著者
酒井 恭高
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.109-114, 1993

体脂肪量の直接測定は現在の測定技術ではほとんど不可能であり,その試みは間接法による推定の域を説し得ない.多くの間接的推定法が開発されている中にキャリパー法とBI法がある.キャリパー法は,常にその妥当性や再現性等について信憑性が指摘されている.一方,BI法は再現性も高く,測定時間も2分程度で終了し極めて信頼性も高い測定法とされている.本研究は,BI法から算出される体脂肪量の推定を妥当と仮定し,キャリパー法の妥当性を検討した.被検者は健康で形態も日本人として標準的な18歳〜23歳の女性57名である.キャリパー法とBI法から算出されたF%の平均±標準偏差は. 28.21土7.04%, 29.77±4.77%でその差に有意差は認められなかった.しかし,キャリパー法の皮脂厚の計測は,被検者それぞれの皮膚の張り具合や測定誤差としての妥当性等にかなり問題があった.それは,キャリパー法とBI法の間に個々の差として,28.66〜-12.52%の差がみられたからである.また,皮脂厚腕(X_1)・皮脂厚背(X_2)を説明変数,BI法によるF%を従属変数とした重回帰はY=0.15(0.12)X_1+0.21(0.08)X_2+22.30〔()内推定標準誤差〕(r=0.48 P<0.01)を得たが,この推定式への寄与率は23%であった.従って,BI法を妥当と仮定した場合,キャリパー法によるF%の推定にはかなりの問題があることを強く指摘するものである.
著者
松田 秀人
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.125-129, 1998-04-01
被引用文献数
1

女子大生263名を対象に, 食品の咀嚼を考慮して食品嗜好調査を実施した.被検者をBody Mass Index(BMI)により肥満群(BMI 26.4以上, 17名)と非肥満群に分類した.その結果, 肥満群は, ピザ, ナポリタン, チャーハン, フランスパン, コーンフレーク, ヒレカツ, ひじき, ショートケーキ, かりんとうの摂取頻度が低かった.これらの食品のなかでピザやショートケーキはカロリーが比較的高いので, 肥満群のほうが非肥満群に比べて肥満を気にする傾向が強いために, 摂取頻度が低かったと考えられる.ピザやショートケーキ以外の食品は, 概して咀嚼回数が多く, なかでも, フランスパン(可食部10gあたりの咀嚼回数108回), コーンフレーク(同243回), かりんとう(同98回)は咀嚼回数が特に多く, しかも噛みごたえのある食品である.したがって, 肥満群は非肥満群に比べて, 噛みごたえがあり咀嚼回数が特に多い食品の摂取頻度が低かった.
著者
石田 和夫 三浦 英雄
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.43-48, 2000-03-31 (Released:2019-07-01)

1997〜1999年の3年間にわたり, 本学学生399人を対象に水洗い, セッケン, 0.2%塩化べンザルコニウム30秒間及び数秒間浸漬, 70%エタノール, 薬用Mセッケンの6通りの方法で手指を洗浄または殺菌消毒させ, 手洗い前と手洗い後の手指の生菌数の比較を行った.その結果, 0.2%塩化べンザルコニウム30秒を除いては, 手洗い後に生菌数が増加する傾向が見られた.また殺菌消毒後にも残存検出された菌株について簡易同定を行ったところ, 皮膚常在菌と思われるStaphylococcus属の細菌が約80%を占めていた.またこれら残存した菌株について殺菌消毒剤に対する抵抗性を調べたところ, 一部Bacillus属を除いて, 抵抗性はなかった.以上の結果より, 殺菌消毒剤を使って手洗いを行った場合, 残存検出されるものは手指の皮膚において圧倒的多数を占める常在菌群であり, 一時的に付着した病原細菌等は殺菌除去できるものと示唆された.
著者
近藤 みゆき
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.45-52, 2001-03-31

