著者
松村 憲太郎 澳本 定一 井下 謙司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1256-1265, 2016-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
32

目的:高尿酸血症における血管内皮機能障害と高ホモシステイン血症との関連性について検討した. 対象と方法:血清尿酸と血漿総ホモシステイン(tHcy)を同時測定した1396例(尿酸降下薬非服用1209例,服用187例)中,非服用例(男性493例,女性716例,平均72±14歳)を対象にした.血清尿酸値7.0 mg/dL<を高尿酸血症とした.血清尿酸値8.0 mg/dL以上で尿酸降下薬を投与した174例で治療前後6カ月の諸指標の変化を検討した.検査項目は血液生化学検査,血清脂質,血漿tHcy(nmol/mL),上腕動脈FMD(flow-mediated dilation:%). 結果:高尿酸血症は9.2%(男性14.0%,女性5.9%,p=0.000)にみられた.尿酸降下薬服用例を含めた高尿酸血症発生頻度は21.4%(男性31.6%,女性13.1%,p=0.000)であった.血清尿酸を従属変数とする重回帰分析でBMI,eGFR,中性脂肪,血漿tHcyが有意独立変数であった.血漿tHcyは高尿酸血症群16.4±8.8,非高尿酸血症群12.6±7.9(p=0.000),高感度CRPは高尿酸血症群で有意に高かった.FMDは高尿酸血症群4.2±2.9%,非高尿酸血症群5.7±2.9%(p=0.000).治療前後で血漿tHcyは13.5±7.1→11.7±6.3(p=0.005),高感度CRPは0.296±0.345→0.172±0.177 mg/dL(p=0.000),FMDは4.3±2.4→6.0±2.5(p=0.000)へ変化した. 結論:高尿酸血症では血漿tHcyとCRPが増加しており,慢性炎症による血管内皮機能障害がみられた.尿酸降下薬で血漿tHcyが低下し,血管内皮機能が改善した.