著者
任 〓樹
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.27-43, 2004-03-31 (Released:2017-04-29)
被引用文献数
1

本稿の目的は,日本語と韓国語の断り談話においてポジティブ・ポライトネス・ストラテジーがどのように現れるかを明らかにすることにある.ロールプレイ調査から得られた資料を基にして,ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーを「量的・質的差異」「ウチ・ソト・ヨソによる差異」「男女差」という観点から分析した結果,以下のことが検証された.(1)ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの量は,日本語より韓国語のほうが多い.(2)ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの質に関しては,日本語より韓国語のほうが相手のポジティブ・フェイスを重んじる表現が多用される.(3)日本語に見られるポジティブ・ポライトネス・ストラテジーは「ウチ・ソト・ヨソ」という3つの区切りをもつのに対して,韓国語に見られるそれは「ウチ・ソト・ヨソ」という3分類には従わない.(4)ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの男女差は,韓国語より日本語のほうが顕著である.