著者
伊波 茂雄
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.265, 1977-04-15

11月24日那覇市内で,琉大保健学部宮城一郎教授を学会長とする第29回日木寄生虫学会南日本支部大会で,沖縄県公害・衛生研究所の安里龍二氏は,アフリカマイマイやナメクジなどに宿る広東住血線虫の感染経路等について発表した. その発表によると,昭和45年以降,これまでに見つかった広東住血線虫症患者は11人で,内訳は,経口感染6例,経皮感染1例,不明4例となっている.経口感染した6例はいずれも「ナメクジを食べたら喘息が治る」「アフリカマイマイは腎臓病に効く」などの言い伝えを信じて,生で食べたケースであり,このうちアシヒダナメクジを食べたのが3人,アフリカマイマイ1人,カエルを食べたのが2人いた.感染ルート不明4例があるのに注目し,従来の感染ルート以外のルートについて研究したところ,アフリカマイマイの場合,それ自身を傷つけない限り広東住血線虫がわき出すにとはないが,ナメクジでは死後数時間以内に同虫がわき始め,24時間後には感染幼虫の半数以上がわき出すことがわかった.このことから,野菜に付着したままナメクジが死ぬと,わき出した同虫が生野菜に付着し,それを生で食べることによって,人間に感染する可能性があると考えられる.また,広東住血線虫は水中でも9日間は生存し,生水を飲んでも感染することがありうると発表した.