- 著者
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天野 栄三
水田 耕治
橋本 寛文
今冨 亨亮
- 出版者
- 一般社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.13, pp.1549-1553, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
- 参考文献数
- 19
症例は58歳男性, 原疾患は糖尿病. 1995年4月, 血液透析導入. 導入時より慢性C型肝炎, 肝硬変を合併していた. 1997年7月頃よりエリスロポエチン抵抗性の貧血が持続. 定期的上部消化管造影・内視鏡にて下部食道表在癌と診断され, また, 腹部造影CT, 選択的腹腔動脈造影にて肝細胞癌と診断された. 食道癌に対しては放射線療法を行い, 肝細胞癌に対してはSMANCS (styrene maleic acid neocarzinostatin)/TAE (transcatheter arterial embolization) 療法を計3回施行した. 治療後, 上部消化管造影では隆起性病変は消失し, SMANCS/TAE後のCTではリピオドール集積像が比較的良好に認められたが, 次第に肝機能障害増悪, 維持透析継続困難となり, 1999年2月死亡した. 透析患者は細胞性免疫能の低下により, 一般的に悪性腫瘍の発生頻度が高く, 自験例のような重複癌や多発癌の発生する可能性は十分に予想される. 早期診断, 早期治療のためには積極的な定期検査の重要性が強調される.