マクロビオティックとは英語で, 日本語訳は「禅式長寿法, 自然食の食事法」とある.ベジタリアニズムの一種で, その食事内容は, 玄米・菜食中心で, 時として魚介類や卵を食べることもある.人々がベジタリアンを選ぶ理由は, 思想・信条的理由, エコロジーへの配慮のため, あるいは, 社会的倫理的信念からなど, いろいろある.最近, アメリカでは, 疾病の予防や健康の向上のためにベジタリアン食が選択されることが多くなってきた.1970,80年代からベジタリアンに関する学術論文も増えてきており, ベジタリアン食を摂取している人たちは, ある種のガン, 虚血性心疾患, 高血圧症, 糖尿病の罹患率が明らかに低いということが知られている.本報では, ベジタリアンの全体像をとらえ, この中でマクロビオティックについて, 起源・内容などを紹介する.また, マクロビオティックに関する学術論文から栄養的側面もとらえる.
著者
井村 美和子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.131-142, 1998-04-01

着心地についての明確な定義づけはないが繊維の最終製品に対する品質項目の中で, 「着心地として, 手触り・感じ」が挙げられている.着用者自身が感ずる総合された快適さが着心地として現れてくるのであるが, その内容は皮膚感覚に訴える手触り・肌触り・被服重量・被服圧・適合性などや, 繊維製品の活動性(形状・大きさ), 保温・吸水性能, 生理的・心理的快・不快のように環境と関連したもの, 色柄・風合い, 社会的流行, 個人の趣味・嗜好との一致性など多くの要因を含んでいると言えよう.また, 着心地を広義に解釈すれば「人間と衣服と環境」の3者の相互作用から起こる適応関係にかかわる価値概念であると定義づけることも可能である.着心地の中で活動機能を大きく取りあげるか, 衛生面を取りあげるか, あるいは個人の感覚を取りあげるかは, 時と場合によって異なると言える.更に具体的にいうと数多く所持している被服の中で, 自分が似合う服, 着用していると気持ちが浮き浮きする服, 暑い時には涼しく感じ, 寒い時には暖かさを感じる服, 動きやすい服, 働きやすい服などは着心地が良い服であると, 即ち材質, 色, 柄, 形, サイズ, ゆとり及び縫製が着用者並びに着用目的に適合していることであると仮定することもできる.昨今では, 20歳前後の女性層から「着心地が良い・悪い」という語をあまり耳にしなくなった感がする.そこで女子短大生の着心地にかかわる意識を明らかにする目的で, 庄司光らが「着心地が良いための条件である」とした26項目を用いて「冬季着装」に視点をおいて意識調査を実施した.結果は, 項目No(以下同じ)26,項目内容(以下同じ)「着やすく動きやすいデザイン」98.8%, 14「あたたかい」98.4%, 6「気候に適した材質・デザイン」95.6%, 11「寸法がよく合う」及び21「伸縮性があり型くずれしない」95.1%が認められ, 運動適応性, 防寒性能などを着心地の良いための条件であるとしていることが認められる.反面着心地が悪いための条件であると回答した結果は, 2「布地が薄い」67.0%で, この項目内容は冬季着装被服の性能として消費者が要求するであろう「寒さを防ぐため」の性能を保持しないという観点から妥当な結果であると言えよう.調査項目26項目を被調査者が着心地の良し・悪しを意思決定する際の被服の性能と側面要因をA群衛生(含保健)的側面, B群素材(繊・組織)的側面, C群運動(着やすい・動きやすい・体になじむ)的側面, D群嗜好(色・柄・デザイン・縫製)的側面, E群風合い(手触り・感じ)的側面の5群に分類し構成した.着心地が良いための条件であるとした結果を平均値x^^〜で見ると, A群162.0,B群141.4,C群167.2,D群153.8,E群149.7で, 運動的側面及び衛生(含む保健)的側面に意思決定の働きかけが強いことが認められた.
著者
小俣 謙二
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.41-51, 1998-04-01

