著者
祖父江 友孝
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.1013-1017, 2003-12-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1 1

目的・方法. 検診の効果とバイアスについて, これまでの知見を整理して解説する. 結果・結論. 検診の効果については, 対象とするがんの死亡率を評価指標とするのが一般的である. 検診発見例における病期分布や生存率を症状発見例と比較することは, 一連の検診評価プロセスの中で重要な評価指標ではあるが, 種々のバイアス (self-selection bias, lead time bias, length bias, overdiagnosis bias) の影響を受ける可能性が高く, 死亡減少効果に代わりうるものではない. Overiagnosisは, バイアスとしての意義に加えて, 検診による不利益としての意義が大きくなりつつある. 死亡率減少効果の評価方法としての国際水準はランダム化比較試験 (Randomized Controlled Trial) であり, 諸外国ではRCT以外の研究デザインは証拠として軽視される傾向にある. しかし, RCTの中でも計画・実行・解析が適切にされたかの吟味が重要であり, 効果に関する証拠のまとめを作成する際には, 研究デザインだけでなく, 研究の質のチェックが手順の中に組み込まれつつある.
著者
豊國 伸哉
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.362-367, 2009 (Released:2009-10-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

目的.アスベストの発がん機構を解明する.方法.アスベスト(UICC: クリソタイル,クロシドライト,アモサイト)の物理化学的な性質を再検討する一方,培養細胞や実験動物個体にアスベストの投与を行い,生物学的性質を詳細に評価した.結果.ラジカル発生の触媒能はアモサイト>クロシドライト>>>クリソタイルであり,それは種々のキレート剤の存在で修飾を受けた.貪食細胞以外に,中皮細胞や腺癌細胞もアスベスト繊維を取り込み,核内にいたることを観察した.supercoiled plasmid DNAを使用して,各アスベストの2本鎖DNA切断能を検討した.鉄含量の高いアモサイトとクロシドライトで2本鎖切断を認め,繰り返し配列部位やG: C塩基間で切断しやすいことが判明した.ラット腹腔内に各アスベスト繊維を投与すると,全アスベスト投与グループで,中皮細胞で酸化ストレス増加を認めるとともに特に脾臓において鉄沈着を認めた.結論.クリソタイル腹腔内投与も中皮腫を発生する事実と考えあわせると,アスベスト発がんにはアスベストに含まれる鉄のみならず,他の機序で発生する過剰鉄も重要な役割を演じていることが示唆され,中皮腫発生の予防標的として期待される.
著者
伊藤 克樹 宇佐美 範恭 寺島 常郎 清水 隆宏 福島 曜 麻生 裕紀
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.390-394, 2019-08-20 (Released:2019-08-30)
参考文献数
13

背景.右肺下葉S6に空洞性結節と周囲への散布陰影を呈し,外科的生検により診断した浸潤性粘液性腺癌症例を経験したので報告する.症例.71歳男性.肺癌検診にて異常陰影を指摘され,X年9月に精査目的で当院紹介となる.CTにて右S6に空洞を伴う結節影と周囲に散布影を認めた.X+1年11月のCTで空洞性結節は徐々に増大傾向を示したため,気管支鏡検査を施行したが,確定診断は得られなかった.炎症性病変が示唆されたが,悪性も否定できなかったため,外科的生検を施行し,浸潤性粘液性腺癌の診断を得て,右下葉切除術を施行した.周囲への散布影は全て同一葉内肺転移であった.結論.浸潤性粘液性腺癌は肺炎類似の画像所見を呈することが広く知られているが,本症例の如く空洞性結節を示す場合もあることは,画像診断上認識する必要があると考えられた.
著者
本多 宣裕 越智 宣昭 山根 弘路 藤井 宏美 瀧川 奈義夫
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.79-83, 2016-04-20 (Released:2016-05-18)
参考文献数
7

