心室連続刺激中の心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位であったが,心室早期刺激で左側後壁副伝導路の存在が示唆された.心室早期刺激でclinical wide QRS頻拍(SVT1)が誘発され,右側側壁副伝導路を順行,房室結節を逆行する逆行性房室回帰性頻拍と診断した.SVT1は室房伝導時間が短縮し,His束電位が心室(V)波に重なるSVT2へと変化した.その間,His –心房(A)波間隔は一定であったことからSVT1の室房伝導は機能的右脚ブロックであったのに対し,SVT2ではそれが解除されたと考えられた.さらにその後の心室早期刺激でwide QRS頻拍SVT3が出現し,これは室房伝導の順序は変化しないまま,narrow QRS頻拍SVT4に変化した.これらは房室結節を順行,左房後壁副伝導路を逆行する順行性房室回帰性頻拍と診断した.wideからnarrowへの変化はCoumel現象による左脚ブロックが解除されたためと考えられた.さらに副伝導路間を旋回するSVT5と,通常型slow-fast房室結節回帰性頻拍(SVT6)も誘発された.以上より,順伝導のみの右側副伝導路,潜在性左側副伝導路,房室結節遅伝導路を焼灼し終了した.