犯罪の環境心理学的研究は, 従来, 犯罪者の人格特性などの主体的要因の分析を主におこなってきた.とくにわが国の場合こうした傾向が強いように思われる.しかし, 行動は通常主体と環境の相互作用の結果として生じるのであり, 犯罪もその例外ではない.このような立場から本研究ではまず, 従来の犯罪研究において環境の関与がどの程度明らかにされてきたのかを概観した.その際, 環境を巨視的環境と微視的環境の二つに分け, それぞれについて概観した.その結果, 所見の不一致や犯罪の分類の不十分さなど, 多くの課題が残されていることを指摘した.次に, わが国の場合, 実証的な研究そのものが不足していることから, 犯罪環境として最もしばしば言及される人口密集と犯罪の関係を都道府県単位で検討した.とくに, 今回の分析では密集を周辺環境の密集と住居内の密集に区分すること, 社会変動の影響の検討も含めて継年的な分析をおこなうことに主眼をおいた.その結果, 人口密集でも, 周辺環境の密集の指標である人口密度は犯罪認知総数, 窃盗, 強盗, 粗暴犯と関連するのに対して, 住居内密集の指標である一人当たりの畳数は殺人と強盗と関連するという違いがみられた.また, 人口密集や求人倍率, 都市公園面積, 転入率などの環境要因は年とともに相関関係が強くなること, 住居内密集度では1980年代後半以降に総数や窃盗との関係が弱まること, 知能犯はバブル景気の時期に当たる1980年代後半の一時期に密集の二つの指標や求人倍率と関連することなど, 年による変化もみられた.これらを踏まえて, 犯罪と環境の問題に関する今後の研究の課題と問題点を指摘した.
著者
鈴木 敏則
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.37-47, 1996-04-01

雇用における男女平等は我が国でも大きなテーマとなっていた。憲法第14条では個人の尊厳と両性の本質的平等を法における最高の価値として位置付けると同時に, 男女の性による不合理な差別を一切禁止している。これを受けた労働法規として, 労働基準法第3条の均等待遇の原則, 第4条の男女同一資金の原則が規定されている。これらの規定では「性別」の文言を欠き, これまでの判例でも賃金以外の労働条件に関しては性別を理由とする差別待遇は許されるのではないかという疑問を生じていた。一方, 日本の産業構造の変化も著しく, サービス経済化や事務労働OA化など女子労働力を必要としていた。女子労働者の側からすれば, 家事労働の機械化と子育て期間の早期終了, 女子の学歴高度化, 高収入志向, 住宅ローンや教育費のための共働きなど女子の就労を当然とみる社会的風潮が生まれてきた。こうした様々な背景の中で男女雇用機会均等法が1961年より施行された。この10年間で雇用の分野で性差別をしてはならないという認識が一般化し, 積極的に女性の能力を活用しようとする企業が増加している。しかし, 女性の職場は広がったものの, 男女の賃金格差や採用差別の改善は依然と進まず, 限界が指摘されている。この均等法はもともと成立時から努力義務という性格をもっていて, これに違反しての罰則はないという点で大きな問題点を含んでいた。これらから今秋には婦人少年問題審議会で均等法の見直しが始まることになっている。今後, 均等法は伝統的な固定概念や家事育児の役割を肯定した上での雇用慣行と男女平等の調和をはかるべく検討されなければならない。
著者
芳本 信子 村上 洋子 菅沼 大行 稲熊 隆博 永田 豊 宮地 栄一
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.23-28, 2003-05-29

