著者
仲地 正人
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.9, 2004

【はじめに】<BR> 当センターでは脳性麻痺児に対する下肢痙性減弱の目的で機能的脊髄後根切断術(以下、FPR)に注目し2001年より導入した。2003年8月までに県立那覇病院で21例の児にFPRが実施された。今回、FPRを受けた児の保護者に対しFPRの満足度、術前・後の変化点の認識および感想についてアンケート調査し若干の知見が得られたので発表する。<BR>【対象】<BR> 当センターで理学療法を受けている入所、通所、外来児でFPRを受けた児21例(男児11例、女児10例)。タイプ別では痙直型16例、混合型5例であった。手術時の年令は3歳3ヶ月から8歳(平均61.9±19.3ヶ月)であった。術後期間は3ヶ月から35ヶ月(平均13±9.7ヶ月)であった。GMFCSによる分類ではレベル1が3例、レベル3が3例、レベル4が11例、レベル5が4例であった。<BR>【方法】<BR> アンケートは術前・後の変化点、FPRに対する感想について空欄への記入式とし満足度については選択式にしてその理由を記入してもらった。またGMFCSに基づいてレベル分類を行い各レベルにおける運動機能の改善点を列挙した。<BR>【結果】<BR>1,手術を受けて良かった点としてGMFCS別でレベル1群では立位、歩行、階段昇降でのバランス向上、レベル3群では坐位・立位姿勢の安定、歩行補助具を用いた歩行の安定性向上、レベル4群では寝返り・起き上がり動作の円滑性、座位の安定性向上、レベル5群では背・腹臥位、座位がリラックスして行える事に満足している傾向にあった<BR>2,その他の良かった点として股関節の痛み、衣服の着脱、上肢の操作性、口腔機能、発声・発語、睡眠中の姿勢、排尿・排便、感覚などにも改善が得られ満足している傾向にあった<br>3,手術を受けて悪かった点 痙直型1例にバニーホッピング時に股関節が過外転位となり移動速度が低下した。痙直型1例に術後1年で尖足が再発している。混合型1例にATNR出現時に体幹の反り返りが目立つようになった。<BR>混合型1例に下肢に軽度の不随意運動が増加した。尿・便失禁が生じたが術後6ヶ月時より改善した。<br>4,術後に生じたその他の変化点 痙直型1例に足の血色が良くなり発汗が多く見られるようになった。痙直型1例に触感覚が敏感になりカーテンなどが足に触れると大笑いするようになった。5,手術を受けての満足度では21例中、6例(29%)が大変満足、13例(61%)が満足、2例(10%)がどちらとも言えない、不満は0%であった。<BR>6,FPRを受けての感想では術前出来なかった動作が術後可能になり本人に自信が付いた、何でも自分でやろうとするようになった、姿勢や表情が良くなっているということが挙げられた。<BR>【考察】<BR> 今回、FPRに対し「大変満足している」あるいは「満足している」と答えた保護者は19例で全体の90%%にあたり満足している点は術前すでに獲得していた動作の円滑性や姿勢の安定性向上、術前には出来なかった事や見られなかった事が術後可能となった事であった。「どちらともいえない」と答えた保護者は2例10%でその理由は痙直型では術後一年で尖足が再発している。混合型ではATNR時に体幹の反り返りが目立つようになったであったが痙直型では寝返り・肘這い動作がスムーズになった、箸、スプーン、書字動作が向上した。混合型では股関節を痛がるしぐさが無くなった、物を触ろうとする動きが増えた、喃語が多くなった、リラックスして眠れるようになったなどの改善点もあり手術を受けて良かった点と悪かった点を相殺することでこの様な回答となっていると考えられる。手術を受けて悪かった点としては痙直型2例でバニーホッピングでの移動速度の低下、術後1年で尖足が再発した、混合型2例でATNR出現時に体幹の反り返りが目立つ様になった、下肢に軽度の不随意運動の増加が見られた事が挙げられた。<BR>【まとめ】<BR>1,FPRに対する親の満足度を調査した。<BR>2,FPRを受けた21例中19例(90%)で満足している傾向にあった。<BR>3,手術を受けて良かった点として動作の円滑性や姿勢の安定性向上、二次的効果として股関節の痛み、衣服の着脱、上肢の操作性、発声・発語、口腔機能、排尿・排便、感覚等にも改善が得られ満足している事がわかった。<BR>4,手術を受けて悪かった点として痙直型2例にバニーホッピングで移動速度が遅くなった、術後1年で尖足が再発した。混合型2例にATNR出現時に体幹の反り返りが目立つようになった、下肢に軽度の不随意運動が増加した。
著者
比屋根 直美 赤嶺 大志 宮城 淳 溝田 弘美 又吉 清子 運天 智子 仲地 正人 渡慶次 賀寿 新里 真由実 大城 由美子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.76, 2003

2000年11月から2002年11月までに10名の脳性麻痺児に対して機能的脊髄後根切断術を実施した。タイプは痙直型両麻痺9名、混合型四肢麻痺1名。股関節亜脱臼は3名4股、術前運動機能は臥位1名、這い這い3名、バニーホッピング2名、四つ這い3名、独歩1名、術後期間は平均14.6ヶ月であった。術前後で痙性の程度(Ashworth scale)・関節可動域・粗大運動能力尺度・Migration Percentage(MP)を評価し、独歩例は観察による歩行分析を行った。<BR>下肢の痙性は、Ashworth scaleの平均でみると全症例で軽減しており、術後1年以上経過している5名も維持されている。関節可動域は、股関節外転8名、伸展5名、膝窩角5名に改善がみられ、足関節背屈はfast stretchでは全例改善しているが、最大可動域では3名で改善し、過背屈はなかった。粗大運動能力尺度は術後1_から_3ヶ月は低下することもあるが、多くは3_から_6ヶ月で術前の状況に回復、もしくは若干の伸びがみられた。MP50%以上の股関節亜脱臼は術後2名2股になった。独歩可能な1名の術前後の歩行を比較すると、尖足歩行は残っているものの膝・足関節の動的関節可動域は改善し、歩幅が大きくなった。