目的.本邦では化学療法による発熱性好中球減少症(FN)の重症化を予測するMultinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC)スコアが汎用されている.最近海外よりClinical Index of Stable Febrile Neutropenia(CISNE)スコアの有用性が報告され,その妥当性を検証した.方法.2011年4月から2015年3月の間に当科に入院し,化学療法によりFNを発症した症例のMASCCスコアとCISNEスコアによるFN重症化リスクを比較した.結果.対象は,肺癌38例,悪性リンパ腫16例,消化器癌5例,肉腫5例,卵巣癌4例など計72例であり,うちFNの重症化は10例に認められた.MASCCスコアによる高リスク群は28例(38.9%)で,重症化予測の感度,特異度,ROC曲線下面積はそれぞれ60%,69%,0.63であった.CISNEスコアによる高リスク群は16例(22%)であり,FN重症化予測の感度,特異度,ROC曲線下面積はそれぞれ40%,82%,0.48であった.結論.CISNEスコアはMASCCスコアよりFN重症化の予測が良好とは言えず,本邦における予測モデルを構築する必要があると考えられた.
著者
山田 典子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.235-241, 2022-06-20 (Released:2022-06-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景.新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)ワクチン接種の有害事象として血栓症が報告されている.ワクチン接種後に肺血栓塞栓症を発症した原発性肺癌の切除例を経験した.症例.74歳男性.COVID-19ワクチン2回目接種後3日目より息切れが出現した.単純CTでは左上葉に37 mm大の結節を認めるのみであった.9日目に症状が増悪し酸素飽和度89%,D-dimer 25.9 μg/ml,造影CTで両側肺動脈血栓,左膝窩動静脈血栓を認めた.アピキサバン内服開始5日目には酸素不要となり,D-dimerも7.4 μg/mlと低下した.左上葉結節は原発性肺癌T2bN1M0 stage IIBと診断した.血栓消失とD-dimer正常化を確認し,肺血栓塞栓症発症後3か月目に胸腔鏡下左上葉切除術を施行した.肺動脈の血管鞘は肥厚し剥離に難渋した.術後血栓症の再発は認めていない.結論.COVID-19ワクチン接種後の血栓症は,稀であるが重症例が多く致死率も高いと言われている.今後有害事象を伴った肺癌症例も増加すると予想され,病態解明や治療方針の確立が期待される.
著者
人見 滋樹 前里 和夫 レシャード カレッド 高橋 憲太郎 永田 格 奥田 正 鈴木 庸
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.151-160, 1981-06-10 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

甲状腺癌23例について治療成績を中心に, 性, 年令, 組織型, 予後について報告した.I131の摂り込み陽性の16例のうち, RI療法は2例で完全寛解・13例で腫瘍縮小効果がみられ, 無効は摂り込みの極めて少なかった1例のみであった.RI療法により転移巣の縮小と減少がみられた1例で, 両側肺転移巣の切除を行なった.切除標本からRI療法の効果を組織学的に確認しえた.肺転移は女性に高率で予後は若年発癌者の方が良好であった.乳頭腺癌と濾胞腺癌とでは肺転移率と予後に差異はなかった.
著者
山根 靖弘 坂井 和男 香月 秀雄 岡本 達也
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.141-147, 1978-06-25

4-ニトロキノリン1-オキシド(4-NQO)のマウス肺癌発生におよぼすタバコタール中性分画の影響を検討したところ, 発癌促進効果をみとめた。そこで, タバコタール中性分画のマウスにおける4-NQO代謝への影響をしらべると, 肺で4-NQO還元酵素活性の顕著な上昇効果がとくに見い出された。したがって, タバコタール中性分画は, 4-NQO代謝活性に影響を与え, 4-NQOのマウス肺癌誘発を促進させるものと推定した。
著者
前田 寿美子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.63, no.Supplement, pp.832-834, 2023-11-02 (Released:2023-10-27)
参考文献数
5
著者
新実 藤昭 並河 尚に 三宅 信也 山城 武夫
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.109-115, 1972-06-25 (Released:2011-06-03)
参考文献数
11

