著者
井出 知之
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.72-84, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
46

この論文は日本の社会階層論における政治意識研究の研究動向を整理し,課題と展望を議論するものである。社会階層論の研究においては,社会構造とその変動の分析枠組みの一つである社会階層について論じるに留まらず,その政治変動への影響なども論じられてきた。そのために階層的地位に関する変数と政治意識に関する変数との関連が分析されてきたのである。本論文がこれらの社会的変数と政治的変数の関連をめぐる議論をまとめることで得られる結論は,社会階層構造とその変動が政治意識に反映される際に,系統的なズレが生じるということである。それは政治意識が政党や政権といった要因で攪乱されるということと,客観的な階層が主観的な階層に変換されていく過程でズレが生じるということである。これらの点をモデルの複雑化でなくシンプルな理論の面白さに生かすことが問われている。