著者
藤本 明 今村 和典 佐藤 圭右
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.322, 2016

はじめに当施設は、2014年2月13日から降り始めた大雪に見舞われ、倒木による断線により広範囲の停電が発生した。生命維持装置などは非常用電源で賄えたが、約20時間の暖房運転の停止が余儀なくされた。そこで、長時間停電時に冷暖房を確保する方法はないか検討した。経過停電時の状況:非常時の電源は、自家発電装置(発電機容量:120KW・三相交流(以下、三相)200V)から単相交流(以下、単相)100Vに変圧されることにより得られ、医療器具のための非常回路コンセントなど(計17.36KW)に出力されている。それ以外にも、消火設備などに三相200Vが25.85KW使われている。一方、空調設備は一部に単相100Vのものもあるが、単相200Vのものもあり使用できない。また、発電機容量内での空調設備の稼働の適否も未検討であった。解決方法:超重症児者病棟20床を空調設備を稼働可能にする病棟と定め、検討を行った。空調設備として、三相200Vが12.49KW、単相200Vが16.50KW必要であった。その他、前述の三相200Vおよび単相100Vが必要であった。また、以上は安定動作時の消費電力であり、起動時などにはそれ以上の電力を必要とする。しかし、スコットトランスへの置換工事と、稼働手順さえ整備すれば、空調設備が稼働可能であることがわかった。その後:置換工事を行い、稼働手順のマニュアルを整備して、自家発電装置を用いた災害訓練を実施した。また自家発電の燃料タンクも増設。これにより約25時間の連続運転が可能となった。まとめ夏冬の長時間停電時でも利用者が体調を崩すことなく生活ができ、また、他病棟利用者の避難場所としても活用できるようになった。災害時における社会福祉施設の役割として、今後当施設は、被災した地域の障がい者等から頼られる緊急避難場所としても確たる役割を果たせるよう整備を進めたい。