小児期における原発性肺癌は非常に稀有な疾患で日本病理剖検輯報によれば全原発性肺癌の0.1%前後にみとめるのみであり, われわれが集計しえた本邦文献も10例を数えるのみであるが, その悪性度は高く, 遠隔転移も早く, 予後はきわめて悪いので, 小児呼吸器疾患の鑑別診断には考慮すべき一つである. われわれの経験した1例とともに, 小児期肺癌の発生頻度, 発生原因, 組織型および経過などについて文献的考察を加え報告する.
著者
Yuuki Kou Nobuhisa Yamazaki Yasuto Sakaguchi Hirokazu Tanaka Makoto Sonobe
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.91-94, 2023-04-20 (Released:2023-04-27)
参考文献数
7

Background. Axillary lymphadenopathy after COVID-19 vaccination have been frequently reported in the medical literature. This benign reaction can be confused with metastases of thoracic malignancies. We experienced three lung cancer cases with COVID-19 vaccine-related lymphadenopathy. Case presentations. Three patients were included. One was a pre-operative patient, and the others were post-operative patients. All of them were patients with lung cancer and had been vaccinated for COVID-19. They were found to have swelling of the axial lymph nodes on computed tomography several days after undergoing vaccination for COVID-19. Two patients underwent an axial lymph node biopsy. The results of biopsies and close follow-up revealed that none of them actually had metastasis. Conclusions. Invasive examinations should be avoided, but inappropriate upstaging and downstaging may result in miserable outcomes. We herein report three cases with imaging and pathological characteristics.
著者
古賀 教将 光冨 徹哉
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.188-199, 2022-06-20 (Released:2022-06-29)
参考文献数
30

KRAS遺伝子変異は非小細胞肺癌を含むヒトの癌で頻度の高いがん遺伝子変異の一つである.発見から30年以上のKRAS変異陽性癌の治療法開発にもかかわらず,臨床的有用性を示す薬物は得られず,創薬不能な標的とされてきた.理由として,KRASとGTPの親和性は高く結合阻害は困難,KRASの下流シグナルや膜結合に必要な翻訳後修飾はいくつも平行しており,単一の経路や修飾反応の阻害では他の活性化が起こる,KRAS変異陽性癌は必ずしもKRASに生死が依存していないことなどが考えられる.2013年にGDP結合KRASに低分子化合物がはまるポケットが見出され,G12C変異KRASに限定的ながら,KRASを不活性なGDP結合型に非可逆的に固定する化合物が報告された.この発見に基づき,ソトラシブやアダグラシブなどのG12C特異的阻害剤が開発され,前者は2021年に米国で,2次治療以降のKRASG12C変異陽性非小細胞肺癌に対し迅速承認された.今後,G12C以外の直接阻害剤,G12C阻害剤との併用療法,耐性獲得後の対策,有効な患者選択のためのバイオマーカーなどについて,さらなる研究開発が待たれる.
著者
赤荻 栄一 三井 清文 鬼塚 正孝 石川 成美 吉田 進 稲垣 雅春 間瀬 憲多朗 山本 達生 稲毛 芳永 小形 岳三郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.483-488, 1994-08-20
被引用文献数
9

原発巣と同側の肺内に転移を持つ肺癌切除67例の術後成績をみて, 同側肺内転移を遠隔転移ではなく腫瘍の局所進展と考えるAmerican Joint Committeeon Cancer(AJCC)新分類の妥当性を検討した.原発巣と同一肺葉内に留まる肺内転移を持つ41例の術後中問生存期問は25.8ヵ月で, 他肺葉に及ぶ肺内転移を持つ例に比べて有意に良好であった.同一肺葉内転移例につき, 肺内転移を除いた病期別にみると, I期11例では42.9ヵ月と他に比べて有意に良好で, IV期5例では9.6ヵ月と最も不良であった.AJCC新分類による中問生存期間は, I期とII期を合わせた4例が48.3ヵ月, IIIA期21例28.3ヵ月, IIIB期34例22.2ヵ月, IV期8例11.1ヵ月であり, リンパ節転移がないかあっても肺門までに留まる例が最も予後良好で, 肺内転移以外に明らかな遠隔転移を持つIV期例は最も予後不良であった.これは, AJCC新分類が, より臨床に即した有用な分類であることを示すものと思われる.
著者
山口 功
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.968-976, 2012 (Released:2012-12-14)
参考文献数
5