抗酸化能が認められているリコピンをMndマウスに経口投与して発育に伴う中枢神経組織内のSODおよびCO活性の変動を測定した.そして,非Mnd対照マウスの測定結果と対応させながら,Mndマウスにおける運動傷害の原因因子の検討を行った.1.遺伝的神経変性疾患モデル動物であるMndマウスの脳および脊髄組織内SOD活性値は,発育に伴い徐々に減少したが,リコピンを経口投与したMndマウスは,酵素活性の回復傾向がみられた.これは,抗酸化能が認められているリコピンが,Mndマウス脳の成長段階で産生される細胞毒性の酸素フリーラジカルを消去することが示唆された.2.Mndマウス大脳皮質組織内で,好気的エネルギー産生に関与するCO活性はマウスの発育にともなって次第に減少したが,リコピンを連続経口投与することによって細胞傷害性のO_2-基を中和して,正常なエネルギー産生代謝の回復が認められた.従って,神経変性が持続的に進行するMndマウスの中枢神経組織内では,リコピンの連続投与は細胞毒性を示す活性酸素基を消去する抗酸化作用を助けて,エネルギー産生代謝系に作用して神経変性の進行を阻害し,症状の発現を遅延させる効果を有することが確認された.
著者
小俣 謙二 天野 寛
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.19-27, 1997-04-01

現代青年の心理的特徴を理解するための一つの基礎的資料を得る目的で, 若者の日常生活で身近なものの一つであるテレビCMに対する女子短大生の評価とその理由について分析を行った.方法は, 好きなCMと嫌いなCMおよびその理由の自由記述を求めるアンケート調査と, 実際にCM(10本)を呈示し, そのイメージを調べる実験の二つを用いた.その結果, いずれの方法でもタレントに代表されるCMキャラクターのイメージ(親しみやすさ, かわいらしさ)と音楽の好み, CM全体の明るさ, 愉しさが重要な判断基準となっていることが示された.同時に, 明るさやユーモアも, それが知性に欠けると受けとめられる場合やくどいと思われる場合には否定的に評価されることも示された.また, 全体的には判断基準にこうした共通性がみられるものの, どのタレント・音楽が好まれるかなど, その内容には多様性がみられた.こうした特徴は現代青年の明るさ志向や自己感性の重視とその表現への拘りなどの心理的特徴と関連があると思われる.
著者
小俣 謙二
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.41-51, 1998-04-01 (Released:2019-07-01)

犯罪の環境心理学的研究は, 従来, 犯罪者の人格特性などの主体的要因の分析を主におこなってきた.とくにわが国の場合こうした傾向が強いように思われる.しかし, 行動は通常主体と環境の相互作用の結果として生じるのであり, 犯罪もその例外ではない.このような立場から本研究ではまず, 従来の犯罪研究において環境の関与がどの程度明らかにされてきたのかを概観した.その際, 環境を巨視的環境と微視的環境の二つに分け, それぞれについて概観した.その結果, 所見の不一致や犯罪の分類の不十分さなど, 多くの課題が残されていることを指摘した.次に, わが国の場合, 実証的な研究そのものが不足していることから, 犯罪環境として最もしばしば言及される人口密集と犯罪の関係を都道府県単位で検討した.とくに, 今回の分析では密集を周辺環境の密集と住居内の密集に区分すること, 社会変動の影響の検討も含めて継年的な分析をおこなうことに主眼をおいた.その結果, 人口密集でも, 周辺環境の密集の指標である人口密度は犯罪認知総数, 窃盗, 強盗, 粗暴犯と関連するのに対して, 住居内密集の指標である一人当たりの畳数は殺人と強盗と関連するという違いがみられた.また, 人口密集や求人倍率, 都市公園面積, 転入率などの環境要因は年とともに相関関係が強くなること, 住居内密集度では1980年代後半以降に総数や窃盗との関係が弱まること, 知能犯はバブル景気の時期に当たる1980年代後半の一時期に密集の二つの指標や求人倍率と関連することなど, 年による変化もみられた.これらを踏まえて, 犯罪と環境の問題に関する今後の研究の課題と問題点を指摘した.
著者
後藤 千穂 徳留 裕子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.81-86, 1999-03-31 (Released:2019-07-01)

