著者
平田 友香
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-66, 2015-09-30 (Released:2017-12-08)

本稿は,筆者の在籍する大学院のリカレント教育で行われた日本語教育実習を通して,筆者が行ったタスクベース授業の改善を目指したアクション・リサーチの報告である。筆者は,過去の日本語教授経験で取り組んだプロジェクト型タスクベース授業において,タスクの進め方と,文法・文型の取り扱いに問題を感じていた。その後,日本語教育現場を離れ,大学院でLearner-Centredなどの理論背景について学び,日本語教授経験を振り返り,教育実習では,タスクベース授業における筆者の課題の改善を試みた。これは,アクション・リサーチの形で,タスクベース授業における教師の役割について理解を深め,タスクの進め方や,フィードバックなど様々な問題点の改善に取り組んだ。そこで,授業という限られた時間でタスクを完了させるために,教師は様々な役割を担い,学習者をサポートする必要があることがわかった。文法・文型指導においては,筆者のビリーフが大きく影響していることに気づいた。また,タスクを進める上で,Learner-Centredの考えも影響することに気づいた。実習を通して得たこれらの気づきを基に,改善案を提示し,今後の課題とした。
著者
平田 友香
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-66, 2015

本稿は,筆者の在籍する大学院のリカレント教育で行われた日本語教育実習を通して,筆者が行ったタスクベース授業の改善を目指したアクション・リサーチの報告である。筆者は,過去の日本語教授経験で取り組んだプロジェクト型タスクベース授業において,タスクの進め方と,文法・文型の取り扱いに問題を感じていた。その後,日本語教育現場を離れ,大学院でLearner-Centredなどの理論背景について学び,日本語教授経験を振り返り,教育実習では,タスクベース授業における筆者の課題の改善を試みた。これは,アクション・リサーチの形で,タスクベース授業における教師の役割について理解を深め,タスクの進め方や,フィードバックなど様々な問題点の改善に取り組んだ。そこで,授業という限られた時間でタスクを完了させるために,教師は様々な役割を担い,学習者をサポートする必要があることがわかった。文法・文型指導においては,筆者のビリーフが大きく影響していることに気づいた。また,タスクを進める上で,Learner-Centredの考えも影響することに気づいた。実習を通して得たこれらの気づきを基に,改善案を提示し,今後の課題とした。
著者
陳 良慶
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.206-230, 2012

筆者は、国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域在学中に3学期に亘って教育実習を体験した。日本語母語話者の実習生とともに実習を行い、同じ授業内容を担当したが、非日本語母語話者である筆者は文法や発音の間違いをしばしば指摘され、教えることをあきらめかけた時もあった。しかし、海外教育実習で、母語を使って同じ母語の学習者に文法を指導した際、学習者からもらった感謝の言葉で、今まで気づかなかった非母語話者日本語教師の利点に気づいた。因って、本稿では、非母語話者教師の利点について述べることにした。更に、自己評価を通して、そうした利点が十分発揮できたかどうか自己点検し、非母語話者日本語教師の養成について述べる。
著者
橋本 有貴
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.88-114, 2019 (Released:2019-10-07)

本稿は国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域(以下,本大学院)の3期にわたる実習を通して筆者が行ったアクション・リサーチの報告である。本稿の考察は学習者から「もっといろいろなことを学びたかった」という授業内容に関する不満の声を得たことから始まる。そして主に春実習の振り返りを通し,学習者の学習ニーズを把握し授業に反映させることができていたかについて検証した。さらに様々な制約により授業にニーズを反映させることができない場合の教師の役割の1つとして学習内容の意義付けについても検討した。その結果をもとに,学習者のニーズをどのように授業に反映させるか,また,反映できない場合の教師の対応について考察する。
著者
蔡 欣芳
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.147-171, 2015

筆者は国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域在学中,日本語母語話者の実習生とともに,3期にわたる教育実習を行った。本稿では,3期にわたる教育実習を振り返り,自分自身の第二言語不安要素について考察した。その結果,筆者は1)媒介語使用,2)予想外の質問,3)発音,4)自分の文法が正しく使えているか,5)学習者に信頼してもらえるかどうかという5つの点で不安があることが分かった。だが,自分自身の不安を振り返ることで,その変化を見ることもできた。最後に,振り返りから出てきた今後の課題を述べ,非日本語母語話者の教員養成について提案を試みる。
著者
内田 梨沙
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.172-199, 2015