目的.本報告では低線量胸部CT画像の特徴を,通常線量胸部CT画像と比較して明らかにする.そして,肺がんCT検診の目標を踏まえて低線量胸部CT画像に対する適正な画像処理を提案する.方法.通常線量と低線量で撮影したCTテストファントム画像および胸部ファントム画像を視覚的に比較した.次いで,低線量CT画像の画像ノイズとアーチファクトを低減することを目的に再構成フィルタ関数を変更して比較した.また,それぞれの再構成フィルタ関数の変調伝達関数を計測して,肺がんCT検診の目的を踏まえて適正な再構成フィルタ関数を検討した.結果.胸部CTにおける低線量画像は通常線量画像と比較して画像ノイズとアーチファクトの顕著な増加が見られた.この画像ノイズとアーチファクトはウィンドウ幅を1500程度に広く設定しても認識されるものであった.肺がんCT検診の目標サイズを考慮して空間周波数0.5 cycles/mmに対して0.9程度のレスポンスが確保できる再構成フィルタ関数を用いることで画像ノイズの少ない画像が得られた.結論.胸部CT検診の低線量化を普及させるためには,低線量肺がんCT検診に適した再構成フィルタ関数の調整が必要である.
著者
由佐 俊和 伊豫田 明 門山 周文 佐々木 一義 鈴木 実 山川 久美 藤澤 武彦
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.241-247, 2005-06-20
参考文献数
19
被引用文献数
11 14

目的.びまん性悪性胸膜中皮腫の臨床像・診断・治療・予後および予後因子について検討することを目的とした.対象.多施設から集積したびまん性悪性胸膜中皮腫51例を対象とした.結果.男性47例, 女性4例, 平均年齢60.0歳.アスベスト曝露歴を37%に認めた.発見動機は, ほとんど(88%)が自覚症状によるものであった.胸腔鏡下胸膜生検が確定診断法として最も多く行われたが, 初診から診断が得られるまでに, 60日(中央値)を要した.胸水の細胞診やヒアルロン酸値は, 両者ともに異常所見を示さない例がおよそ半数にみられた.治療は, 28例に手術が, 13例に放射線もしくは化学療法が, 10例には支持療法のみが行われた.全例の生存率は1年, 2年, 3年がそれぞれ50.6%, 25.0%, 12.7%で, 生存期間中央値は12.3ヶ月であった.予後因子の分析では, 単変量解析では年齢, IMIG臨床病期, 手術の有無が有意な因子であったが, 多変量解析では, IMIG臨床病期のみが有意な因子であった.術後補助療法として胸腔内灌流温熱化学療法を行ったものに良好な予後を示す例がみられた.結論.1)原因不明の胸水貯留例については, 確定診断を得るために遅滞なく胸腔鏡下胸膜生検を行うべきである.2)適正な手術適応の設定, 術後補助療法や新たな化学療法の開発などによる予後の改善が今後の課題である.
著者
矢野 聖二
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.939-943, 2009 (Released:2009-12-09)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

