著者
角田 博明 仙北谷 由美 松岡 誠一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-17, 2002 (Released:2002-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

宇宙利用の活発化に伴い,宇宙で大きな構造物を構築する必要性が高くなってきている.宇宙インフレータブル構造は,複雑な展開機構やアクチュエータを使わず,大形な宇宙構造が構築できるため,近年注目を集めている.宇宙で展開したインフレータブル構造は,展開後に硬化させることにより,スペースデブリやメテオロイドによる損傷を防ぐことができる.インフレータブル構造の硬化層には,硬化前の状態で膜面の柔軟性を有し,常温で長期間の保管に耐えることが要求される.本論文では,繊維状に加工した熱可塑樹脂と強化繊維を使って織った織物を硬化層に使用した冷却硬化型インフレータブル構造を提案する.試験片を用いた実験から,樹脂の含浸に必要な温度と圧力を明らかにする.また,円筒状のインフレータブル構造を製作し,硬化実験を行った結果から硬化後に所定の構造物が得られることを示す.また,その供試体から切り出した試験片を分析し,樹脂の含浸状況やガラス繊維含有率を明らかにする.これらの検討の結果から,宇宙インフレータブル構造に対して熱可塑Co-Wovenを硬化層に用いることの技術的な実現性を示す.
著者
角田 博明 仙北谷 由美
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.19-26, 2002 (Released:2002-10-23)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

将来の移動体静止通信衛星では,これまでよりも大形な平面アンテナを軽量かつ高収納効率で実現する必要がある.しかしこれまでの平面アンテナは,大形化に伴い質量の顕著な増加や収納効率の低下などの問題がある.そこで,本論文では,軽量で柔軟性に富むアンテナ膜面をインフレータブル構造で支持する構成を取り上げた.平面アンテナ構造は,軽量化と柔軟な折り畳み性を目指して,PBO繊維を使った三軸織物複合材料を使ったメッシュ状の構造である.直径1.5 mの平面アンテナ構造を試作し,円環状のインフレータブル構造で支持した状態で面精度を測定した.インフレータブル構造は材質の異なる2種類を使い,内圧と面精度の関係を明らかにした.これより,折り畳みが可能で軽量な平面アンテナ構造の実現性の見通しが得られた.
著者
角田 博明 仙北谷 由美 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-16, 2003 (Released:2003-05-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

宇宙インフレータブル構造の硬化層は,未硬化状態で折り畳みを容易に行えるようにするとともに,軽量化を達成するために,積層せずに1層で構成するのが望ましい.本論文では,三軸織物を硬化層に適用し,1層で硬化層を構成する,軽量で柔軟性を有する硬化型の宇宙インフレータブル構造を提案する.硬化層を1層で構成すると,構造上必要な膜厚を確保するのが難しくなる.そこで,太い繊維を使って低織密度で織った三軸織物プリプレグを作り,これを硬化層に使うことで,1層で0.5~0.6 mmの膜厚の硬化層を実現する.硬化 させるための樹脂に熱硬化型ロングライフ樹脂を適用した長さ2 m・直径150 mmの円筒状のインフレータブル構造を試作し,構造特性測定実験を行うことにより,同様の仕様による二軸織物を使用したインフレータブル構造との構造特性の違いを明らかにする.また,本提案の硬化層を用いて試作した外径2100 mm・管径150 mmの円環状インフレータブル構造を熱風の導入により硬化させ,折り畳みの柔軟性を有するインフレータブル構造に対して硬化方法の妥当性を示す.
著者
角田 博明 仙北谷 由美
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.17-18, 2003 (Released:2003-05-27)
参考文献数
2

加熱硬化型の宇宙インフレータブル構造は硬化時に,また熱可塑樹脂を用いた冷却硬化型では樹脂溶融時に加熱する必要があるため,電力などのエネルギが必要である.これに対して,紫外線硬化型の宇宙インフレータブル構造は,太陽光の照射による硬化が可能なので,大形な宇宙インフレータブル構造を電力等のエネルギを使わずに硬化させることができる.しかし,紫外線硬化型では太陽光のスペクトラムのうち250〜380 nmの波長を利用しているに過ぎず,紫外線以外の波長領域を利用できれば,硬化を効率良く行うことができる.本稿では,太陽光スペクトラムの中で,紫外線より放射照度が大きな波長域(380 nm以上の可視光線)を使って硬化させる光硬化型の膜材料について,試験片による硬化実験から硬化特性を明らかにする.