著者
井上 智代 渡辺 修一郎
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.723-733, 2015
被引用文献数
2

本研究は, 農村における住民の生の声から健康に資するソーシャル・キャピタルの地域特性を整理することを目的にグループ・インタビュー法を用いて調査し, 質的記述的に分析を行なった。A村に在住する65歳以上高齢者6~9名のグループ3組にインタビューを実施した結果, ソーシャル・キャピタルに関する発言内容が610抽出され, コード数141にまとめられた。141のコードから農村に特徴的な20コードを抽出したのち, 8サブカテゴリー,4カテゴリーに集約した。4カテゴリーは【自然との共生】, 【農村ならではの信頼関係の維持】, 【農村の社会規範を重んじる】, 【農村であることを活かした社会参加とネットワーク】にまとめられた。農村における健康に資するソーシャル・キャピタルには, 自然の中で共生してきた農村独特の人と人とのつながりがもたらす特徴がみられた。先祖の農地を守って生活する農村独特の地縁社会の中で培われてきた強い絆に基づく結束型ソーシャル・キャピタルの側面が多く抽出されたが, 農村の人々の中には橋渡し型ソーシャル・キャピタルの視点も着実に育まれている。農村における高齢者の健康づくりや豊かなコミュニティづくりを推進していくにあたり有用な知見を得ることができた。