EGFR活性型変異を有する肺腺癌はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブやエルロチニブが著効する.しかし,EGFR活性型変異を有する肺腺癌の25∼30%はゲフィチニブに自然耐性を示す.また,奏効症例においてもその大半が1年程度で獲得耐性を生じ再燃するため,EGFR活性型変異を有する肺腺癌におけるゲフィチニブ耐性の克服は臨床的にも重要な検討課題である.EGFRのT790M second mutationやMET増幅が,獲得耐性のそれぞれ50%および20%に関与することが知られているが,残りの30%の症例の耐性機序および自然耐性の機序は不明である.著者らは,肝細胞増殖因子(HGF)による第三の耐性機序を明らかにした.癌細胞自身あるいは間質の線維芽細胞が産生するHGFは,その受容体であるMETをリン酸化し,EGFRやErbB3とは無関係にPI3K/Akt経路を活性化することにより,ゲフィチニブ耐性を誘導した.HGF-MET阻害薬はHGFによるEGFR-TKI耐性を克服することも見出した.以上より,HGF-MET経路はEGFR-TKIの治療効果をより高める上で,非常に重要な標的と考えられる.
著者
佐々木 結花 山岸 文雄 鈴木 公典 宮澤 裕 杉戸 一寿 河端 美則
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1065-1069, 1993-12-20
被引用文献数
3

肺転移にて発見された後腹膜原発絨毛癌の一例を経験したので報告する.症例は24歳男性.主訴は血痰で, 精査目的にて当院に入院した.胸部エックス線所見上, 両側肺野に多発した結節影および両側胸水を認めた.外性器に異常所見は認められなかった.腹部CT写真にて後腹膜に腫瘤を認め, 泌尿器科にて腎腫瘍が疑われたが, 検査拒否にて組織型を決定できず, 呼吸状態が急激に増悪し, 呼吸不全にて死亡した.剖検にて, 両側肺を多発した腫瘤がしめ, また, 後腹膜に腫瘤が存在し, その一部は下大静脈壁内腔に浸潤していた.同腫瘤, 肺転移巣の両者の病理組織より, 絨毛癌の診断が得られ, 免疫組織学的検索で胞体がhCG陽性であることが確認された.生殖器には原発巣は認めず, 後腹膜原発絨毛癌と考えられ, きわめて稀な症例と考えられ報告した.
著者
西岡 雅行 福田 正博 根来 俊一 高田 実 楠 洋子 益田 典幸 瀧藤 伸英 松井 薫 中島 俊文 小野山 靖人
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.335-341, 1991-06-20
被引用文献数
2

切除不能の肺非小細胞癌17例に対して,シスプラチン(100mg/m^2,day1),ビンデシン(3mg/m^2,dayl and day8)と胸部放射線照射(2Gy/day,day2〜15)の同時併用療法を行った.適格例は16例で,腫瘍効果はPR/2例,NC3例,PD1例,奏効率は75%であった.骨髄抑制は強く,食道炎も高頻度に発生したが一過性で,その他に重篤な合併症はみられなかった.本療法は許容範囲内の副作用で,高い奏効率が示されたことから,IIIA,IIIB期の切除不能肺非小細胞癌に有効な治療法と考えられた.
著者
吉井 千春 森本 泰夫 二階堂 義彦 田尾 義昭 津田 徹 永田 忍彦 城戸 優光
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.917-923, 1993
被引用文献数
3

rG-CSFは, 白血球数最低値を底上げし, 白血球数減少期間の短縮が期待される薬剤として, 肺癌化学療法での併用が定着しつつある. しかし, どの時点からの投与開始が最適であるかの検討は十分にされていない. 今回我々は, 3つの化学療法レジメン (3日間) で, 投与開始時期により4群 (A群: rG-CSF非投与, B群: 白血球数2000/mm<SUP>3</SUP>以下からの開始, C群: day2からの開始, D群: day5からの開始) に分け, r G-CSFを2μg/kg皮下注して, 各群の白血球数最低値と白血球減少期間を比較した. この結果, D群は全例で白血球数最低値が2000/mm<SUP>3</SUP>以上になり, A群と比べ有意に最低値が底上げされた. またB, C群は同一症例で同一レジメンの比較で白血球数減少期間の短縮傾向を認めた. この結果から, 今回行った化学療法レジメンでは白血球数最低値を確実に底上げする目的ならば, day5からの投与開始が最も有用と思われた.