本稿では,大学院での3期にわたる日本語教育実習を振り返り,クラス内での学習者の発話量を増やすために筆者が取り組んだアクション・リサーチについて報告する。秋実習および冬実習を振り返り,筆者の問題点が学習者とのインターアクションおよび訂正フィードバックの方法にあり,それにより学習者の発話の機会を奪ってしまっていたことがわかった。また,冬実習では学習者間の発話量の偏りも生じてしまっていた。その反省から春実習の課題として,学習者の発話機会を増やすために筆者のインターアクションおよび訂正フィードバックの改善を試みた。分析の結果,インターアクション,訂正フィードバックに関して一定の改善は見られたものの,学習者間の発話量の偏りをなくすことはできなかった。また新たに,レベル差のあるクラスで,レベルの低い学習者や消極的な学習者にどのように発話の機会を与えるかという課題も見つかった。今後は各学習者の能力、性格などにも配慮して指名するなどの改善が必要であるとわかった。
著者
仲村 真里奈
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.95-116, 2015

本稿は日本語教育実習を通して課題となった訂正フィードバックを,アップテイクという学習者の反応の視点から考察し,効果的な訂正フィードバックを学習者に与えることを主眼としたアクションリサーチである。筆者は秋実習と冬実習での授業を通して,自分自身の訂正フィードバックの有効性に疑問を感じた。そこで春実習では訂正フィードバックを積極的に与えることを心がけ,その結果をアップテイクという立場から分析した。その結果,訂正フィードバックとして誘導を行った場合,学習者が最も多く自己訂正をすることが分かった。それに対し,訂正フィードバックとしてリキャストを行った場合,学習者のエラーは訂正されることが少なかった。さらにリキャストの後に,学習者が反応を示さない場合も多かった。また筆者の訂正フィードバックに作用する要因は,筆者の精神的・時間的余裕の有無だということが明らかになった。筆者は精神的・時間的余裕がない場合に焦りを覚え,訂正フィードバックをしている間エラーを起こした学習者以外の学習者が「暇」になっているのではないかと考えていた。そこで時間短縮を図る目的でリキャストなどの訂正フィードバックを行い,結果としてニーズリペアやアップテイクなしにつながっていることが判明した。筆者は春実習を終えて,訂正フィードバックはエラーを起こした学習者のみのものではなく,学習者全体での学びとして共有されるべきものだと考えるようになった。
著者
中田 聖子
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.117-146, 2015

本稿は実習を通して筆者が行ったアクション・リサーチの報告である。筆者は過去に自らコースデザインを行い実施した日本語コースを省察し,コースデザインのためのニーズ分析が不十分であったことに気づいた。そこで,学習者のニーズを反映したコースデザインという実習課題を設定した。先行研究から得た知見をもとに「ITビジネスマンのための日本語コース」のコースデザインを行い,実習を行った。実習期間中,形成的ニーズ分析によって学習者のニーズを把握し直し,コースデザイン調整を行った。実習後,コースデザイン調整が学習者のニーズを反映していたか検証と考察を行った。その結果,一部の調整は学習者の気づきや自信醸成を促したことがわかった。しかし,内容や調整自体が不適切または一部の学習者にしか有効ではなかった調整があったこともわかった。
著者
三沢 萌夏
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.266-300, 2012

本稿では、筆者が本学大学院での日本語教育実習を通じてLearner-Centredにおける教師の役割をどのように捉え、実践を試みてきたかについて記述する。筆者は、秋、冬、春の3回にわたる教育実習の中で、Learner-Centredの教育において「教師はどこまで学習者の学びに介入するべきか」という問題を抱えてきた。秋実習、冬実習では、活動形態や質問の質に着目して実習に取り組んだが、思うように成果が得られなかった。そのため、授業スキルにとどまらず、更にLearner-Centredを概念的に捉え直し、教師の役割について考察する必要があるのではないか、と考えた。本稿では、Learner-Centredと、その究極の形であると言えるLearner Autonomy、また、春実習で取り上げた形態であるCooperative Learningの3つの観点から支援者としての教師の役割について示した後、春実習で行ったグループ活動への筆者の介入を検証し、授業改善に向けた提案を述べる。
著者
神田 義太
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.107-144, 2012

