著者
五十嵐 尚美
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

1. 性暴力について看護者の認識とその変化要因に関する調査研究目的:看護婦の性暴力に関する認識とその変化要因に関して明らかにし、看護ケアの方向性を探る。研究方法:平成8年度から継続している学習グループを計5回の学習会を開催し、そのうち1回は部外者によりファシリテーターを行い「性暴力被害者への看護の役割」に焦点をあてる「フォーカス・グループ・ディスカッション」を行い質的に分析を行った。また、学習グループ主催で、1回の看護婦対象にした講演会を開催し、参加者よりアンケートへの回答を得た。結果:「フォーカス・グループ・ディスカッション」においては、性暴力被害者の実態を理解するならば、被害者を見逃すことが少なく、最小限でも現実的なケアできる、という結果であった。講演会では、看護系雑誌に学習会主催という広告を出し、30名の看護婦が出席。地域は神戸から東京在住者であった。被害者へのケアに関する悩み、被害者経験を有する者もおり、看護ケアを積極的に推進するニーズが高かった。2. 医療機関における性・暴力被害者の受け入れ実態調査研究目的:医療機関における性・暴力被害者の受け入れ状況につい実態を把握する。研究方法:前年度の調査票を簡略化し、回収率を上げ、東京都2区にて医療機関の実態をより正確に把握する。警視庁のデータとのつき合わせをする。研究結果:3年間フォローしてきた東京都の2つの区における病院外来診療部、医療機関400箇所を対象に調査票を配布した。前年度は回収率25%であったが、今年度は35%と若干の伸びが見られた。医療機関における性・暴力被害者受け入れ状況は、警視庁報告より多いことがわかった。また詳細な事例報告の中には、ドメスティックバイオレンス(夫やパートナーからの暴力)の割合が7割をしめていた。今後とも実態を把握することの必要性がある。3. 医療機関における性暴力被害者への看護マニュアルの開発学習グループを中心に当該病院において実現可能なマニュアルを作成中である。マニュアルの評価も今後の課題として残るところである。