著者
神田 学 井上 裕史 鵜野 伊津志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.83-96, 2000-02-29
被引用文献数
13

東京の環状八号線上空に現れる通称"環八雲"の生成メカニズムに関して数値計算により検討を行った.4次元データ同化手法・4重ネストグリッド手法を用い, また詳細な地理情報と人工排熱分布を考慮することにより, 水平スケール1km未満の局地性の強い環八雲を概ね良好に再現することができた.環八雲は, 東京湾海風の先端部の上昇流域に対応して形成された積雲列が, 環八近傍で停滞することによって形成される.これはちょうど, 東京湾海風と相模湾海風の収束帯に位置する.また, 海風先端部の重力波と熱対流の影響で, 環八雲周辺には複数のロール対流および積雲列が形成されること, が計算結果により裏付けられた.人工排熱量と都市領域を調節した数値実験により, 人工排熱量の増加や都市領域の拡大といった都市化の進行が積雲の雲量を増加させること, 都市領域の変化により水平気圧勾配が変化し, 積雲列の位置が東西方向にシフトすることが示された.