著者
井上 利志栄
出版者
日本作物学会九州地域談話会
雑誌
九州作物談話會報
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-5, 1957

昭和31年産菜種の全国作付面積は25万町歩余りで,これは戦前最高の明治25年の17万町歩に比べ,飛躍的な増加と云える、。叉西日本でも11万町歩余りに及び,戦前戦後を通じての全盛期となった。しかし反收は停滞の状態を示し,全国平均で1石5升,西日本(九州・中国・四国)では9斗8升で,戦前に比べると減收の傾向さえ見られる。最近3ケ年の作付状況(図略)によると,西日本における菜種作の大部分は九州であり,殊に鹿児島・宮崎・熊本の畑作地帯及び福岡・佐賀の水田裏作地帯が主産地で,その77%を占めている。又同期間の反收(図略)では中国・四国殊に瀬戸内海沿岸に高位の地帯が分布し,主産地の九州における低收が目立ち,今後の改善が痛感される。更に余国各地域の昭和9~30年の地域別反收(図略)の推移を見ると,ここにも、大きな問題があるようである。すなわち,畑作の多い東日本では戦前に比べ近年その反收がかなり向上しているにかかわらず,水田作の多い西日本ではかえって低下の状態にある。この西日本の反收低下の傾向は,水田作の多い中国・四国に顕著であるが,九州においても水田作の多い北九州で特に著しく,畑作地帯の南九州では逆に東日本と同様増加の傾向にある。従って西日本においては,一般的な問題の外に,特に水田裏作地帯の地力増強,施肥の合理化,適品種の選択等が強調されねばならない。