著者
五所 万実 中村 文紀
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-20, 2020-03-30 (Released:2020-07-31)
参考文献数
33

本稿は、法領域において問題となる「商標の普通名称化(trademark genericization)」という意味変化現象について、言語学の立場から理論的考察を試みる。普通名称化とは、例えば、エスカレータや正露丸のように、もとは商標であったことばが、その商品カテゴリを指す一般名称となり、商標として機能しなくなる現象をいう。本稿では、一般的な言語現象でもある商標の普通名称化を、米国において普通名称化したと法的に判断されたエスカレータの事案を題材に、構文文法(Construction grammar)や使用依拠モデル(Usage-based model)という言語知識に関する理論モデルを用いて分析する。法学と言語学の接点を探る中で、法実務に限らず、言語学にも新たな知見をもたらす「商標言語学(Trademark Linguistics)」とも呼べる研究枠組みの可能性を探る。