著者
立入 哉 今井 香奈
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.178-185, 2021-04-28 (Released:2021-05-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

要旨: 一側性難聴者用に有線式 CROS 補聴器 (EHIME) を開発し, 実耳測定, 音場での語音明瞭度検査, 質問紙調査を行い, EHIME の有用性を検討した。この結果, 実耳測定では頭部陰影効果を補償するゲインを与える周波数特性決定法が好まれる傾向が見られた。語音明瞭度検査では, EHIME の装用による逆効果より効果が高くなることを観察できた。クロス補聴器のゲインと語音明瞭度に対する効果と逆効果には関連があることが予想され, ゲインの設定には実耳での評価と語音明瞭度の測定が有用と思われた。質問紙調査では, 雑音下聴取と明瞭度では向上が見られたものの方向感・遠近感は逆に低下した。しかし, 中には音の違いを元に方向感をつかめた者もおり, 追加の検討が望まれた。最終的に, わずらわしさより, 快適さ・生活の質の向上について向上したとの回答が得られた。