筆者は、専門職大学院日本語教育実践領域修士課程において、3学期にわたり教育実習を行ない、その過程でアクション・リサーチを実施した。岐阜方言を母語とする筆者は、アクセントに問題があることに気付き、共通語アクセントの習得を目指した。この取り組みの中で、岐阜方言と共通語との間に、単語レベルでのアクセントの違いはもちろんのこと、文型の違いがアクセントのずれに大きく影響していることが分かった。例えば、打ち消し表現「-ない」は、岐阜方言では「-ヘン」や「-ン」となり、同様に「-ないで」「-なければ」などの文型はほどんど用いない。そのため、筆者の発話内において、これらの文型でのアクセントの間違いが多かった。したがって、アクセントの問題は、単に、単語レベルのアクセントの差異の問題ではなく、方言による文型および表現の違いも影響していることが分かった。また、今後もアクセント習得を進めるにあたって、やるべき練習の内容が具体的に見えてきた。
著者
小林 礼奈
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-69, 2014

本稿では,筆者の在籍する大学院修士課程の2 年次に行われた3 学期にわたる日本語教育実習(秋実習・冬実習・春実習)を通して筆者が行ったアクション・リサーチについて報告する。筆者は,秋実習及び冬実習を振り返り,「学習者の発話量」や「フィードバック」に関する問題点について考察を行う過程で,学習者の口頭表現能力の向上にそれらの要素がどのように貢献しているのかという根本的な疑問を抱き始めた。そのような考えから口頭表現能力を重視した教授法に関する先行研究を調べた結果,学習者の言語的挫折を誘発し,そこに適切な表現を導入する「タスク先行型ロールプレイ」が口頭表現能力を伸ばすために有効な手段であるのではないかと考えた。よって,その実施を春実習の課題とし,春実習では「学習者のレベル把握」「ロールプレイのタスク設定」「フィードバック」を意識したタスク先行型ロールプレイを行った。実施の結果,言語的挫折の誘発やフィードバックが適切に行われた例も見られ,学習者の口頭表現能力にもポジティブな変化が見られた。しかし,考察の結果,今回実施したタスク活動に関する問題点がいくつか挙げられたため,その問題点に対する改善案の提示を行い,今後の課題とした。
著者
滝 麻衣
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.117, 2018 (Released:2018-10-08)

本稿は,筆者が参加した日本語教育実習で,プレゼンテーションに向けて行った協働学習について検証したアクションリサーチである。筆者は,学習者間での学び合いを促すため,ファシリテータとして指導することを目指した。本稿では,プレゼンテーションに必要な指導を行えていたのか,また協働学習を促せていたのかを検証した。結果として,学習者のレベルや協働学習に関する経験の把握,活動目的の具体化が不十分であり,活動への介入度の高さや活動の時間設定に問題があったことが明らかとなった。しかし,これらの問題があったにも関わらず,チームティーチングでの指導や授業外での作業を増やしたことで,学習者の発表は予想よりよいものになった。今後一人で指導する際には,レベル差や学習者の人数が多いクラスの場合,今回のように指導するのは困難である。そのため,明らかとなった問題点を改善し,より効果的な協働学習が行えることを目指す。
著者
亀田 友花
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.43, 2018 (Released:2018-10-08)

本稿は,筆者が行ったロールプレイ授業を検証したアクションリサーチペーパーである。筆者は2018年1月に行われた実習でロールプレイ授業を担当し,円滑に進めることができた。しかし,実習後にそれは多くの学習者にとって簡単な内容だったためではないかという疑問が生まれた。クラスには様々な日本語レベルの学習者がいたが,レベルの低い学習者に合わせた授業を行ってしまっていたのである。そのため,2018年3月に行った実習ではすべての学習者にとって少し難しい内容のロールプレイ授業を行うことを目指した。そして,その方法として「タスク先行型ロールプレイ」を実施した。しかし,結果としてレベルの高い学習者にとっては簡単な授業になってしまったのではないかという思いが残った。本稿では,JFスタンダードの基準を用いてこの実習のロールプレイ授業が学習者のレベルに対応していたのか検証した。その結果,筆者のレベル把握に問題があったことがわかった。そして,タスクの選び方やロールカードの作成方法,学習者のロールプレイ後のフィードバックなどの改善点が明らかとなった。
著者
三浦 もと子
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.250-265, 2012

