著者
中室 牧子 藤原 夏希 井口 俊太朗
出版者
慶應義塾大学湘南藤沢学会
雑誌
Keio SFC journal (ISSN:13472828)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.178-197, 2014

特集 SFCが拓く知の方法論#研究論文近年, 入試形態の多様化が進むにつれて, AO入試による入学者が入学後にどのようなパフォーマンスを発揮しているのかということが注目を集めている。本研究では, SFC在学者に対する質問紙調査をもとに, AO入試入学者と一般入試入学者とを比べて, どのような差が生じているのか —特に, リーダーシップの発揮や, 満足度, 目的意識, SFCへの帰属意識, 精神面の健康状態— を定量的に明らかにすることを目的とする。AO入試を選択する受験者が, そもそも他の入試区分を選択する受験者と根本的に異なっている可能性があり, 入試区分の選択がランダムでないことによって生じるセレクション・バイアスをコントロールするため, 傾向スコアマッチングという手法を用い, 入試区分と上記のような教育成果との因果関係を明らかにすることを試みる。実証分析の結果, AO入試で選抜された入学者は, リーダーシップを発揮し, 何かしらの課題や目標とともに, SFCに帰属意識を持ちつつ大学生活を送っていると判断することができる。特に, AO入試の目的の一つが「問題意識の明確な学生を確保するため」だとするならば, SFCのAO入試という選抜制度はその趣旨にかなった役割を果たすことが出来ていると評価できよう。