- 著者
-
井村 美和子
- 出版者
- 名古屋文理大学短期大学部
- 雑誌
- 名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.131-142, 1998-04-01
着心地についての明確な定義づけはないが繊維の最終製品に対する品質項目の中で, 「着心地として, 手触り・感じ」が挙げられている.着用者自身が感ずる総合された快適さが着心地として現れてくるのであるが, その内容は皮膚感覚に訴える手触り・肌触り・被服重量・被服圧・適合性などや, 繊維製品の活動性(形状・大きさ), 保温・吸水性能, 生理的・心理的快・不快のように環境と関連したもの, 色柄・風合い, 社会的流行, 個人の趣味・嗜好との一致性など多くの要因を含んでいると言えよう.また, 着心地を広義に解釈すれば「人間と衣服と環境」の3者の相互作用から起こる適応関係にかかわる価値概念であると定義づけることも可能である.着心地の中で活動機能を大きく取りあげるか, 衛生面を取りあげるか, あるいは個人の感覚を取りあげるかは, 時と場合によって異なると言える.更に具体的にいうと数多く所持している被服の中で, 自分が似合う服, 着用していると気持ちが浮き浮きする服, 暑い時には涼しく感じ, 寒い時には暖かさを感じる服, 動きやすい服, 働きやすい服などは着心地が良い服であると, 即ち材質, 色, 柄, 形, サイズ, ゆとり及び縫製が着用者並びに着用目的に適合していることであると仮定することもできる.昨今では, 20歳前後の女性層から「着心地が良い・悪い」という語をあまり耳にしなくなった感がする.そこで女子短大生の着心地にかかわる意識を明らかにする目的で, 庄司光らが「着心地が良いための条件である」とした26項目を用いて「冬季着装」に視点をおいて意識調査を実施した.結果は, 項目No(以下同じ)26,項目内容(以下同じ)「着やすく動きやすいデザイン」98.8%, 14「あたたかい」98.4%, 6「気候に適した材質・デザイン」95.6%, 11「寸法がよく合う」及び21「伸縮性があり型くずれしない」95.1%が認められ, 運動適応性, 防寒性能などを着心地の良いための条件であるとしていることが認められる.反面着心地が悪いための条件であると回答した結果は, 2「布地が薄い」67.0%で, この項目内容は冬季着装被服の性能として消費者が要求するであろう「寒さを防ぐため」の性能を保持しないという観点から妥当な結果であると言えよう.調査項目26項目を被調査者が着心地の良し・悪しを意思決定する際の被服の性能と側面要因をA群衛生(含保健)的側面, B群素材(繊・組織)的側面, C群運動(着やすい・動きやすい・体になじむ)的側面, D群嗜好(色・柄・デザイン・縫製)的側面, E群風合い(手触り・感じ)的側面の5群に分類し構成した.着心地が良いための条件であるとした結果を平均値x^^〜で見ると, A群162.0,B群141.4,C群167.2,D群153.8,E群149.7で, 運動的側面及び衛生(含む保健)的側面に意思決定の働きかけが強いことが認められた.