著者
仲村 真里奈
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.95-116, 2015

本稿は日本語教育実習を通して課題となった訂正フィードバックを,アップテイクという学習者の反応の視点から考察し,効果的な訂正フィードバックを学習者に与えることを主眼としたアクションリサーチである。筆者は秋実習と冬実習での授業を通して,自分自身の訂正フィードバックの有効性に疑問を感じた。そこで春実習では訂正フィードバックを積極的に与えることを心がけ,その結果をアップテイクという立場から分析した。その結果,訂正フィードバックとして誘導を行った場合,学習者が最も多く自己訂正をすることが分かった。それに対し,訂正フィードバックとしてリキャストを行った場合,学習者のエラーは訂正されることが少なかった。さらにリキャストの後に,学習者が反応を示さない場合も多かった。また筆者の訂正フィードバックに作用する要因は,筆者の精神的・時間的余裕の有無だということが明らかになった。筆者は精神的・時間的余裕がない場合に焦りを覚え,訂正フィードバックをしている間エラーを起こした学習者以外の学習者が「暇」になっているのではないかと考えていた。そこで時間短縮を図る目的でリキャストなどの訂正フィードバックを行い,結果としてニーズリペアやアップテイクなしにつながっていることが判明した。筆者は春実習を終えて,訂正フィードバックはエラーを起こした学習者のみのものではなく,学習者全体での学びとして共有されるべきものだと考えるようになった。