食物繊維は, 食物残渣の腸内通過時間を短縮させ, 排便を促し, 便秘を予防する.これにより, 腸へのがん物質の暴露が抑えられ, 最近増加している大腸がんや大腸憩室症などの発生を抑制する可能性がある.排便習慣・便秘に関する研究では, 便秘は女性, 特に, 若い女性に多くみられる.そこで女子短期大学生136名を対象に排便習慣について実態調査を行い, 生活習慣との関わりについて検討した.排便習慣の結果を実態調査より, 排便日数3日/週以下を「便秘」群, 6日/週以上を「快便」群, その中間である4〜5日/週を「便秘気味」群として分類した.対象者の排便頻度は「便秘」群が22.9%, 「便秘気味」群30.5%, 「快便」群46.6%であった.生活習慣との関連をみたところ, 朝食に欠食のあるものほど便秘・便秘気味であった(p<0.01).また, 食事時刻・排便時刻・生活リズムが不規則で, 運動習慣がないものほど便秘傾向にあった.
著者
田中 正
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.7-14, 1993
被引用文献数
1

本研究では青年期後期をむかえた女子を対象として,彼女の今日にいたるまでの親子関係の在り方と自我の発達との間にどのような関係がみられるかを検討した.結果として,親子関係が統制的であるか自律的であるかよりも,受容的であるか拒否的であるかが自我の発達に強く関係しており,父-娘関係よりも母-娘関係が自我の発達にはるかに強い影響を及ぼしていることが分かった.そこで次に,母-娘関係に限定して親子関係と自我の発達との関連を個々の項目ごとにみると,母が受容的であればあるほど「自我確立」の程度が高く,またその下位因子の「基本的信頼」「積極性」「生産性」「同一性」「生殖性」の達成度も高くなり,母の統制性が弱いほど(自律性が高いほど)「自律性」「生産性」の達成度が高くなった.次に親子関係を受容性と統制性の程度の組み合わせで8つのタイプに類型化し,それらと自我の発達との関係をみると,母-娘関係が受容的自律型のタイプで「自我確立」の程度が高く,拒否的自律型と拒否的統制型のタイプで低くなる.「自我確立」の下位因子についても,受容的自律型タイプが全体的に高く,拒否的自律型と拒否的統制型のタイプは低い傾向になる.父-娘関係の違いによる自我の発達への影響はこの場合もみられなかった.総括すれば,女子の場合,自我の確立へ影響を及ぼす親子関係の主なる要因は母-娘関係が受容的であるか否か,ということである.
著者
長谷川 孝子 中島 早苗 沼沢 忠祐
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-6, 1989-04-01

パンの副材料の配合差が及ぼす影響を調製パン5種と市販食パン1種についてレオメーターによる弾性率,応力緩和率の物性値と水分量及び水分活性を測定し,パンにおける物性値と水分の関係を明らかにした.1)調製パンの水分量は45.8〜48.4%の範囲で,生地中の水分量の高いパンでは焙焼後のパンの水分量も高かった.2)パンの水分活性は市販食パン及び乳化剤添加のパンでは0.905〜0.920と低く,砂糖半分量のもの,バターの入っていない水分量の多いパンの水分活性が高かった.3)パンの応力緩和率は乳化剤,バターの入ったパン及び市販食パンは高く,脱脂粉乳,バターの入っていないパンは低かった.4)パンの弾性率は乳化剤,バターの入ったパンは高く,脱脂粉乳,バターの入っていないパンは低かった.5)パンの水分量と水分活性と物性の関係では水分量と応力緩和率と弾性値に有意の相関があり水分量の高いパンは応力緩和率が低く,ねばりのあるパンであり,さらに弾性率も低く柔らかいパンである.一方水分量の少ないパンはバサバサし砕けやすく,かたいパンであることがみとめられた.終わりに本研究はエリザベス・アーノルド富士財団の研究費助成によった.また本研究に対し,ご好意を賜わったフジパン株式会社ならびに同財団及びご指導頂いた諸先生に深く感謝の意を表します.
著者
大野 知子 濱田 義和 中塚 静江 飛田 寿美子 三浦 英夫 長鶴 佳子 北井 夏子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.71-80, 1990-04-01

