- 著者
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京極 大樹
- 出版者
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会
- 雑誌
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
- 巻号頁・発行日
- pp.103, 2016 (Released:2016-11-22)
【目的】地域包括ケア病棟(以下包括病棟)は、平成26年度診療報酬改定に伴い新設され、急性期治療を経過した患者および在宅において療養を行っている患者の受け入れ並びに患者の在宅復帰支援を行う機能を有し、地域包括ケアシステムを支えている病棟である。当院では平成26年6月より亜急性期病棟を転換し、包括病棟運用を開始している。リハビリテーション専門職(以下リハ職)は、平均在院日数の要件がない代わりに60日間の入院期限やリハ対象者へ1日平均2単位以上の疾患別リハの提供が規定されている点に留意して管理・運営していく必要がある。今回は平均単位数と在宅復帰率、患者満足度とリハ職の配置に着目し、約2年における当院包括病棟でのリハ職の取り組みと今後の展望について報告する。【方法】対象は平成26年6月から平成28年3月まで当院包括病棟に入院した患者。リハ職は回復期及び包括病棟に配属されているセラピスト25名(PT13名OT9名ST3名)。専従は規定に準じてそれぞれの病棟に配置している。方法は、平均単位数については包括病棟入院料等のリハ基準に係る届出添付書類に準じ、在宅復帰率は包括病棟の施設基準等に準じて算出している。患者満足度は平成26及び27年度でそれぞれアンケートを実施し、満足度の項目を抽出している。【結果】平均単位数は平成26 年度で2.71、平成27年度で2.58であった。在宅復帰率は平成26 年度で80.2%、平成27年度で86.0%だった。リハ対象率は平成26 年度で69.7%、平成27年度で64.5%であり、回復期リハの単位数に影響はなかったが、業務が煩雑になった月が一部みられた。アンケートからは接遇やリハ内・治療について概ね高い満足度であったが、待ち時間とリハ効果に関する項目は4割程度の満足度であった。【考察】リハ包括という制度の中、リハ職の配置を熟考した結果、回復期病棟と包括病棟勤務のスタッフを混在させ、包括病棟の単位数をできるだけコンパクトに設定しながらも、在院日数のコントロールや在宅復帰率、患者満足度を達成していくといった課題に挑戦した2年であった。包括病棟固定ではなく、回復期病棟と兼務させるといったフレキシブルな人材運用は、病棟管理側からは煩雑な面もみられたが、疾患が限定される回復期病棟と疾患によらない包括病棟を同じスタッフで兼務させることで、多様な患者のリハの経験と期日内での退院調整・指導を日々業務の中心として活動できることは、特に若年層の教育的側面からは有用と考えられる。リハ職兼務にて発生するメリット・デメリット、リスクとベネフィットを見極め、限られたリハ資源を効果的かつ効率的に運用することで、患者満足度と費用対効果のバランスの最適値を今後も模索し、地域包括ケアシステムの一翼として地域に貢献していきたい。【倫理的配慮,説明と同意】研究はヘルシンキ宣言に則り,被験者のインフォームド・コンセントを得て行っている。