著者
和田 由美子 井﨑 美代
雑誌
心理・教育・福祉研究 : 紀要論文集 = Japanese journal of psychology, education and welfare
巻号頁・発行日
no.19, pp.49-59, 2020-03-31

ネガティブではない泣きが幼児期から見られるか否か明らかにするために,保育者を対象に,ネガティブではないと思われる状況で幼児が泣いたエピソードについて,自由記述で回答を求めた。76名から得られたエピソードの内容を検討した結果,ネガティブではない泣きに該当すると判断されたエピソードは82件中33件,報告者数は76名中25名(32.9%)であった。泣きの生起状況の類似性に基づき,エピソードをKJ法で分類した結果,親が迎えや担任の出勤時に泣く<愛着対象との再会>が13件,自分または人が勝利・成功した時に泣く<成功・勝利>が11件,自分または他者が危機的な状況から解放された時に泣く<危機からの解放>が3件で,33件中27件(81.8%)がこの3つのカテゴリーに含まれた。エピソードの報告件数は,男児より女児で有意に多かった。大学生の回想から,幼児期にネガティブではない涙が見られることは報告されていたが(和田・吉田,2015),保育者の「直接観察」によっても,同様の結果が裏付けられた。