1)対象者の94.1%が昼食を「職場内食事」あるいは「外食」に依存していた.2)「職場内食事」は,各年代とも給食の利用が多く,取り寄せ物は50代が,手作り弁当は30代が他の年代に比べて多かったが,テイクアウト物はどの年代もほとんどみられなかった.3)外食店舗は,各年代ともうとん・そば店の利用率か高く,店舗の選択理由も「手軽・迅速」を挙げた点からも納得できる.4)昼食費は,週5〜6回以上ては600円未満か,それ以外の頻度ては600円以上の者か過半数を占め,月2〜3回程度の者には低額喫食者層と高額喫食者層の二極にわたってバラツキがあった.このことから,喫食頻度と昼食費は相互に関係していると推察てきる5)料理の平均選択数は,低年齢層あるいは低頻度の者のほうが多くなる傾向にあった.6)年代・頻度別に選択した料理の種類では,低年齢層と高年齢層の2つのクラスターが形成された.7)サラリーマンの外食での昼食は,定食・うどん類・そば類・ラーメンなど選択の容易さで済まされている傾向にあった.
著者
西野 由記 江上 いすず 後藤 千穂 野路 公子 石井 貴子 森 みどり 小倉 れい
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-47, 2004-04-01

ライフスタイルの多様化,社会環境の変化に伴ない食行動や生活習慣が変化してきている.今回その中で,青年期における食行動や生活習慣こどのような変化が起こっているかを知るために,給食管理実習で作成した昼食を喫食した学生に対しアンケート調査を実施し,検討を行った.また給食管理実習で作られた昼食が喫食者の食行動や生活習慣にどのような教育効果を与えたのかを検討した.結果は,男女間では,給食管理実習で作成した献立を家で作りたいと思う項目においては男子より女子が高い数値(男子VS女子;平均値2.48 VS 2.89)となり,便通の項目においては女子より男子が高い数値(2.84 VS 2.25)となった.このことは男女の意識や生活スタイルからの違いの表れだと思われる.学年別においては,朝食の欠食や昨日の運動量の項目において,2年次生の方が1年次生より低い数値(1年次生VS 2年次生;平均値3.12 VS 2.81, 2.38 VS 2.12)となった.学科別では,全体的に栄養士コースの学生よりも生活科学科生の平均値が低く,生活科学科生に対する栄養教育のありかたを再検判する必要性を感じた.料理様式別では,全てにおいて和風料理が良い結果を出しており,昨今のヘルシー志向が伺える.女子学生全体の嗜好,生活習慣の質問項目の相関行列では,本学の給食を摂取するようになって食生活が変わったことが伺え,学生に対し給食管理実習の食事を通じて食行動,生活晋直の改善を促すことが出来だのではないかと思われた.このことより給食管理実習における喫食者に対する教育効果があることが示唆された.
著者
近藤 みゆき
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.149-155, 1998

ドイツ料理はその国民性の現れか, つつましく簡素で内容を重視しており, 素朴で暖かみのある料理である.気候的に寒い時期が長いので, 体の温まる肉類を多く用いる, 豚肉が最も一般的で牛肉, 子牛肉, 鶏肉, 珍しいところでは, がちょうの肉も食べられる.また, 猟鳥や猟獣のきじ, うずら, 鹿, いのしし, 野うさぎを使った料理もドイツのレストランなら食べることができる.豚肉を利用したハム・ソーセージの種類の豊富さは有名である.魚料理ではうなぎの燻製やにしんの塩漬けが挙げられる.野菜では, じゃがいもを用いた料理が多く, キャベツを塩漬けにして発酵させたザワークラウトも種々の料理で使われている.果物も大変好まれ, 生・または乾燥させたものを肉料理の付け合わせやデザートに使う.ドイツのケーキ類のおいしさは, オーストリアと並んで賞されている.この中から世界中で食され, とりわけドイツで種類の多いじゃがいも料理をドイツ料理の原本『Wir kochen gut』<sup>1)</sup>と『Kartoffeln』<sup>2)</sup>から紹介する.以下1〜3及び表1,2は, 著者の試訳である.
著者
森 博 牧野 安子 杉江 晶子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-6, 1993-04-01 (Released:2019-07-01)

