- 著者
-
荒田 玲子
仙土 玲子
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
- 巻号頁・発行日
- pp.13, 2016 (Released:2016-08-28)
【目的】茨城県の家庭料理を調査する中で、茨城県太平洋沿岸の鉾田市、鹿嶋市、神栖市で昭和30年代に食され、その主材料が入手困難になったり、高価な食材になっても、食べ継がれているイルカ料理と、背黒イワシやサンマで作られるごさい漬けについて、現在の調理法、食べられ方について聞き取り、その調理法と食べられ方を明らかにすることをこの調査の目的とした。【方法】イルカ料理を現在も作り食べている鹿嶋市のHさん、神栖市のIさんにその調理法と食べ方について聞き取りを行う。また、調理をしていただき、写真と筆記で記録する。ごさい漬けに関しても、昔から現在までの調理法と食べられ方についてYさんとIさんに聞き取り調査を行う。また、この地域のスーパーで品揃えを調査し聞き取りも行う。【結果】イルカは現在茨城県沖では漁が行われておらず、冬になるとこの地域の店に並ぶイルカは、『岩手産のいしいるか』であった。味には癖があり、他の肉類より高価で入荷も限られる。イルカ料理の愛好者は年配者に多く、入荷するとあっという間になくなるとの事である。脂肪の層と赤身の層が一層ずつの独特の肉をキューブ状に切り、血抜きをして、牛蒡などと一緒に砂糖と醤油で煮込む方法は素朴で長年の食経験と調理経験に裏付けられた合理的なものであった。ごさい漬けは、昭和30年頃豊富に漁獲した背黒イワシを秋の終わりに大根と共に漬けこみ、正月に食べたものであったが、背黒イワシが手に入りにくくなり、主材料を秋刀魚などに変えて作ったり、昔ほど食塩を多く使わなくなり、本年の冬のように暖冬だと、低塩では上手く保存して発酵させることが難しくなってきているようである。食環境の変化が、料理の形を変えていき、否応なく変化し、廃れていく料理があるという例を見たように思う。