筆者は、大学院で三度の日本語教育実習を経験し、その過程で改善を必要とする多くの課題を発見した。本稿では、その中でも特に、筆者がおこなったタスクベースの授業について取り上げる。先行研究文献を参考に、自分の授業を振り返ると、筆者の授業では、学習者のコミュニケーション能力を伸ばすことを意図しながらも、タスクベースの授業の特徴を十分に活かしきれていなかったこと、メインタスク(本作業)の前に行う準備やタスク後のフィードバックが疎かになっていたこと、学習者に自らのパフォーマンスに意識を向け、自己修正をおこなう機会を提供していなかったことなどが明らかになった。これらの課題を改善する方法を考え、今後タスクベースの授業を行う際に意識すべき点をまとめる。
著者
工藤 優
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.84-100, 2013-09-30 (Released:2017-12-08)

本稿は,教育実習を通して課題となった訂正フィードバックについて論述する。秋実習と冬実習の反省から,春実習は,インターアクションを行いながら誤用の訂正が可能な暗示的フィードバックを効果的に行うことを目標とした。その結果,コミュニケーションの流れを中断せずに学習者とインターアクションを実現することができた。その一方で,筆者の訂正に学習者が気付かない,または気付いても正用を認識していない例などがみられた。改善案として,声のトーンを変えたり,明示的フィードバックを使用したりすることで,より効果的な訂正フィードバックが与えられると考えた。また,リキャスト以外にも,誤用の部分を教師が繰り返すことで誤りに気付かせる方法や,学習者の誤用をプリントにまとめたクラスフィードバックも有効であることが分かった。
著者
荒井 美帆
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.38-64, 2019 (Released:2019-10-07)

本稿は,JFL環境における思考力向上を狙った文化授業を考察するものである。筆者は日本国内の予備教育機関において,数年間日本語教育に携わった経験があるが,文化授業を受け持ったことはなかった。筆者が在籍する大学院の日本語教育実習において初めて文化授業を担当したことにより,これまでJFL環境における日本語教育の意義を真摯に考えたことがなかったこと,文化を教える際に必要となる視点が欠けていたこと,学習者の思考力向上を意識した学習目標を設定していなかったことに気がついた。そこで,先行研究からこれら3つの問題点を整理し,文化授業の改善案を提案することにした。文化授業を行う際に必要な視点には久保田(2008)が提唱する4Dアプローチを取り入れ,思考力向上を目指した学習目標のフレームワークにはCLIL(Content and Language Integrated Learning)の特徴である4Cを用いた。
著者
和田 結希
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.115-145, 2019 (Released:2019-10-07)

国際教養大学専門職大学院日本語教育実践領域で秋から春にかけて実施される3つの異なる教育実習では,具体的なコミュニケーション場面における実践的な口頭運用能力の向上を目標とした日本語の指導が奨励されている。本稿では「発話につながるわかりやすい授業とは何か」という問いに答えるため,これらの実習を通じて筆者が行ってきた教育実践を「認知的複雑さ」という観点から振り返る。筆者は秋と冬に行った2つの実習から得た気づきを基に,最後の実習では「一般的にわかりやすい授業=認知的に単純な授業」と仮定し,認知的複雑さを調節する指標を作成した後,教案作成を行った。実習後,そうした取り組みが本当に認知的に単純な授業になっていたのか,また実際に学習者の発話量に差は見られたのか学習者からのフィードバックやビデオ等を資料として検証した。その結果,学習者にとってわかりにくく話しにくい授業があったことが判明し,そのわかりにくさ・話しにくさが活動に必要な手順の不明瞭性や先行知識の不十分な提供に起因することが明らかになった。
著者
張 雨潔
出版者
公立大学法人 国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域
雑誌
国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科日本語教育実践領域実習報告論文集 (ISSN:21853983)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.65-87, 2019 (Released:2019-10-07)

本稿は筆者が教育実習で学習者の沈黙について検証を行ったアクションリサーチである。筆者は3期にわたる教育実習を振り返り, 実習中に録画された授業のビデオを観察した結果から, 冬・春実習において授業中の学習者の沈黙が多いことに気づいたと同時に, 学習者の沈黙に対して大きな不安とストレスも感じた。そのため, 録画されたビデオにおける筆者の発話を分析しつつ, 学習者の沈黙が起こった原因をさらに探っていくと, 筆者の質問に一貫性がないこと, 終始同じ質問を繰り返すことや説明不足のままで活動が行われることなどがわかった。また, 筆者の心理的な不安で学習者の回答を待たないこともわかった。本稿では, 授業で起こった沈黙の分析を通して問題点の理由と改善案を提示する。