MS-Windows3.0は,パソコンにとって新しいプラットフォームであり,現在パソコン界の主流OSであるMS-DOSの種々の欠点をカバーするものとして期待されている.ところが米国での成功とは裏腹にわが国においては思ったほどの普及をみせていない.日米におけるハードウェアとソフトウェア環境の違いが主要な原因と考えられるが,それらの環境が整えばわが国においてもWindowsはパソコンの標準的プラットフォームの有力な候補の一つとなりうると考えられる.それまでの間はWindowsと既存のDOSアプリケーションは共存していかなければならないが,両者の親和性についての調査はあまりない.そこで現在まだ広く使われている16ビットパソコンを使い,DOSアプリケーションとして代表的なワープロと表計算ソフトウェアのDOSおよびWindows上でのベンチマークテストを行なった.その結果,実行スピードの点においては予想外に差がでなかったが,EMSメモリーを要求するDOSアプリケーションでは,種々の問題点が存在することが明らかになった.
著者
石田 和夫
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-31, 1988-04-01 (Released:2019-07-01)
被引用文献数
2

B.cereus「嘔吐型」食中毒と,原因食のほとんどを占める米飯との因果関係を明らかにする基礎的な資料を得る目的で,生米における本菌の汚染実態調査と,米飯における増殖試験を行った.1)生米121検体のうち,76検体(62.8%)からB.cereusが検出され,生米が本菌によって広く汚染を受けているという結果となった.生米1gあたりのB.cereus菌数は101〜102であった.2)分離したB.cereus76株について生化学性状を調べ,生物型分類を行ったところ,食中毒原性の疑われる生物型6型と7型については,7型に分類されたものが1株のみで,6型はなかった.従って,生米を汚染しているB.cereusが食中毒を惹き起こす危険性は低いものと推察された.3)生物型の異なる3種(1型,2型,6型)のB.cereusの米飯での増殖試験を行ったが,食中毒原性の疑われる6型の増殖がやや低かった.これはデンプン水解性の有無による差と推察された.
著者
神谷 勝広
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.132-126, 1997-04-01 (Released:2019-07-01)

羅山の評判は,従来あまり良くない。封建制の維持に関わった御用学者というのが,大方の見方のようである。中には,「羅山の人格・品性が立派ではなく,魅力に乏しい点があるらしい」といったものまである。確かに,家康の命で剃髪するなどを,従俗の姿勢がある。しかし,より巨視的な視点に立てば,羅山には,もっと積極的に評価すべき面が存在する。羅山は,時代の変革期に当たる江戸初期に登場し,それまでの閉鎖的な学問世界に強く反発する。具体的には,今日の公開講座のごときものを催したり,自己の編書を出版機構に乗せたり,さらに学校を組織しようとする。これらからすれば,羅山の最も重要な特徴は,<知識を伝播することへの強い意欲>と考えられる。従来,日本文化史上,知識の公開を強く提唱した人物には,明治初期の福沢諭吉があげられる。文明開化の中で平等を唱えた諭吉に対し,羅山は,封建制度成立に荷担した人物として対立的に見なされがちだが,知識の公開の流れは,羅山を含めた江戸初期の啓蒙家達と,諭吉を含めた明治初期の啓蒙家達によって,二段階で大きく進展した。知識の公開へと進もうとした方向性において,羅山と諭吉は,むしろ近似するのではないだろうか。