著者
岡田 長保 住田 良夫 高島 康治 田中 徳太郎 明石 善久 大橋 高明 伊藤 一夫 絵野 幸二
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.143-150, 1997-04-20
参考文献数
10
被引用文献数
5

肺癌検診発見肺癌の特徴や検診が内包する問題点を考察するため, 1987年以降7年間に, 兵庫県津名郡に於ける老健法に基づく検診で発見された肺癌23症例(A群)について検証した.臨床病期は0,I期が13例(56%), 根治手術率48%, 5年生存率48.9%, 95年9月現在, 11例が生存中でその内10例までがI期発見であった.23例中, 発見前年には受診歴がない非経年受診群は12例, 前年にも受診歴がある経年受診群は11例でIIIB期以上の進行癌は前者に多かった.然しI期症例の62%が前者に属し, その原因は個々の肺癌症例の肺癌進展速度差にあり, 検診成績を支える予後良好なI期肺癌の多くは進展速度が緩やかな症例であった.又, 検診と同一期間, 同一地域での日常診療発見肺癌29症例(B群)との対比でも, length biasを始め種々のbiasが認められ, 進展速度が遅い肺癌はB群よりもA群に多かった.進展の速い肺癌をできるだけ早期に検診で発見するという困難な課題が残されている.