著者
井上 義郷
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.22, no.12, pp.667-672, 1958-12-15

I.ゴキブリの害虫化について ゴキブリは俗にアブラムシとも呼ばれ,直翅目,ゴキブリ亜目に属し,わが国に分布を記録されているその種類は,琉球,小笠原諸島のものまで含めますと5科22種となります。そのうちの大部分の種類は野外に棲息しているもので,われわれの生活と直接的な関係をもちません。事実上衛生害虫として問題となる種類は,ビルの事務室や飲食店などで広く見かけられる黄褐色で小型のチヤバネゴキブリと一般家庭の台所に多い黒褐色の大型の種類です。これには2種類あつて関東以南に主な分布を示すクロゴキブリと,関西から北で秋田県附近まで知られているヤマトゴキブリです。なお,地域によつてはワモンゴキブリも注意さるべき種類となります。 これらのゴキブリは,いままで,衛生害虫として一般にはあまり問題とされていなかつたものですが,最近,非常に注目されるようになつてきました。特に,近代的な設備を具えた都市のビルや鉄筋アパートでは,ハエや蚊よりも,むしろ,このゴキブリが重要な害虫として登場してきております。その問題点を,まずはじめに,考察することが駆除対策を立てる上に重要だと考えられます。
著者
調 恒明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.37-42, 2016-01-15

地方衛生研究所は保健所と異なり,地域保健法そのものには規定されておらず,厚生労働省が発出した設置要綱でその役割が示されている.厚生労働省が策定する「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」および各種の特定感染症予防指針などに地方衛生研究所の果たす役割が明確に規定されていることから,厚生労働省は地方自治体に地方衛生研究所が機能していることを前提として施策を決定していることは明らかである. 一方,地方自治体には地方衛生研究所の法的設置義務はなく,業務内容に関する法規定がないため基本的に地方衛生研究所のあり方は自治体の裁量に委ねられている.法的縛りがなく,財政を担当する行政職員にとって重要性が分かりにくい地方衛生研究所は,近年の地方分権と地方自治体の予算の困窮により,人員,予算削減のターゲットとなっており,本来備えるべき検査機能さえ維持することが危ぶまれる自治体も存在すると思われる.
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.447-458, 1962-08-15

緒方正規先生に師事 編集部 どうもお忙しいところをありがとうございます,今まて石原先生,及川先生等の名誉会員の先生のお話を伺って参りましたが,きょうは松村先生に,いろいろ先生のご経験あるいはご意見をお伺いしたいと思います。先生が大学を卒業されましたのは,大正5年ですか。 松村 そうです。
著者
江部 康二
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.743-748, 2016-10-15

従来の糖尿病食(エネルギー制限・高糖質食)は糖尿病を増加させる—久山町研究 久山町は,福岡市の東に隣接する,人口8,000人足らずの町である.1961年から九州大学医学部が,ずっと継続して40歳以上の全住民を対象に研究を続けている.5年に一度の健康診断の受診率は約80%で,他の市町村に比し高率である.また,死後の剖検率も82%の住民において実施されていて,精度の高い研究の支えとなっている. 1961年当時,日本の脳卒中死亡率は非常に高く問題となっていたが,久山町の研究により,高血圧が脳出血の最大の原因であることが判明した.それを受けて,食事の減塩指導や降圧剤の服用で血圧のコントロールを行ったところ,久山町の脳卒中は1970年代には3分の1に激減した.
著者
神馬 征峰
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.853-858, 2016-11-15

密輸業者ナスレディンの秘密 ナスレディンの稼業は密輸業.毎日夕方になるとロバに乗って税関所を通る.税関検査官はナスレディンがまた悪さをしていると思い,吊り籠の中をくまなく調べる.しかしみつかるのはいつも藁だけ.何年も何年も繰り返し調べても,何もでてこない.ナスレディンといえば,どんどん金持ちになっていく.何か密輸しているのに違いないのだ. やがてナスレディンも年をとり,密輸から足を洗う.そんなある日のこと,たまたま退職した例の税関検査官とばったり出会ってしまった.
著者
本橋 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.358-362, 2005-05-01

