著者
今本 成樹 渡邊 將人 射場 満 今本 三香子 梅山 一大
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-5, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
25

犬の毛色には複数の遺伝子が関与している。毛色に関与する遺伝子が複数確認されており,犬種によっては,毛色関連遺伝子の遺伝子検査も実際されている。将来的には遺伝子検査を用いることで,望んだ毛色を高い確率で作り出すことが可能となるであろう。 毛色に関与する遺伝子の一つであるSILV(Pmel17)遺伝子に対して短い分散型核内反復配列(short interspersed nuclear element;SINE)挿入が起こることで大理石模様の個性的な毛色を作り出す。一方で眼疾患,難聴等の身体的異常をしばしば引き起こす毛色であることも知られている。しかしながら外観だけでは判断できない隠れマールと呼ばれる個体がいることが知られている。 隠れマールは意図しない仔犬を作り出す原因となってきた。今回我々は,表現型としてマールの毛色を有していない雑種犬に対して眼底検査を実施し,SILV遺伝子へのSINE 挿入を持つ犬に特有の眼底所見を得た。そこで,この犬から遺伝子を採取し遺伝子検査を実施したところ,SILV 遺伝子へのSINE 挿入が確認された。マール因子を確認するためには,眼底検査と遺伝子検査の併用は強力な診断ツールとなる。
著者
今本 成樹 今本 三香子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.32-35, 2021-06-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
6

6カ月齢の雌の雑種猫の卵巣子宮摘出手術時に,左側子宮の異形成と同側の腎臓欠損が確認された。子宮の近位部は通常の位置に確認できたために卵巣と共に摘出した。猫の子宮の異形成は,約0.1%の割合で確認され,その30%で同側の腎臓の欠損を伴い右側に多いと報告されている。しかし,このような報告は国内ではない。本邦において猫の子宮卵巣摘出手術は最も頻繁に実施される手術の1つであるので,今回と同様の発生異常に遭遇する可能性は低くないと考えられる。子宮の異常が確認された場合には,同側の子宮以外の異常も確認する必要がある。
著者
今本 成樹 岩崎 隆 三好 紀彰 三好 喜久雄 増田 国充 二本松 昭宏 渡辺 修一郎 山下 洋平 射場 満 今本 三香子 難波 信一 吉田 留理子 相馬 武久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.96-102, 2012-10-20 (Released:2013-10-10)
参考文献数
14

一般病院に来院した犬1,104 頭,実験用ビーグル犬74 頭,2 つの繁殖場の犬120 頭の3 群に分け,Heat extract enzyme-linked immunosorbent assay(HE-ELISA)およびマイクロプレート凝集反応(MA)を用いて,抗Brucella canis (B.canis)抗体の保有状況の調査を実施した。一般病院群における検査においては,6 頭(0.54%)が抗B.canis 抗体陽性であり,1,073 頭(97.2%)は抗体保有が確認されなかった。実験用ビーグル群とカイ2乗検定を用いて比較すると,p-value < 0.0001 となった。 抗体陽性犬の6 頭のうち4 頭が繁殖場から引き取られた犬であった。この6 頭全てにおいて臨床症状は確認されなかった。一方,繁殖場の犬においては,26 頭(21.7%)が抗B.canis 抗体陽性と判定され,流産や精巣炎といったブルセラ症を疑わせる臨床症状を示す犬は抗体陽性犬のうち3 頭に過ぎなかった。 B.canis 感染を診断するにあたり,感染してからの期間,治療歴,発情,検査方法により診断結果に差が生じることや, B.canis 感染犬が必ずしも臨床症状を示すわけではないことは,既に知られている。今回の結果でも,抗体陽性犬の全てが,臨床症状を示したわけではない。そのため,B.canis 感染の検査においては,定期的・複数回の臨床症状の観察やB.canis 抗体検査を実施することが望ましい。B.canis 感染の蔓延を防ぐための犬のブルセラ症の監視・管理方法については,一般病院においては,感染症例に遭遇することは今回の結果からも非常に少ないと考えられるので,繁殖場をはじめとした集団飼育施設における管理について,今後さらなる対応を検討する必要があると考えられる。