著者
今田 見信
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.34-46, 1973-08-10
被引用文献数
1

小幡英之助が当事の専門医制度「口中科」をきらって「歯科」で試験をうけ「現代の歯科」の道を開いたことは偉大である.試験を受けたのは明治8年だから今年は98年目に当る.「口中科」をきらって「歯科」に訂正させて受けたという事実は,英之助の(1)信念の強さ, (2)押しの強烈さを示すものだが裏返すと新制度発布直後とはいえ,文部官僚の弱さを物語っておる.この時に英之助が制度通りの「口中科」で受験したとすれば,歯科の歴史も大きく変わっていると思う.わが国の歯科制度史にこのことを見逃してはならない.この稿では,旧制を押しのけ敢て破っていった硬骨小幡英之助の強い信念の"由来"を目標に,恩師達をみていきたい.特に佐野諒元については,これまでに発表しない史料がみつかったので,この機会に紹介することにした.