自殺予防運動の進め方 自殺予防の問題が公衆衛生学の課題として社会的に論じられるようになったのは,決して古いことではない.わが国で本格的に自殺予防が国のプログラムとして認められたのは,2000年に開始された健康日本21においてである.その後,秋田県,青森県,岩手県,鹿児島県などで,メンタルヘルスの観点から地域の自殺予防活動が活発に展開されるようになった.このことは,わが国において,公衆衛生活動としての自殺予防対策が動き始めたと言うことができる. 一方,2004年9月にWHOは次のようなメッセージを世界に向けて発信した1).「自殺は大きな,しかしその大半が予防可能な公衆衛生上の問題である.自殺は暴力による死の約半分を占め,毎年約100万人以上の死亡原因となっており,何十億ドルもの経済的損失をもたらしている」.心の問題は個人の問題であり,行政が介入すべきでないというような意見が唱えられやすいのであるが,WHOは明快に自殺を「公衆衛生学の問題である」と断言したのである.21世紀における公衆衛生学的課題としての自殺予防対策が,国際的にも十分に認知されたと言うことができる2).
著者
和田 耕治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.288-292, 2020-05-15

【ポイント】◆2020年東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)に関する主な健康リスクは感染症と熱中症であり,医療体制の整備が求められる.◆大会の開催地だけでなく,ホストタウンやキャンプ地も含めた全国的な対策が求められる.◆大会を乗り越えるだけでなく,その後にもレガシー(遺産)として残るような取り組みが求められる.
著者
加納 和彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.58-63, 2018-01-15

はじめに わが国の感染症サーベイランスはNational Epidemiological Surveillance of Infectious Disease(NESID)と呼ばれる電子システムを介して行われている.「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づいて,感染症を診断した医療機関は所定の届出様式1)にしたがって保健所へ感染症の発生報告を行う.保健所は届出データをNESIDシステムに登録し,中央および地方の感染症情報センターは登録データの確認と集計,および情報の還元を行っている.1999年以降,感染症法に基づいて報告された全数把握対象疾患の症例報告数は,2016年までで51万件以上に達している(図1)2). 症例報告の個票データにはさまざまな項目があり,年齢・性別などの患者に関する情報や,診断した医療機関,診断日,推定感染地域のように全疾患に共通した項目の他,後天性免疫不全症候群の届出におけるAIDS診断の指標疾患や,麻しん・風しんにおける予防接種歴の情報など疾患固有の項目が含まれる.また,データ形式には選択肢から選ぶものや,推定感染源欄や備考欄のように自由にテキストを入力するものがある.これらの膨大で多様なデータが一元的にデータベースに登録されていることと,さらに近年はコンピューターによるデータ処理技術が向上していることから,収集されたデータを機械的に分析し,公衆衛生の向上に役立つ情報へと変換する手法・ツールの開発の必要性が増してきている. 本稿では,①届出の自由記述テキストデータを活用した解析の試み,②現在,開発中の感染症サーベイランスのための新しいツール,さらに③海外の進んだサーベイランスシステムや関連ツールについて述べる.
著者
斎藤 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.481, 1973-07-15

発端 昭和48年4月天然痘事件の発端は,3月31日午後3時管内の東京逓信病院から,3月26日から同院に入院中の郵政省職員のK氏(33歳,男)が,天然痘の疑いがあるという届出をうけた.届出によると同氏はバングラディシュに約1ヵ月滞在し,3月18日に帰国,23日に発病し26日に受診入院したという.主症状は発熱と発疹で,現在の疹の状況,前駆疹の存在などからして,天然痘の疑いは極めて濃いと判断された.
著者
尾身 茂
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.338-341, 2008-05-15

平成20年2月29日に開催された「与党(自民党・公明党)鳥由来新型インフルエンザ対策に関するプロジェクトチーム」に招かれて講演をする機会を頂いた.このため,今回は「健康と文明」のテーマを中断し,この内容について述べよう. まず,パンデミックの危険性に対するWHOの状況分析について述べた.
著者
岩田 健太郎
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.652-657, 2010-08-15

2009年からのパンデミックインフルエンザ(H1N1)対策について,他国との関連性,という観点から検証することを編集部から求められたので,そうしてみる.と言っても世界中で流行したインフルエンザのすべての国の対策を網羅し,これを日本のそれと比較するのは筆者の力量では到底不可能だし,またその意義も小さい. そこで,本稿の目的は日本を外からのまなざしで見つめ直すこと,としたい.日本における新型インフルエンザ対策はどこまで妥当だったのか,検証する.その目的に照らし合わせる.内部から内部を検証するのは容易ではない.検証には通常「他者の目」を必要とする.他者の眼差しが,我のあり方に有用な,参考になる見解を与えてくれるのである.透徹した厳しい眼差しを与えてくれる.自己が自己を見る目は「甘ったれた目」なのである.
著者
岩田 健太郎
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.538-541, 2003-07